放送案内「一度でいいから ~日朝をつなぐ家族の絆~」

 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)で、2月下旬から3月上旬にかけて日本人妻たちを取材。そのテレビでのドキュメンタリー番組を放送する。下記はその番宣と放送日・時間。

新井さんと日本人妻
寝込む残留日本人の荒井さんを気遣う日本人妻(2018年2月22日撮影)

 北朝鮮に住む日本人妻の問題は、日朝間の重要な議題でありながら、ほとんどその実像が知られていない。フォトジャーナリストの伊藤孝司は、去年、今年と、日本人妻を取材する特別な許可を得て北朝鮮に入った。
 ところが、事態に変化があった。去年取材した日本人妻が亡くなっていたのだ。高齢化し体力も衰えていく日本人妻たち。その多くは、一度も里帰りすることができずにいる。一方、再会を願う肉親が日本国内にもいる。残された時間はほとんどない。
ナレーター:河野多紀
制作:朝日放送

テレビ朝日  4月6日金曜深夜3時30分~(4月7日土曜午前3時30分~)
北海道テレビ放送  土曜25:30~26:00
青森朝日放送  月曜25:40~26:10
岩手朝日テレビ  火曜26:20~26:50
東日本放送  火曜25:56~26:26
秋田朝日放送  土曜25:55~26:25
山形テレビ  日曜26:10~26:40
福島放送  日曜25:40~26:10
新潟テレビ21  土曜05:20~05:50
長野朝日放送  日曜25:40~26:10
静岡朝日テレビ  月曜26:25~26:55 日曜(再)26:10~26:40
北陸朝日放送  日曜26:15~26:45
メ~テレ  木曜04:29~04:55 火曜(再)隔週04:30~04:55
ABCテレビ  日曜04:55~05:25
広島ホームテレビ  月曜26:25~26:55
山口朝日放送  月曜25:42~26:12
瀬戸内海放送  日曜05:50~06:20
愛媛朝日テレビ  金曜04:25~04:55
九州朝日放送  日曜26:40~27:10
長崎文化放送  日曜04:50~05:20
熊本朝日放送  日曜04:20~04:50
大分朝日放送  月曜26:15~26:45
鹿児島放送  日曜05:20~05:50
琉球朝日放送  日曜25:35~26:05
*各局での放送時間は都合により変更になる場合があります。

日朝関係に翻弄された劇的な人生

『週刊金曜日』2018年3月16日号に掲載した記事を紹介する。

家族を思い、日本と朝鮮を行き来した平島筆子さん死去
日朝関係に翻弄された劇的な人生

 衝撃の事実を告げられ、私は思わず大きな声を上げた。朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の平壌(ピョンヤン)へ行ったところ、取材予定の女性が急死していたのだ。

平島還暦祝い
 平島筆子さん(中央)の還暦祝いでの家族写真。祝宴は朝鮮へ戻ってから、7年遅れで開かれた。孫のオ・チョンヒョクさんは左から3人目。

 1959年12月から在日朝鮮人の帰国事業が始まり、朝鮮人男性と結婚していた日本人妻1831人も朝鮮へ渡った。1938年11月生まれの平島筆子さんもその一人だ。

 平島さんは、東京都葛飾区新小岩のあんみつ屋で働いていて、電気工の朝鮮人男性と出会う。平島さんの両親は強く反対したものの、二人は1959年12月の帰国船で朝鮮へと渡った。平島さんは「安筆花(アン・ピルファ)」という朝鮮名を使った。

 平壌での生活を始めて10年ほどしたころに突然、夫は行方不明になる。家族には「病死した」と伝えられた。頼りにしていた夫がいなくなり、日本の家族からの仕送りもなかった平島さんの生活は苦しくなった。

 日本にいる二人の妹に会いたい、両親の墓参りがしたいという思いが募っていた時に、日本人妻を「脱北」させて高額の利益を得ようとするブローカーに声をかけられた。そして2002年11月に中朝国境の川を歩いて中国へ渡り、翌年1月に日本へ帰国。

 落ち着いたのは、かつて暮らしていた葛飾区。そこを選挙区とする平沢勝栄衆議院議員の秘書・沖見泰一さん(64)が、世話をすることになる。平島さんは、生活保護の支給額が減らされるのを承知で仕事に出るほど元気だった。

 ところが朝鮮から、長男のオ・カンホさんが死亡したという連絡がある。「平島さんは長男の嫁と子どもたちが心配になり、神経性胃潰瘍になったんです。寿司が大好きだったのですが、それも食べなくなりました」と沖見さんは振り返る。

 亡くなった長男には二人、長女には一人の子どもがいた。平島さんは、朝鮮の家族の元へ戻ることを決断。2005年4月18日、北京の朝鮮大使館で記者会見を行い「金正日(キム・ジョンイル)将軍万歳!」と叫んだ。

 朝鮮へ戻ってからの平島さんは優遇を受け、家族たちと平壌で生活を開始。還暦や古希のお祝いや行楽地などで、家族と撮ったどの写真の平島さんも幸せそうにみえる。

 平島さんは北京での記者会見から2カ月後に、沖見さんへ電話をかけた。それをきっかけに沖見さんは、毎月決まった日に電話をし、自費で医薬品などを送り続けてきた。肉親でもできないことである。その理由を聞くと、「日本にいた時の交流で情が移ったから」と語った。

 ところが突然、その平島さんが倒れた。この時のようすを、平島さんの長男の息子であるオ・チョンヒョクさん(29歳)から平壌市内のホテルで聞いた。

 「祖母は2年前から血圧が高くなって頭痛があり、8カ月前からは心臓も悪かったんです。1月11日に、散歩から戻ると心臓に圧迫感あると訴えました。入ったトイレで悲鳴を上げて倒れたので、薬を飲ませようとしたものの死亡していました」。

 祖母への思いを聞くと、「高齢なのに足が速く、燃えるような性格の愉快な人でした。私は誇りに思っています」と答えた。帰国後にインタビューした沖見さんは「日本政府は『日朝ストックホルム合意』で日本人妻についても同意したにもかかわらず、それよりも拉致問題を優先しました。日本人妻の里帰りといった、解決可能なことから取り組むべきです。平島さんの死を無駄にしないで欲しい」と言う。

 朝鮮人の夫、日本の妹たち、朝鮮の子や孫という家族への思いから二つの国を行き来した平島筆子さん。私は日朝関係に翻弄されたその劇的な生き方を、直接に聞きたかった。

日朝首脳会談の実現には政策転換が必要

 3月21日、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、韓国・北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)・米国による三者首脳会談の可能性について言及した。

咸興を行き交うタクシー
咸興(ハムフン)市内を行き交うタクシー(2018年2月21日撮影)

 また韓国は、歌手やアイドルグループで構成する芸術団160人を、3月31日から4月3日まで平壌(ピョンヤン)へ派遣することを決めた。南北融和を進めようという文在寅政権の強い意志が表れている。

 一気に動き出した北朝鮮情勢に対し、異常なほど米国以上の北朝鮮バッシングに力を注いできた安倍政権は完全に対応が遅れた。このままでは蚊帳の外に置かれるのは確かだ。「朝鮮中央通信」は20日の論評で、安倍政権を批判している。

 「予想できなかった急激な朝鮮半島情勢の変化によって、ひとりぼっちの境遇になった日本の安倍一味は、北朝鮮の対話平和攻勢は国際社会の持続的な圧力の結果だの、気短な対話は北朝鮮の時間稼ぎに巻込まれることだの、制裁を緩めることがあっては絶対にいけないだのと騒がしく振舞っている」

 北朝鮮が対話へ転じたのは、核・ミサイル技術がほぼ完成したため、米国と対等の立場で交渉できるようになったと判断したからだ。「制裁の効果」などではない。

 今月3日まで、13日間にわたって平壌と地方都市で取材した。道路を行き交う自動車の数は減ってはいなかったし、ガソリン代を含む車両チャーター価格は変化がなかった。それどころか地方都市でも、新しいガソリンスタンドやタクシーを何度も目撃した。

 平壌で昨年4月に完成した黎明(リョミュン)通りでは、今も大掛かりなライトアップが続いている。厳しい制裁が長期にわたって続けば目に見える形での影響が出るかも知れないが、今時点では変化はない。

 安倍政権は、日朝首脳会談に意欲があることを複数のルートで北朝鮮へ伝えたという。だがそれに、北朝鮮が容易に応じることはないだろう。北朝鮮の最大の外交目標は、米国との関係改善である。韓国との対話推進は、そのための方策の一つでもある。北朝鮮には、すぐに日朝関係改善に取り組む必要性がないのだ。

 しかも、拉致問題への強硬姿勢で首相になった安倍晋三とでは、交渉が進んだとしても結局は拉致問題で行き詰まることが目に見えている。それは2014年の「日朝ストックホルム合意」の破たんで明らかだ。

 安倍首相が本気で日朝関係改善を考えているのならば、拉致問題だけでなく他の課題にも同時に取り組むという方針へ転換するべきだ。

 その課題とは2002年の「日朝平壌宣言」で合意した日本による朝鮮植民地支配に対する賠償・被害者への補償。そして、そもそもは日本が北朝鮮に強く要求していた残留日本人・日本人妻の里帰りの実施、朝鮮各地の日本人埋葬地への政府事業での墓参と遺骨収容などである。

北朝鮮 平島筆子さん死去についての記事掲載

『週刊金曜日』2018年3月16日号(同日発売)に「日朝関係に翻弄された劇的な人生」と題した記事を掲載する。

平島筆子
北朝鮮へ戻ってから撮影された平島さんとひ孫。「2005年6月18日」の日付が入っている(ご遺族提供)

2月末、取材のために北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)を訪れたところ、会う予定の平島筆子さんが死去されていることが判明。急遽、ご遺族から話を聞いた。また帰国後、平島さんを支援してきた方からも話を聞いている。

家族を思うがあまり、日本と北朝鮮を行き来した劇的な人生だった。

北朝鮮はなぜ南北首脳会談に同意したのか

 韓国大統領府は3月6日、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)との首脳会談を4月後半に板門店(パンムンジョム)で実施すると発表した。また北朝鮮は、軍事的脅威がなくなり体制の安全が保障されるならば、核を保有する理由はないと表明したという。

黎明通り夜景
ライトアップが続く黎明通り(2018年3月2日撮影)

 そして南北対話中は核・ミサイル実験をせず、米国と非核化や関係正常化に向けた対話をする意向があるとも表明した。

 河野太郎外務大臣はその発表の前に、北朝鮮が「ほほえみ外交」をするのは制裁が効いているからだとした。しかし2月20日から3月3日まで北朝鮮で取材をした私は、そうではないと断言する。

 首都・平壌(ピョンヤン)だけでなく地方都市においても、車の通行量はほとんど減っていなかった。また、街ごとライトアップしている黎明(リョミョン)通りなどを見ても電力事情に変化はなかった。

 北朝鮮が南北首脳会談に応じたのは、米国・トランプ大統領がまともに交渉できる相手かどうか分からない状況の中で、韓国との関係改善を先に進めようと方針転換したのだ。

 南北首脳会談では、開城(ケソン)工業団地と金剛山(クムガンサン)観光の再開が話し合われるのは確かで、おそらくそれは合意に至るだろう。
広告
広告
広告
プロフィール

こだわりジャーナリスト

Author:こだわりジャーナリスト
フリーランスのジャーナリストとして長年にわたりさまざまな取材を行い、数多くのメディアで発表してきました。
海外取材は200回近くで、そのうち北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)へは数十回です。現在、年1~3回の訪朝をしています。
掲載写真は、引用先が非表示のものは筆者撮影です。なお、このブログに掲載している映像と文章は日本の「著作権法」と国際的な著作権条約で保護されており、無断使用はできません。転載を希望される場合は、事前にご連絡ください。

最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文: