北朝鮮「建国70周年」から日本へ戻って待ち構えていたものは

 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)へ「共和国創建70周年祝賀行事」の取材に行った。今年3回目、通算40回目である。

180909閲兵式
創建70年で行われた軍事パレード(2018年9月9日撮影)

 9月13日に羽田空港へ着くと、税関の前にかなりの乗客がすでに行列。「検査を強化しているのでご理解を」とのアナウンスが盛んに流れている。私の番になった。モニターを見た検査の職員の表情が急に厳しくなり、「北朝鮮には行ってないのか」と聞く。そうだと答えると「荷物を調べる」と言う。いつものことだ。ここから税関とのやり取りは、今回は約40分間続いた。

 職員は、検査しても何も出てこないのでスーツケースを閉じようとした。私は、「2005年に北朝鮮で購入した目覚まし時計がある」と伝えた。すると「包装を開けて使用したものは構わない」と言う。私は、税関が検査依頼を受けている経済産業省に電話して確認をするように要求。財務省の地方支分部局である税関による北朝鮮から持ち帰ったものの検査・没収は、明確な基準なしに行われているのではないかと疑ったからだ。

 経産省へ連絡した先の職員の上司が「持ち込むのは問題がない」改めて言う。そこで私は、今年6月28日の、関西空港での神戸朝鮮高校生徒への没収という対応との矛盾を質した。その時の没収品の中には、北朝鮮で購入後に着たスポーツウエアや、以前に現地で購入して日本から持って行ったポーチといったものがあるのだ。

 「時計は機械なので違う」などと、職員はわけのわからない理由を言う。私はさらに、神戸の朝鮮高校の後に、同じ関空へ戻った大阪朝鮮高校学校の生徒にはなぜ没収が行われなかったのかを質した。

 職員は「検査するかしないかは、その時の税関の状況による」という。つまり、北朝鮮から持ち込まれる何の問題もない土産や書籍の没収に時間をかけていたら、もっとも重要な薬物や金塊密輸の取り締まりがおろそかになるということのようだ。この日の羽田も大量の乗客が並んでいるにも関わらず、使われていない検査台があった。そのことを指摘すると、これで最大の体制だという。

 だが神戸と大阪の朝鮮高校への対応に差があったことは、もっと大きな理由がある。神戸朝鮮高校生徒への大量の没収は、新聞でも報じられて抗議が殺到。税関のカウンターはいくつもあるが、どの職員も大阪朝鮮高校生徒の誰からも没収しなかった。大阪税関の方針として控えたのは間違いない。

 なお神戸朝鮮高校へ、生徒から没収した品物の約80パーセントを返還するとの連絡があった。だがそのために、没収された人への事情聴取を求めているという。何というふざけた話だろう。没収された人が到底受け入れられない条件をつけ、「返還」のポーズを示すための対応だ。没収の際の「任意放棄書」には現住所の記載もあり、それへ連絡して返還すれば良いだけの話しである。

 この日、羽田で検査強化をしたのは、北朝鮮から戻る人が多いからではないという。だが私と同じ便で北朝鮮から戻った人たちは、ことごとく検査を受けて没収されていた。明らかに名簿を準備して待ち構えていたようだ。

 税関は、北朝鮮から戻った人の対応基準について上からの指示などはないという。だが私の体験からすると、没収の基準は日朝政府間の関係が見事に反映されてきた。

 北朝鮮への日本政府によるさまざまな制裁が続いている。その中で、目に見える税関でのこうした対応は、北朝鮮政策の象徴となっている。また安部首相の、北朝鮮への強硬策を示すためのものだ。そのために、北朝鮮から戻って来た人が持ち帰る数百円・数千円の品物を、制裁のための「輸入禁止対象」として容赦なく没収してきた。「民主主義国家」として愚かで恥ずかしいこの行為を、いつまで続けるつもりなのか。
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プロフィール

こだわりジャーナリスト

Author:こだわりジャーナリスト
フリーランスのジャーナリストとして長年にわたりさまざまな取材を行い、数多くのメディアで発表してきました。
海外取材は200回近くで、そのうち北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)へは数十回です。現在、年1~3回の訪朝をしています。
掲載写真は、引用先が非表示のものは筆者撮影です。なお、このブログに掲載している映像と文章は日本の「著作権法」と国際的な著作権条約で保護されており、無断使用はできません。転載を希望される場合は、事前にご連絡ください。

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