北朝鮮の日本軍「慰安婦」問題は放置されたまま

 12月28日にソウルで日韓外相会談が行われ、「合意」文書が発表された。岸田文雄外相は、政府予算から10億円程度を拠出して設立する新たな「財団」による被害女性への支援は「賠償ではない」と明言した。

 安倍政権と朴槿恵(パク・クネ)政権の双方が大きな譲歩をした最大の理由は、日米韓の軍事同盟強化をはかる米国の強い圧力によるものだ。

 この「合意」での日本政府の姿勢をひと言でいえば、再び金を出すので韓国は2度とこの問題を蒸し返すなということだ。そもそも被害女性たちは、韓国の政府・地方自治体などによるさまざまな支援を受けており、日本からの金を必要としているような人はいない。

 日本政府は1995年、「アジア女性基金」を発足させ民間からの募金を被害女性たちに渡す事業を実施。だが日本政府の謝罪の気持が伝わらない「基金」は、韓国やフィリピンでは受け取り拒否が続出。

 そればかりか、名乗り出てからは互いに慰めあって暮していた被害女性たちに深刻な分裂をもたらした。にもかかわらず、財団の運用は韓国政府がおこなうものの、日本政府は再び中途半端な事業をしようとしている。

 韓国政府に登録された被害女性は238人で、生存者はもはや46人しかいない。死を目前にした彼女たちは、日本政府からの明確な謝罪を受けることで心安く死を迎えたいという思いなのだ。

 そのため、「謝罪」は首相の「手紙」などではなく、国会決議といった日本の国家としての意思を示す形で行われるべきだ。韓国国内では、大きな妥協をした朴槿恵大統領への大きな批判が起こるだろう。

 私は、韓国で金学順(キム・ハクスン)さんが名乗り出た1992年から、韓国・北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)・台湾・フィリピン・インドネシアなどをひんぱんに訪れ、約90人の被害女性たちを取材。

朴英深さん
北朝鮮で名乗り出た朴英深(パク・ヨンシム)さん。中国・昆明の捕虜収容所で米軍が撮影した記録写真の右端に写っている(2000年9月12日撮影)

 日韓間では、内容に大きな問題があるにせよ日本軍「慰安婦」問題が協議された。ところが、日本政府がまったく無視しているのが北朝鮮である。

 「アジア女性基金」の北朝鮮での実施について、受け入れを打診するためにある民間人が訪朝したことはあるが、日本政府は協議さえ行なわなかった。北朝鮮と同じように国交のない台湾に対しては、「アジア女性基金」や被爆者への援護措置は実施されている。

 つまり日本政府は、北朝鮮に対しては何もしようとしていないのである。これは政策というよりも、敵対する国家である北朝鮮との厄介な外交交渉を、政権・政治家と官僚が後回しにしているということだろう。その姿勢は「拉致問題」にも表れている。

e_04.gif
関連記事
広告
広告
広告
プロフィール

こだわりジャーナリスト

Author:こだわりジャーナリスト
フリーランスのジャーナリストとして長年にわたりさまざまな取材を行い、数多くのメディアで発表してきました。
海外取材は200回近くで、そのうち北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)へは数十回です。現在、年1~3回の訪朝をしています。
掲載写真は、引用先が非表示のものは筆者撮影です。なお、このブログに掲載している映像と文章は日本の「著作権法」と国際的な著作権条約で保護されており、無断使用はできません。転載を希望される場合は、事前にご連絡ください。

最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文: