北朝鮮 米国の孤立化圧力に応じず58カ国から196人が祭典に参加

 「週刊金曜日」2017年9月8日号へ掲載した記事を紹介する。

 遠くで聞こえていた若者たちの歌声が、次第に大きくなってきた。軍服に似た制服を着ている100人ほどが、国旗を先頭に隊列を組んで足早に行進して来る。この集団は「高級中学校」3年生による「赤い青年近衛隊」。歌っているのは「人民軍へ行こう」という歌で、自分たちを「朝鮮人民軍」へ入隊させて欲しいとの内容だという。

赤い青年近衛隊
光復(クァンボク)通りを行進する「赤い青年近衛隊」(2017年8月17日撮影)

 これは、米国との軍事的緊張が高まっているため各地で行われているとのこと。「朝鮮労働党」機関紙『労働新聞』電子版(8月12日付)は、347万5000人が入隊・復隊を嘆願したと報じた。

 朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)に、単独取材のため8月5日から18日まで滞在。前回に訪れた4月と同じように、米国との軍事衝突の危機が極めて高まっている中での取材となった。

 実はこの滞在中に軍事的緊張を感じたのは「赤い青年近衛隊」の行進を見た時だけ。首都・平壌(ピョンヤン)だけでなく、地方都市2カ所でも、街に緊張感はまったくなかった。

 それは、韓国と日本にも甚大な被害が出る攻撃に、米国はまだ踏み出せないとの判断なのだろう。また、米国による核攻撃の危機が今までに何度もあり、戦争への覚悟ができているのではないか。

 ただ変化としては、平壌市内を走る車の数が減り、通勤時間帯に必ず起きていた渋滞を見なかった。チャーターした車の運転手に聞くと、ガソリン価格は少し上がっているという。中国税関当局の発表によると、中国から朝鮮へのガソリン輸出量は、前年同月比で6月は30パーセント、7月は97パーセントも減少した。

腕を組む若い男女
腕を組んで歩く若い男女(2017年8月16日撮影)

●圧力の効果は限定的
 8月15日は朝鮮では、日本による朝鮮植民地支配の終焉を記念する「祖国解放記念日」。今年は「金日成(キムイルソン)主席生誕105周年、金正日(キムジョンイル)総書記生誕75周年、金正恩(キムジョンウン)委員長が党・国家の最高指導者となって5周年」という節目の年とされている。

 そのため13日~17日に「第5回白頭山(ペクトゥサン)偉人を讃える国際祭典」としていくつもの行事を開催。「祭典」は平壌市内と白頭山地域で大規模に実施するというもので、私は数カ月前から取材交渉をして許可された。

 この「祭典」に、ネパール・ナイジェリア・ロシア・ウクライナ・デンマーク・エジプトなど海外58カ国から196人の朝鮮と友好関係にある団体・個人が参加。全体的に年配の参加者が多いが、ヨーロッパからは若者が目立った。「祭典国際準備委員会」の名誉委員長は、ネパールの前首相であるマダブ・クマル・ネパール氏が務めた。

 参加人数がもっとも多かった国は日本で、金丸信氏の次男である金丸信吾氏や、元衆議院議員の日森文尋氏、民主党政権で法務大臣を務めた平岡秀夫氏などの17人。そして発表された参加国リストには、朝鮮への制裁を強化している中国と、9月1日からの自国民の朝鮮への渡航禁止を前にした米国の名前はなかった。

 このように参加者の顔ぶれは、金日成主席が積極的に推進した「非同盟運動」によって築かれたアジア・アフリカ・ラテンアメリカとの強い友好関係と、この国を取り巻く現在の厳しい国際状況を反映している。

咸興の内水浴場
平日もにぎわう咸興(ハムフン)の海水浴場(2017年8月7日撮影)

 14日には、白頭山の山頂で集会が開催された。「反帝自主と社会主義の砦である朝鮮を支持する」との「白頭山宣言」を発表。平壌市内では15日に「白頭山偉人を讃える大会」、16日に「朝鮮人民との連帯集会」が開催。これら一連の行事は、金正恩委員長を先の最高指導者2人と同格に位置付けたという大きな意味がある。

 朝鮮の核・ミサイル開発は、米国から体制保障を得るためのものだ。ところが米国はそれを拒否し、朝鮮へさまざまな圧力をかけてきた。朝鮮は現在、国連加盟193カ国のうちの162カ国と国交がある。

 米国はそれらの国に対し、朝鮮との外交と経済関係を断絶・格下げするよう働きかけてきた。ところがそれは功を奏していない。スペインなどが自国駐在の朝鮮外交官の削減を求め、英国が朝鮮駐在大使の召還を発表したが、それは非常に限定的なものだ。

 1945年に朝鮮半島が南北に分断されて以来、朝鮮は自らの存亡をかけて米国と政治的・軍事的に対峙してきた。その「反米・反帝国主義」という朝鮮の姿勢に共感する国や団体が、世界には数多くあるという事実に目を向けるべきだ。
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プロフィール

こだわりジャーナリスト

Author:こだわりジャーナリスト
フリーランスのジャーナリストとして長年にわたりさまざまな取材を行い、数多くのメディアで発表してきました。
海外取材は200回近くで、そのうち北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)へは数十回です。現在、年1~3回の訪朝をしています。
掲載写真は、引用先が非表示のものは筆者撮影です。なお、このブログに掲載している映像と文章は日本の「著作権法」と国際的な著作権条約で保護されており、無断使用はできません。転載を希望される場合は、事前にご連絡ください。

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