重要項目をはずした制裁解除

 北京での日本と北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)との政府間(外務省局長級)協議の結果を受け、日本政府は北朝鮮への独自制裁の一部を7月4日に解除しました。安倍晋三首相はこれまで、拉致・核・ミサイルを「包括的に解決する」と言い続けてきましたが、大きな政策転換をしたのです。

 日本が実施してきた独自制裁は、「ヒト・モノ・カネ」の流れを絶つという内容でした。制裁が続くことになった項目は色を変えています。
<ヒト>
  ○北朝鮮関係者の日本への入国禁止
  ○訪朝した朝鮮総連幹部の日本への再入国禁止
  ○北朝鮮へ行く人への渡航自粛の勧告
  ○航空機チャーター便の乗り入れ禁止
<モノ>
  ○人道目的の北朝鮮籍船舶の入港禁止
     貨客船「万景峰(マンギョンボン)92号」の入港禁止
  ○輸出入の禁止
     (個人が北朝鮮で入手した物品の日本への持ち込みを含む)

<カネ>
  ○10万円を超える現金の北朝鮮への持ち出しの届け出義務
  ○300万円を超える北朝鮮への送金の届け出義務

入管職員
新潟港へ着いた「万景峰92号」の船内での日本の入管職員による入国審査。不思議な光景である(2004年5月7日撮影)

 4日に解除された内容をみてみましょう。「北朝鮮関係者の入国」は、日本で開催されたスポーツの国際試合で北朝鮮選手団の入国が何度も認められています。
 「渡航自粛の勧告」は、各地の空港の出国審査場にその掲示が一時だけされただけのことで、最初から何の効力もありませんでした。2012年から訪朝するようになった日本人墓参団へは、適用を除外する措置が取られてきました。「日本人調査」の進捗状況を確認するための日本政府の調査チームが訪朝できるようにするための解除という意味合いが強いでしょう。あと、日本政府から自粛を強要されてきた旅行代理店が、北朝鮮ツアーを再開できるようになりました。

 テレビなどで一部の「北朝鮮専門家」が、カネについての制裁解除によって日本から北朝鮮へ入る資金が増えるなどと語っています。ですが、北朝鮮への「10万円を超える現金の持ち出し」と「300万円を超える送金」は、届け出さえすれば金額は無制限でした。私は北朝鮮での取材経費の支払いのために、毎回、数十万円を持ち出していました。税関での申告では書類1枚を渡すだけで、金額について言われたことは1度もありません。
 「万景峰92号」を除外した「人道目的の北朝鮮籍船舶の入港」が何の意味もないことは、6月28日のこのブログで指摘しました。

 今回の解除内容で大きな意味を持つのは「朝鮮総連幹部の再入国」です。これは、北朝鮮と総連が強く望んでいました。7月8日は金日成(キム・イルソン)主席が亡くなって20周年で、北朝鮮では追悼行事が予定されています。つまり、それに総連幹部が出席できるこのタイミングで解除されたようです。

 6月4日夕方、北京での日朝協議から帰国したばかりの宋日昊(ソン・イルホ)朝日国交正常化交渉担当大使が記者会見をしました。そして、「万景峰92号」の入港と輸出入の禁止についての制裁解除を求めました。つまり北朝鮮にとって、制裁項目の中でこの二つが極めて重要なのです。

e_04.gif
関連記事
広告
広告
広告
プロフィール

こだわりジャーナリスト

Author:こだわりジャーナリスト
フリーランスのジャーナリストとして長年にわたりさまざまな取材を行い、数多くのメディアで発表してきました。
海外取材は200回近くで、そのうち北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)へは数十回です。現在、年1~3回の訪朝をしています。
掲載写真は、引用先が非表示のものは筆者撮影です。なお、このブログに掲載している映像と文章は日本の「著作権法」と国際的な著作権条約で保護されており、無断使用はできません。転載を希望される場合は、事前にご連絡ください。

最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文: