米国人死者を避けるための北朝鮮への軍事攻撃発言

 米国トランプ大統領の代弁者として発言してきた共和党のグラム上院議員が、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)への軍事攻撃について新たな発言をした。

米軍戦車
「祖国解放戦争勝利記念館」に展示されている米軍戦車(2017年4月12日撮影)

 12月14日の「米アトランティック誌」のインタビューで、「現時点でトランプ大統領が軍事行動を選択する確率は30パーセント。北朝鮮が新たな核実験を実施した場合は70パーセントに上がる。戦争になれば、ピンポイント攻撃でなく全面戦争になる」とした。

 そればかりか「東アジアで数百万人の命を危険にさらしても、米国人の死者を避けるために軍事行動には意味がある」と語った。

 8月1日にはトランプ大統領が、「核・ミサイル開発を阻止するための戦争は、現地(朝鮮半島)で起きる。死ぬのは向こうなので、米国では死者は出ない」と語ったことが明らかになった。

 「米国第1主義」を掲げるトランプ大統領は、他民族への極端な差別主義者である。米国の安全保障のためには、東アジアで膨大な死者が出ても構わないと確信しているようだ。安倍首相は、こうした妄言に抗議すべきではないか。

北朝鮮残留日本人の波乱に満ちた84年間を記事

 『週刊金曜日』2017年12月8日号(同日発売)に、「大国に翻弄され続けた“最後の朝鮮残留日本人”荒井琉璃子さん(84歳)」と題した記事を6頁で掲載する。

荒井さん
荒井琉璃子さん(2017年8月10日撮影)

 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の咸興(ハムフン)市で暮らす荒井さんを、4日間にわたってインタビュー。そのすべての文字起こしを元に、日本・ソ連・米国という大国に翻弄され、帰国の機会を3回も逃した荒井さんの波乱に満ちた84年間を描いている。

北朝鮮は交渉提案、米韓は軍事力で威嚇

 米国が韓国とともに、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)へ危険な威嚇をしている。「史上最大規模」の米韓空軍による合同軍事演習「ビジラント・エース」が、12月4日から8日までの日程で始まった。

バス停の人々
平壌(ピョンヤン)市内でバスを待つ人々(2017年8月16日撮影)

 この演習には、約230機の航空機が参加。その中には、最新鋭ステルス戦闘機のF22とF35の24機が含まれている。これら戦闘機は、合同演習で自衛隊がその位置をまったくレーダーで補足できなかったというほどの性能がある。

 約230機のうちの75機が、岩国や嘉手納の在日米軍基地から参加している。米朝開戦になれば、確実にそれらの基地が攻撃を受けるのは確実だ。

 今回の演習の目的は、北朝鮮がソウルを狙うために軍事境界線に沿って配備している大量のロケット砲や、弾道ミサイル運搬のための移動式発射台への攻撃だという。

 米軍の先制攻撃に対する北朝鮮の反撃で、韓国と日本で甚大な被害が出る。米国ジョンズ・ホプキンズ大学の北朝鮮分析サイト「38ノース」が出した被害想定は、最悪の場合の死者は「ソウルで203万人」「東京で180万人」という驚くべき数字だ。

 今回の演習は、北朝鮮のそうした反撃能力を奪おうとするものだ。しかし、文字通りの一触即発の米朝関係が続く中で行うこの軍事演習は、北朝鮮への「牽制」「圧力」などではなく、どうみても危険な「挑発」でしかない。中国とロシアはそれを批判しているが、日本国内からはマスメディアを含めてほとんど聞こえない。

 米軍がいくら北朝鮮の反撃能力を奪おうとしても、ソウルへ落ちるロケット弾は間違いなくある。そのため米軍は先制攻撃の前に、韓国で暮らす米国籍の米軍将兵家族と民間人の退避を行なうだろう。

 「米国上院軍事委員会」メンバーで共和党のリンゼー・グラハム上院議員は3日、軍事衝突が近づいているとの認識を述べ、「国防省は在韓米軍の家族を韓国外へ退避させるべき」とした。一部には、すでにトランプ大統領は、退避を決めているという話もある。

 北朝鮮は、トランプ政権発足の1月以降、米国のシンクタンク「カーネギー国際平和財団」のダグラス・パール副会長へ8回の会談を提案。また「米国中央情報局」で朝鮮半島担当をした「ヘリテージ財団」のブルース・クリングナー上級研究員にも働きかけをした。だがこれらは、米国側の拒否によって実現していない。

 そうした中で、国連の政治担当トップのフェルトマン事務次長が、北朝鮮側からの提案に応じて5~8日の日程で北朝鮮を訪問する。こうした北朝鮮の対応は、核・ミサイル開発が完成に近づき米国との対等な交渉ができる時期になったと判断しているからだろう。

北朝鮮 「挙国一致」で日本は戦争準備

 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)が2カ月以上も核・ミサイル実験をしていないこともあり、米朝の軍事衝突は今のところ回避されている。だが11月20日に米国のトランプ大統領が、朝鮮への「テロ支援国家」再指定を発表したことで、米朝が交渉する環境は遠のいてしまった。

清津港
たくさんの木造漁船が係留されている清津港(2012年8月31日撮影)

 そして日本政府は米朝による大規模軍事衝突や全面戦争に備え、市民に対して戦争による影響や被害の覚悟を促すなど着実に準備を進めている。

 27日に河野太郎外相は衆院予算委員会において、韓国に在住・滞在する日本人の退避について言明。

 「民間航空機で退避できない状況になった場合は、政府保有の航空機・船舶を派遣する必要になる」と述べた。つまり、政府専用機や自衛隊の航空機・艦船を派遣するというのだ。自衛隊を使うということについては、間違いなく韓国で反発が起きるだろう。

 また厚生労働省は、北朝鮮から数万人の難民がやって来ることを想定して、感染症対策のための研究班を発足させる。この難民が武装していた場合について麻生太郎副総理兼財務相は9月23日、「新潟・山形・青森の方には間違いなく漂着する。じゃあ射殺か、真剣に考えた方がいい」と述べた。

 そして、23日に北朝鮮から秋田県へ漂着した漁船に乗っていた8人についての妄言が続いている。菅義偉官房長官はその翌日、北朝鮮の工作員である可能性を踏まえて調べると述べた。わざわざそのように言明する姿勢からは、命からがらたどり着いた人たちへの人としての心が感じられない。

 そればかりか、「リベラル」を掲げている立憲民主党の長妻昭代表代行は26日のテレビ番組で、「偽装漁民の可能性を精査しなければならず、国境と海域の守りを徹底して欲しい」と語った。

 日本のいかなる政党も、米朝の軍事衝突回避のために独自に動こうとしていない。政治的立場を越えた「挙国一致」で、日本は戦争への準備をしているようにみえる。

「北朝鮮危機」を作り出して武器を売るトランプ政権

 米国のトランプ大統領は11月6日、安倍首相との共同記者会見において、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)との軍事的危機によって日本へ武器を売り込もうとしている姿勢を明らかにした。

板門店の兵士
板門店で警備する朝鮮人民軍兵士(2016年8月21日撮影)

 「安倍首相が米国からより多くの兵器を購入すれば、北朝鮮のミサイルを上空で撃ち落とせるだろう。私が大事だと思うのは、安倍首相が米国から大量の兵器を購入すること。米国は世界最高の軍事装備を生産している。F35戦闘機でもミサイルでも、米国で多くの雇用が生まれ日本には安全をもたらすだろう」

 トランプ大統領はこのように述べ、日本がより多くの兵器を米国から購入するよう異例にも求めた。日本が購入を決めたイージス・アショアは1基1000億円以上もするが、日本全土のカバーには3~4基が必要。F35は1機147億円もする。また韓国が導入したTHAAD(サード)は、最低1000-1500億円だという。

 記者会見で、トランプ大統領の本音が明白になった。「危機」であれば高額な兵器が苦労せずに売れる。つまりトランプ大統領は、北朝鮮との軍事的な緊張を作り出してそれを少しでも継続させ、日本や韓国に高額な兵器を売りつけようとしているのだ。

 安倍首相はこれに対して、ステルス戦闘機F35Aや新型迎撃ミサイルSM3ブロック2Aなどを米国から購入すると述べた。そして、迎撃する必要のある北朝鮮の弾道ミサイルは打ち落とすとした。

 もはや日本はトランプ政権の金儲けの格好のカモと化し、米国の忠実な下僕として軍事的冒険に積極的な加担をしようとしている。
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プロフィール

こだわりジャーナリスト

Author:こだわりジャーナリスト
フリーランスのジャーナリストとして長年にわたりさまざまな取材を行い、数多くのメディアで発表してきました。
海外取材は200回近くで、そのうち北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)へは数十回です。現在、年1~3回の訪朝をしています。
掲載写真は、引用先が非表示のものは筆者撮影です。なお、このブログに掲載している映像と文章は日本の「著作権法」と国際的な著作権条約で保護されており、無断使用はできません。転載を希望される場合は、事前にご連絡ください。

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