北朝鮮 宋日昊大使が安部訪朝を否定

北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の宋日昊(ソン・イルホ)朝日国交正常化交渉担当大使は8月14日、安倍首相の9月訪朝説を否定した。

 宋大使は「朝日関係は解決ではなく対決の方向へ進んでいる。日本政府の制裁措置はその中身を増やしており、それは米国のコントロールによるもの」とした。

そして「安部首相の9月訪朝の話は完全なウソ。もし訪朝しても関係改善はできない。小泉元首相は2回の訪朝をしたが変わらなかった。9月訪朝説は、墜落する(支持率低下)状況に対するものでは」と語った。

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米朝の軍事衝突の危機が極めて高まっている中で、平壌(ピョンヤン)に滞在している。



今回、平壌への北京からの航空機の乗客は、外国人ではやはり中国人が多く、次いで欧米人だった。日本人は私だけ。米国政府は、9月1日から自国民の北朝鮮への渡航を一部の例外を除いて禁止する。米国からの渡航者は年間約1000人もいたが、隣国・日本からの日本人は年間数百人。すでに渡航禁止をしているようなものだ。



  4か月ぶりの北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)取材だが、街の変化は感じられない。滞在している平壌の「羊角島(ヤンガクド)ホテル」は、大同江(テドンガン)の中州にある。夜遅くまで浚渫作業の音が聞こえてくる。それは建設ラッシュが続いているため、セメント用の川砂を必要としているからだろう。



昨日まで、海に面した地方都市に5泊していたが、海水浴場は平日でも賑わっていた。飲み物などを売ったり、浮輪などを貸したりする出店がいくつも並ぶ。あいにく海は荒れ気味だが、バーベキューやカラオケをしている家族やグループがたくさんいた。



米朝での威嚇がエスカレートし軍事衝突の危険性が高まっているが、現在の北朝鮮はこのように極めて平穏なのだ。

北朝鮮の米国向けICBMに怯えてみせる安倍首相

 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)は7月28日午後11時42分に、慈江道(チャガンド)舞坪里(ムピョンリ)から大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星14」を発射した。「任意の場所と時間に奇襲として発射できる能力が誇示」された。

 高度約3700キロメートルの「ロフテッド軌道」で発射されたこのミサイルは、約1000キロメートルを飛翔。通常軌道ならば、米本土に届く1万キロメートルを超える可能性がある。

閲兵式の戦車
閲兵式で登場した戦車(2017年4月15日撮影)

 日本政府は同じ日の閣議で、北朝鮮への新たな独自制裁として、中国の銀行と船舶会社などの5団体と9個人を資産凍結の対象に追加。これに対して中国政府は「安保理決議の枠組み外での一方的な制裁に反対。中日関係に重大な障害になる」と述べた上で、「某国(注:米国のこと)に追随すれば自らも報いを受ける」と警告した。

 日本の北朝鮮への独自制裁は、でき得ることはすべて実行してしまった状態。そのため、米国が開始した北朝鮮とつながりの強い中国の企業・個人への制裁を日本でも始めた。これは、日中関係に影響するという大きなリスクがあるにもかかわらず実行した。日本の北朝鮮政策は、日本の「国益」を無視し、完全に米国に追随している。

 そもそも北朝鮮の核兵器と大陸間弾道ミサイルの開発は、米国に体制保障を認めさせることを目的に行われてきた。日本や韓国にそれらを使うことなどあり得ない。北朝鮮が、米国との戦争になれば日本と韓国へも攻撃すると言っている理由は、米国に追随・加担して北朝鮮への軍事的・経済的圧迫に極めて積極的だからだ。

 米国が、北朝鮮が求める朝鮮戦争の休戦協定を平和条約にすることを頑なに拒んでいることが現在の深刻な事態を招いている。その米朝対立に、なぜ日本が首を突っ込み、戦闘・戦争に巻き込まれるリスクを負う必要があるのか。

 安倍首相は第1次政権の時から、日本を「戦争のできる国」にするため着実に準備してきた。そして今、危機を最大限に煽っている。政府の指導により始められた北朝鮮からのミサイル攻撃に備えた避難訓練は、すでに8カ所の地方自治体で行われ全国へ広がろうとしている。

 米国が北朝鮮との対話へ踏み出せば「北朝鮮の脅威」は一気に解消する。米国内には、もはや北朝鮮との話し合いしかないとの声があるというが、日本ではほとんど聞かれない。メディアは、北朝鮮の核・ミサイル問題の本質を正確に報じるべきだし、日本をこれほど危険な状態に陥れた安倍政権の責任を追及すべきだ。

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北朝鮮国民の命はどうでもいいのか

 7月8日、安倍晋三首相はドイツ・ハンブルクで開催された「20カ国・地域首脳会議(G20)」の場で中国の習近平国家主席と会談。その際、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)への制裁として、石油輸出の停止を要請した。これは米国・トランプ大統領が強く主張していることで、首相の発言はそれに追随したものだ。

咸興の通勤通計
咸興(ハムフン)市中心部で自転車通勤する人たち(2017年4月12日撮影)

 北朝鮮は鉱物資源に恵まれているものの、まったく産出できない石油は全量を輸入している。そして、その多くを中国に頼っているのが現状だ。もし、中国が石油供給をすべて止めたならば、北朝鮮は極めて大きな打撃を受ける。

 日本ほど石油に依存した社会構造ではないものの、社会のさまざまな機能が麻痺する。そして何よりも深刻なのは、数十万・数百万の餓死・凍死者が出ることだ。そのことは、1990年代後半に北朝鮮で起きた水害・干ばつでの被害からすれば、容易に推測できる。

 6月21日、石川県の谷本正憲知事は「(地元の)志賀原発を狙う暴挙をするなら、兵糧攻めにして北朝鮮の国民を餓死させなければならない」と発言。これについての報道陣の質問に対して「(北朝鮮)国民が痛みを感じる制裁をしなければ意味がない」と述べた。

 日朝関係は、戦闘・戦争が起きても不思議ではないほど最悪で危険な状態に陥った。責任ある立場の政治家である安倍首相と石川県知事の発言には、北朝鮮国民の命を何とも思っていないことが明確に表れている。「敵国」には、何をしても構わないとでもいうのだろうか。その人権感覚のなさに驚くが、日本がいかに非民主主義国家なのか改めて思い知らされる。

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歴史的・大局的視点で設立された朝鮮の「日本研究所」

 昨年12月、朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)に「日本研究所」という機関があることが相次いで報じられた。3日付の朝鮮総連機関紙「朝鮮新報」はその存在を明らかにしただけだったが、21日付の朝鮮政府機関紙「民主朝鮮」は「日本研究所」研究員による論評を掲載した。日本政府が、朝鮮の弾道ミサイル発射に対して住民参加の避難訓練を検討していることを非難する内容だった。

曺喜勝
インタビューに答える曺喜勝氏(2017年4月13日撮影)

 2014年5月の「日朝ストックホルム合意」に基づき、朝鮮に「特別調査委員会」が設置され、「日本人調査」が進められた。ところが、2016年1月に朝鮮が行なった核実験を理由に日本は追加制裁を実施。そのため朝鮮は「特別調査委員会」を解体した。それ以降、日朝政府間での動きは止まったままだ。

 そうした時に突如として、「日本研究所」の存在が明らかにされた。この最悪の日朝関係の中で日本の何を研究しようというのか。日本への何らかのサインなのか・・・。さまざまな憶測が飛び交った。

朝日関係研究の必要性

 そうしたこともあり、今年4月の朝鮮取材では「日本研究所」について説明してくれる人へのインタビューもリクエストしていた。それについて、歴史学者の曺喜勝(チョ・ヒスン)さんから13日に話を聞くことになった。

 私の朝鮮での取材は歴史的出来事に関するものが多いため、歴史学者からたびたび話を聞いてきた。曺さんとは、2007年に知り合ってから何度も会っている。曺さんは、日本敗戦の混乱の中で死亡した日本人の埋葬地調査を中心になって行い、2012年から訪問が始まった埋葬地への墓参団を案内して回った。

 今回、改めてもらった名刺の肩書はさらに増え、「歴史学会常任委員長」「社会科学院歴史研究所元所長」など八つもある。その中に新しく「日本研究所上級研究員」というものがあった。

 最近の朝鮮でのインタビューは、その人が日本語が上手であっても通訳を通して答えることが多くなった。ところが曺さんは、最初から流ちょうな日本語で答えてくれた。

――「日本研究所」は学者だけの研究機関なのか。
曺  そうではなく、外務省の外交官・学者・言論関係のジャーナリストなどでつくられた。所長は、外務省の車成日(チャ・ソンイル)日本担当副局長がやっている。設立したのは昨年12月。

――設立した理由は。
曺  日本には朝鮮の、中国には日本というように研究機関がある。朝鮮には今まで、日本について研究する機関がなかった。朝鮮と日本は、歴史的にみても切っても切れない絆がある。だから政治・経済・社会や歴史・文化など、さまざまな面で日本をよく研究しようという趣旨でつくられた。

――研究対象は、日本の植民地時代のことが中心になるのか。
曺  植民地時代だけでなく、古代から中世・近代・現代における朝日関係はどうだったかという研究がやはり必要。また歴史的なことだけでなく、現在の日本の政治・文化や今後の朝日関係についても研究する必要があるとの考えだ。

――近代になると、日本に批判的な内容ばかりになるのでは。
曺  言いづらいけれど、そうならざるを得ない。なぜかといえば、日本による加害行為を仕方がなかったとか、朝鮮を植民地にして良かったという話しが出る。また、植民地支配への謝罪もしないし賠償もしない。それでは批判をせざるを得ない。
 ただ朝鮮と日本との2000年、 3000年の間に、悪いことばかりあったのではない。とくに文化交流の面では「朝鮮通信史」などとても良い場面がたくさんあった。そうしたことについても研究する。

――植民地時代に関する研究内容は。
曺  日本帝国主義による蛮行について。朝鮮人の強制労働・強制連行とか「慰安婦」、細菌戦などに力を入れている。

――日本人埋葬地や残留日本人といったことも扱うのか。
曺  ええ、そうだ。

日本語講座
閑散とした「人民大学習堂」の日本語講座(2016年8月23日撮影)

 また曺さんは、日本語を習うことに関心を持たない若者が増えたと言った。「平壌外国語大学」の日本語「学部」は、希望者が減ったために「学科」になってしまっている。
 昨年8月に私は、朝鮮で最も大きい図書館である「人民大学習堂」へ、社会人を対象とした外国語講座のようすを見に行った。大きな教室に溢れんばかりの聴講生がいたのが中国語で、熱気に満ちていた。その次が英語。そして日本語は、小さな教室にわずか十数人しかいなかった。

 これは言語だけのことではない。私はこの数年の取材の中で、朝鮮の社会が日本に対する関心を急速に失っていると感じていた。曺さんが次のように語った。
 「新しい世代には、日本について何も知らない人がたくさんいる。朝鮮と日本は『近くて遠い国』といわれているけど、今は『遠くて遠い国』になった」

目先の問題しか見えない日本

 朝鮮はどのような日朝関係であっても、日本を歴史的・大局的視点から客観的に捉えようと努力しているようだ。ところが日本は「拉致・核・ミサイル」という現在の問題、つまり自らの利益に関わる目先のことでしか朝鮮との関係を考えることが出来ない。

 日本による朝鮮植民地支配、南北分断・朝鮮戦争といった歴史の上に、核・ミサイル開発をせざるを得なくなった朝鮮がある。そうした歴史を認識・理解しようとせずに、現在の核・ミサイル問題を理由に対話を頑なに拒んでいたのでは、危機的状況の日朝関係はどれほどの歳月が過ぎようとも変わらないだろう。

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プロフィール

こだわりジャーナリスト

Author:こだわりジャーナリスト
フリーランスのジャーナリストとして長年にわたりさまざまな取材を行い、数多くのメディアで発表してきました。
海外取材は200回近くで、そのうち北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)へは数十回です。現在、年1~3回の訪朝をしています。
掲載写真は、引用先が非表示のものは筆者撮影です。なお、このブログに掲載している映像と文章は日本の「著作権法」と国際的な著作権条約で保護されており、無断使用はできません。転載を希望される場合は、事前にご連絡ください。

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