北朝鮮「火星12型」上空通過で日本は異常事態

 8月29日午前5時58分、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)は中距離弾道ミサイル「火星12型」を発射。平壌(ピョンヤン)市郊外の「順安(スナム)国際空港」の滑走路から打ち上げられ、日本の渡島半島から襟裳岬の上空を通過して公海へ落下した。相次いで行われた「ロフテッド軌道」での打ち上げ実験が、次の段階へと進んだのだ。

火星12型
軍事パレードで公開された「火星12型」(2017年4月15日撮影)

 驚きなのは、この打ち上げに対する日本国内での異常な反応だ。日本政府は発射4分後に「全国瞬時警報システム(Jアラート)」で12道県にミサイル発射情報を伝達。テレビ各局は、通常番組を中断して「国民保護に関する情報」として「ミサイル発射。ミサイル発射。北朝鮮からミサイルが発射された模様です。頑丈な建物や地下に非難して下さい」との画面へ切り替えたりした。

 また、対象地域では携帯電話が自動的に鳴って情報が通知され、屋外に設置された「防災行政無線」はサイレンが鳴ってアナウンスが流れた。これではまるで、アジア太平洋戦争での「空襲警報」と同じではないか。そのため新幹線を含むいくつもの鉄道が運行を一時停止し、休校にした学校もあった。政府がそのようにおおげさな警報を流せば、社会が大混乱するのは当然だ。

 それでいて日本政府は、この弾道ミサイルを撃ち落とそうとしたわけではない。安倍首相は「発射直後からミサイルの動きを完全に把握している」と語った。つまり、日本に被害をもたらすことがないと分かっていて警報を流し続けたのである。

 拉致問題への厳しい対応で政権を取った安倍首相は、北朝鮮への恐怖を徹底的に煽ることが支持率を増やす最大の方策だと思っているのだろう。その結果、もはや日朝関係は容易に修復できない最悪の状態になってしまった。

 安倍首相は北朝鮮との外交交渉を放棄し、米国に追随して圧力一辺倒の対応をしている。それが、米朝の軍事衝突に巻き込まれるなどこの国を危うくしていることは、百も承知しているはずだ。拉致・核・ミサイル問題を、自らの利益のために利用するのはもうやめるべきだ。
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プロフィール

こだわりジャーナリスト

Author:こだわりジャーナリスト
フリーランスのジャーナリストとして長年にわたりさまざまな取材を行い、数多くのメディアで発表してきました。
海外取材は200回近くで、そのうち北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)へは数十回です。現在、年1~3回の訪朝をしています。
掲載写真は、引用先が非表示のものは筆者撮影です。なお、このブログに掲載している映像と文章は日本の「著作権法」と国際的な著作権条約で保護されており、無断使用はできません。転載を希望される場合は、事前にご連絡ください。

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