日朝首脳会談の実現には政策転換が必要

 3月21日、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、韓国・北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)・米国による三者首脳会談の可能性について言及した。

咸興を行き交うタクシー
咸興(ハムフン)市内を行き交うタクシー(2018年2月21日撮影)

 また韓国は、歌手やアイドルグループで構成する芸術団160人を、3月31日から4月3日まで平壌(ピョンヤン)へ派遣することを決めた。南北融和を進めようという文在寅政権の強い意志が表れている。

 一気に動き出した北朝鮮情勢に対し、異常なほど米国以上の北朝鮮バッシングに力を注いできた安倍政権は完全に対応が遅れた。このままでは蚊帳の外に置かれるのは確かだ。「朝鮮中央通信」は20日の論評で、安倍政権を批判している。

 「予想できなかった急激な朝鮮半島情勢の変化によって、ひとりぼっちの境遇になった日本の安倍一味は、北朝鮮の対話平和攻勢は国際社会の持続的な圧力の結果だの、気短な対話は北朝鮮の時間稼ぎに巻込まれることだの、制裁を緩めることがあっては絶対にいけないだのと騒がしく振舞っている」

 北朝鮮が対話へ転じたのは、核・ミサイル技術がほぼ完成したため、米国と対等の立場で交渉できるようになったと判断したからだ。「制裁の効果」などではない。

 今月3日まで、13日間にわたって平壌と地方都市で取材した。道路を行き交う自動車の数は減ってはいなかったし、ガソリン代を含む車両チャーター価格は変化がなかった。それどころか地方都市でも、新しいガソリンスタンドやタクシーを何度も目撃した。

 平壌で昨年4月に完成した黎明(リョミュン)通りでは、今も大掛かりなライトアップが続いている。厳しい制裁が長期にわたって続けば目に見える形での影響が出るかも知れないが、今時点では変化はない。

 安倍政権は、日朝首脳会談に意欲があることを複数のルートで北朝鮮へ伝えたという。だがそれに、北朝鮮が容易に応じることはないだろう。北朝鮮の最大の外交目標は、米国との関係改善である。韓国との対話推進は、そのための方策の一つでもある。北朝鮮には、すぐに日朝関係改善に取り組む必要性がないのだ。

 しかも、拉致問題への強硬姿勢で首相になった安倍晋三とでは、交渉が進んだとしても結局は拉致問題で行き詰まることが目に見えている。それは2014年の「日朝ストックホルム合意」の破たんで明らかだ。

 安倍首相が本気で日朝関係改善を考えているのならば、拉致問題だけでなく他の課題にも同時に取り組むという方針へ転換するべきだ。

 その課題とは2002年の「日朝平壌宣言」で合意した日本による朝鮮植民地支配に対する賠償・被害者への補償。そして、そもそもは日本が北朝鮮に強く要求していた残留日本人・日本人妻の里帰りの実施、朝鮮各地の日本人埋葬地への政府事業での墓参と遺骨収容などである。
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プロフィール

こだわりジャーナリスト

Author:こだわりジャーナリスト
フリーランスのジャーナリストとして長年にわたりさまざまな取材を行い、数多くのメディアで発表してきました。
海外取材は200回近くで、そのうち北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)へは数十回です。現在、年1~3回の訪朝をしています。
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