北朝鮮 5回目の核実験は「空白」期間を狙ったもの

 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)は68回目の「建国記念日」の9月9日、5回目の核実験を行った。「朝鮮中央テレビ」は午後1時(日本時間1時30分)からの放送で、この実験を「核弾頭の威力を判定する核爆発実験」との声明を発表。

 弾道ミサイルに核弾頭を搭載するための、新たな段階に進んだのである。しかも過去最大規模の10‐12キロトンの爆発だと推測される。ロケットとミサイルの発射も、今年になって21発にもなる。

銀河3号模型
「未来科学技術殿堂」に展示されている「銀河3号」の模型(2016年6月1日撮影)

 潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)発射や、弾道ミサイル3発の同時発射・同地点落下を成功させたことにより、日米韓がそれらすべてを迎撃することは不可能になった。核兵器の小型化がより進めば、米国への核攻撃の確実な能力を持つことになる。

 中国は北朝鮮の核実験に強く反対しており、北朝鮮との民生部門での貿易の制限へ踏み出す可能性もある。韓国への高高度防衛ミサイル(THAAD)の配備に中国は強く反発して中韓関係は冷え込んでいるが、その状況が変わる可能性もある。それを承知で、北朝鮮はなぜ核・ミサイル実験を繰り返すのか? 

 これについて「国際社会への挑発・対決姿勢」「体制の引き締め」「何を考えているのか分からない」といった見方が相変わらず続いている。だがそのような言葉で片づけてしまうのは、この事態の本質をまったく見ようとしていないからだ。

 岸田文雄外務大臣は、いつものように「国連安保理決議違反」「日朝平壌宣言違反」と指摘し米韓との連携を語った。9日午後の安倍首相の米韓首脳との電話会談では、追加制裁について話し合われた。だが北朝鮮は、さらなる制裁強化で大きなダメージを受けたとしても、核・ミサイル開発を止めないのは明らかだ。

 北朝鮮の最初の核実験は2006年10月で、金正日(キム・ジョンイル)総書記の時代に2回。金正恩(キム・ジョンウン)委員長になってからは、ほぼ3年おきに実施されてきた。それが、今年1月の4回目実験の8カ月後に新たな実験が行われた。

 今年になってからミサイル発射実験を連続して行っていることからも、明らかに北朝鮮は核・ミサイル開発の方針を変えたのである。米国との交渉カードとして使ってきたを、米国を核攻撃できる確実な技術的能力を得ることを最優先にしたのだ。

 それは、核・ミサイル開発の進展をオバマ政権に見せつけても交渉が進まなかったこともあるが、来年1月の新大統領就任まで米国と交渉が出来ないという「空白」期間に入っているからだ。新大統領の朝鮮政策決定前に、可能な限りの核・ミサイル開発を進めてしまおうということだ。

 北朝鮮が、核・ミサイル開発を進める理由は明白である。朝鮮半島が南北に分断されて以降、北朝鮮は米国と政治的・軍事的に対決し、圧倒的軍事力の米韓による進攻の脅威に絶えずさらされてきた。それから自国を守る最強の手段が、核・ミサイル技術の完成なのだ。

 日米韓を中心とした軍事的・経済的圧力で、北朝鮮の核・ミサイル開発を止めることが不可能なのはより明らかになった。核放棄を先にしない限り北朝鮮と対話しないという米国の政策は完全に破たんした。もはや外交交渉しかない。

 米国は休戦状態のままの朝鮮戦争を終結させるために、北朝鮮と平和条約を結び体制保障をすべきだ。そして日韓は米国の朝鮮敵視政策に追随するのをやめ、自らの利益のための独自の外交交渉を始める必要がある。

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プロフィール

こだわりジャーナリスト

Author:こだわりジャーナリスト
フリーランスのジャーナリストとして長年にわたりさまざまな取材を行い、数多くのメディアで発表してきました。
海外取材は200回近くで、そのうち北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)へは数十回です。現在、年1~3回の訪朝をしています。
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