日朝合意内容の報道についての問題点

 5月26~28日にスウェーデンで行われた日本と北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)との政府間(外務省局長級)協議で、大きな成果がありました。日本の多くのマスメディアの、日朝合意の内容に関する報道には問題点があります。
 合意事項には、北朝鮮側による「日本人調査」だけでなく、日本側は「日朝平壌(ピョンヤン)宣言にのっとって、不幸な過去を清算」することも明記されているにもかかわらず、そのことをほとんど報じていません。日朝間の「懸案事項」は拉致問題だけではなく、日本による朝鮮統治の清算もあるのです。過去の過ちを反省して正すことは、これからの日本にとって必要なことです。
 そしてマスメディアは、北朝鮮が実施する調査の対象に拉致被害者と「特定失踪者」だけでなく、日本人遺骨・埋葬地、残留日本人、日本人配偶者も含まれていることへの危惧を報じました。対象を広げることで、拉致被害者と「特定失踪者」の調査がおざなりになるのではないかと・・・。しかしそれは、この数年間に日朝で続いてきた重要なやり取りをまったく理解していません。

 2012年4月16日、宋日昊(ソン・イルホ)朝日国交正常化交渉担当大使が、訪朝した日本の元国会議員らに対し、日本人埋葬地への墓参と遺骨収容は民間レベルでも構わないと表明。それまでの、中井洽・衆議院予算委員長(当時)との秘密交渉を踏まえての公表でした。宋大使の発言を聞いた私は、日朝関係が今から大きく動くだろうと確信しました。
 その時から現在に至るまで、日本人埋葬地への墓参団が9回も訪朝しました。しかも毎回20人ほどのメディアの同行を認め、地方都市の農村部でも撮影制限を一切しませんでした。一方の日本政府は、北朝鮮への独自制裁として実施してきた渡航自粛勧告を、この墓参団については解除しました。長年にわたり日朝関係を取材してきた私には、こうした双方の対応は大変な驚きです。
 このように、北朝鮮が日本との関係改善のために本気で動き出したのは2年以上も前からで、墓参団訪朝の積み重ねの上に今回の画期的な日朝合意があるのです。

興南の埋葬地
興南(フンナム)の日本人埋葬地。調査のために遺骨が発掘された(2012年9月2日撮影)

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プロフィール

こだわりジャーナリスト

Author:こだわりジャーナリスト
フリーランスのジャーナリストとして長年にわたりさまざまな取材を行い、数多くのメディアで発表してきました。
海外取材は200回近くで、そのうち北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)へは数十回です。現在、年1~3回の訪朝をしています。
掲載写真は、引用先が非表示のものは筆者撮影です。なお、このブログに掲載している映像と文章は日本の「著作権法」と国際的な著作権条約で保護されており、無断使用はできません。転載を希望される場合は、事前にご連絡ください。

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