北朝鮮ツアー 日本人拘束と押し寄せる中国人
北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の中国・米国・韓国との首脳会談の結果、北朝鮮観光のツアー客が急増した。6月末にみた平壌(ピョンヤン)市の土産物店は、中国人観光客であふれていた。“爆買い”していくので、団体が三つもやって来たら商品を補充する必要があるという。
平壌市の中心部には、朝鮮戦争に参戦した中国人民義勇軍の戦死者を追悼する「友誼塔」がある。塔の横を通りかかった際、まっ赤な花がたくさん捧げられているのが見えた。それが気になり、すぐに訪ねた。「中国人参観者は、1日200人だったのが今では500人になりました」とここの案内人は語る。

板門店の売店にあふれる中国人観光客(2018年6月29日撮影)
そればかりか、韓国と軍事的に対峙している板門店(パンムンジョム)は、溢れるほどの中国人で“観光地”と化していた。駐車場にバスが入り切らないほどだという。朝鮮戦争の休戦協定調印場で、アイスクリームを食べながら見学している中国人たちがいるのを不思議に思った。なんとそこには、テントの売店が設置されていたのだ。
8月11日に、日本人ツアー客の拘束が報じられた。映像関係者とのことなので、それが私ではないかと何人かの知人が心配して電話してきた。拘束されているのは、映像クリエーターの杉本智之さん(39)。北朝鮮の西海岸にある港湾都市・南浦(ナムポ)で軍事施設を撮影した疑いをかけられているという。
北朝鮮へ入国するには、いくつかの方法がある。私の場合は取材をするためなので、政府系機関から「招聘(しょうへい)状」を出してもらって入国。それ以外には、観光客として入る方法がある。北朝鮮で海外からの観光客を受けているのは「朝鮮国際旅行社」。拘束された杉本さんは、欧州系の旅行会社のツアーに参加していたという。
政府系機関のルートでなく、観光客として入って取材している日本人の写真家や北朝鮮研究者がいる。その理由は、行動の制約が緩いからである。映像クリエーターの杉本さんが北朝鮮を訪れた理由には、北朝鮮の人々の日常を自然に描いた映画「ワンダーランド北朝鮮」の公開などがあるかも知れない。
今回の拘束を「日本政府との交渉カード」「日本への揺さぶり」と報じているメディアもある。だが「人民軍」や警察にあたる「人民保安省」といった機関は、外国人であっても違法行為を見つければ容赦なく摘発する。いままでの米国人や日本人の拘束は、政治的思惑と関係なく行なわれてきたと思われる。
政府系機関から「招聘」された私でも、平壌空港の入国審査と税関で調べられたことが2度もある。取り調べ室に移動し、多数の係官に取り囲まれて厳しく尋問された。私にまったく落ち度がないことがわかり、いずれも1時間ほどで解放された。
自らが受け入れた客が取り調べを受けたり拘束されたりした場合、その機関はとりあえず弁護するだろう。しかしその力は、軍や警察に対してはあまりにも限られている。ましてや、政府機関でない旅行社には何もできないだろう。
北朝鮮は、8月11日~9月5日まで外国人観光客の受け入れを中止すると発表。それは、押し寄せる中国人観光客の受け入れ態勢を整備するためかも知れない。また、拘束事件を起こしてしまった「朝鮮国際旅行社」へのペナルティーということも考えられる。
「軍事施設と軍人は絶対に撮影しないように!」と、初入国の外国人は必ず言われる。朝鮮戦争は、まだ終わっていない。圧倒的軍事力を持つ米国と韓国からの攻撃に備え、北朝鮮は厳戒体制を続けてきた。緊張がゆるんだ今でも、それが継続していることを忘れてはならない。
平壌市の中心部には、朝鮮戦争に参戦した中国人民義勇軍の戦死者を追悼する「友誼塔」がある。塔の横を通りかかった際、まっ赤な花がたくさん捧げられているのが見えた。それが気になり、すぐに訪ねた。「中国人参観者は、1日200人だったのが今では500人になりました」とここの案内人は語る。

板門店の売店にあふれる中国人観光客(2018年6月29日撮影)
そればかりか、韓国と軍事的に対峙している板門店(パンムンジョム)は、溢れるほどの中国人で“観光地”と化していた。駐車場にバスが入り切らないほどだという。朝鮮戦争の休戦協定調印場で、アイスクリームを食べながら見学している中国人たちがいるのを不思議に思った。なんとそこには、テントの売店が設置されていたのだ。
8月11日に、日本人ツアー客の拘束が報じられた。映像関係者とのことなので、それが私ではないかと何人かの知人が心配して電話してきた。拘束されているのは、映像クリエーターの杉本智之さん(39)。北朝鮮の西海岸にある港湾都市・南浦(ナムポ)で軍事施設を撮影した疑いをかけられているという。
北朝鮮へ入国するには、いくつかの方法がある。私の場合は取材をするためなので、政府系機関から「招聘(しょうへい)状」を出してもらって入国。それ以外には、観光客として入る方法がある。北朝鮮で海外からの観光客を受けているのは「朝鮮国際旅行社」。拘束された杉本さんは、欧州系の旅行会社のツアーに参加していたという。
政府系機関のルートでなく、観光客として入って取材している日本人の写真家や北朝鮮研究者がいる。その理由は、行動の制約が緩いからである。映像クリエーターの杉本さんが北朝鮮を訪れた理由には、北朝鮮の人々の日常を自然に描いた映画「ワンダーランド北朝鮮」の公開などがあるかも知れない。
今回の拘束を「日本政府との交渉カード」「日本への揺さぶり」と報じているメディアもある。だが「人民軍」や警察にあたる「人民保安省」といった機関は、外国人であっても違法行為を見つければ容赦なく摘発する。いままでの米国人や日本人の拘束は、政治的思惑と関係なく行なわれてきたと思われる。
政府系機関から「招聘」された私でも、平壌空港の入国審査と税関で調べられたことが2度もある。取り調べ室に移動し、多数の係官に取り囲まれて厳しく尋問された。私にまったく落ち度がないことがわかり、いずれも1時間ほどで解放された。
自らが受け入れた客が取り調べを受けたり拘束されたりした場合、その機関はとりあえず弁護するだろう。しかしその力は、軍や警察に対してはあまりにも限られている。ましてや、政府機関でない旅行社には何もできないだろう。
北朝鮮は、8月11日~9月5日まで外国人観光客の受け入れを中止すると発表。それは、押し寄せる中国人観光客の受け入れ態勢を整備するためかも知れない。また、拘束事件を起こしてしまった「朝鮮国際旅行社」へのペナルティーということも考えられる。
「軍事施設と軍人は絶対に撮影しないように!」と、初入国の外国人は必ず言われる。朝鮮戦争は、まだ終わっていない。圧倒的軍事力を持つ米国と韓国からの攻撃に備え、北朝鮮は厳戒体制を続けてきた。緊張がゆるんだ今でも、それが継続していることを忘れてはならない。
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