朝鮮半島を縦断した日本人探検家(中)

 米国の女性活動家であるグロリア・スタイネムさん(81)が5月24日に実施しようとしている非武装地帯(DMZ)を徒歩で越える計画は、まだ実現するかどうか分からない状況だ。

 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)は前向きに検討しているようだが、韓国は「国連軍司令部」に判断をゆだねた。こうしたことであっても対応を誤ると、南北関係がさらに悪化するかも知れないからだ。
 それほど、朝鮮半島を分断する軍事境界線を越えることは難しい。

 2007年8月、探検家の関野吉晴さんは北朝鮮の北端から韓国の南端までの旅を開始。だが関野さんが、自転車のクランク軸を忘れてきたために、平壌(ピョンヤン)で購入した自転車1台だけで走行することになった。

朝鮮半島縦断の旅は、中国との国境にそびえる標高2744メートルの白頭山(ペクトゥサン)からスタートすることになった。

 コーディネーターを任されている私は、平壌からそこへ行くために、この山の麓にある三池淵(サムジヨン)空港まで「高麗航空」の小型機をチャーターした。10人乗りを予約したのだが、空港に用意されていたのは40人乗りの「アントノフ24」だった。
 航空会社が、燃料消費が増える大きな機体へと変更したのである。その理由が、「天候が悪いから」と聞いて不安になる。

 空港ターミナルから滑走路へ行くまでの誘導路は、雨水で完全に水没していた。少なくても30センチは溜まっているだろ。窓からは、大きな水しぶきが上がっているのが見える。まるで「水上飛行機」である。
 無事に離陸すると、機内には安堵感が漂った。

 三池淵空港からは、チャーターした車で移動する。鬱蒼とした森林を走り続け、ようやく森林限界に出た。なだらかな斜面の先に白頭山の山頂が見える。

 白頭山は活火山で、山頂には巨大なカルデラ湖の「天池(チョンジ)」がある。最大水深が384メートル、水量は19億5500万立方メートルという巨大な池の全景は、なかなか見ることができないという。

 車から降りると、歩行者用の石段が設けられている。以前はこれがなく、車を降りたら山頂の近くだったので驚いたことがある。環境保護のためにも、歩道があった方が良いだろう。

070812白頭山の天池
わずかな時間だけ姿を見せた白頭山の天池(2007年8月12日撮影)

 山頂は、とんでもない強風が吹いていた。しかもその風は、火口へと吹き降ろしているのだ。よろよろと歩いている一行を見て、係員がやって来た。

 「危険なので吹き飛ばされないように!」

 落ちたら助からないだろう。しかしこの風のおかげで、カルデラ湖を覆っていた雲が晴れた。わずかな時間ながら、雄大で感動的な光景が眼前に広がる。超広角レンズでないと、全体が入らない。

 13日午後5時、平壌へ戻る飛行機内はモデル撮影会のようになった。定期便では、女性の客室乗務員にカメラを向けたら「撮影禁止」と冷たく言い渡される。ところがチャーター便なので、実に気さくに写真撮影に応じてくれるのだ。

平壌へ戻ると、自転車のクランク軸は車体に合わせて製作されていた。関野さんがすぐに試してみる。

 「問題なく使える」

 これでこれ以降の、北朝鮮の青年との自転車2台での走行が可能となった。(続く)

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プロフィール

こだわりジャーナリスト

Author:こだわりジャーナリスト
フリーランスのジャーナリストとして長年にわたりさまざまな取材を行い、数多くのメディアで発表してきました。
海外取材は200回近くで、そのうち北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)へは数十回です。現在、年1~3回の訪朝をしています。
掲載写真は、引用先が非表示のものは筆者撮影です。なお、このブログに掲載している映像と文章は日本の「著作権法」と国際的な著作権条約で保護されており、無断使用はできません。転載を希望される場合は、事前にご連絡ください。

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