北朝鮮 宋日昊大使に単独インタビュー

 「週刊金曜日」2017年4月28日・5月5日合併号に掲載した記事を紹介する。


宋日昊大使に単独インタビュー
「平壌宣言」を重視しながら人道的課題で日朝関係改善を求める


 朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)が計画する核実験と米韓合同軍事演習により、朝鮮戦争以降で最大の軍事的危機が高まっている。そうした中で朝鮮は、4月15日に金日成(キム・イルソン)主席生誕105年の記念日を迎えた。

宋日昊大使
単独インタビューに応じる宋日昊大使(2017年4月20日撮影)

 宋日昊(ソン・イルホ)朝日国交正常化交渉担当大使は17日、その取材に訪れていた日本メディアの記者団との会見に応じた。私はそれを聞いた翌日、記者団とともに平壌(ピョンヤン)から車で約5時間の咸鏡南道(ハムギョンナムド)咸興(ハムフン)市へ。ここで、残留日本人と日本人妻を取材した。

 84歳のリ・ウグンさん(日本名・荒井琉璃子さん)は、自宅でインタビューに応じた。熊本県出身の両親の間に「京城」(現在のソウル)で生まれる。日本敗戦の混乱の中で家族とはぐれ、朝鮮人に育てられて結婚。中国東北地方と同じ状況がソ連軍管理下の朝鮮半島北部でもあり、残留日本人がたくさんいた。13日に単独インタビューした「日本研究所」の曺喜勝(チョウ・ヒスン)上級研究員は、3年前の調査で残留日本人9人を確認していることを明らかにした。

 咸興市では、在日朝鮮人の夫とともに「帰国事業」によって朝鮮へ渡ったいわゆる日本妻たちによる「咸興にじの会」の会員たちとその事務所の取材もすることができた。

 平壌へ戻った20日夜に、宋大使への3時間に及ぶ単独インタビューが実現した。記者団には語られなかったより突っ込んだ話があった。
 私はまず、残留日本人と「にじの会」を初公開した意図について聞いた。「日本の記者から取材希望があったが、個別に認めると(朝鮮の)工作活動と言われるので、多くの記者が来た時に設定した」と述べた。だが「日本の政府・民間を問わず、(日本人埋葬地)墓参や残留日本人での提起があれば前向きに対応する」と語るなど、人道的課題を見せようとしたのは確かだ。

 宋大使は17日の会見で「ストックホルム合意」は「すでに無くなっており、その責任は日本にある」とした。そして「合意」に基づいて日本人調査を実施していた「特別調査委員会」は「解体された」と語った。

 この発言に対して岸田文雄外務大臣は18日、「まったく受け入れられず、合意履行を引き続き求めていく」と強く反発。私は宋大使に、それをどのように受け止めるか質した。「拉致問題だけを進めるよう求める発言であり認められない。合意とは、破棄すると再び戻すことができないもの」と述べ、復帰する意思がまったくないことを明言した。

 しかし宋大使は「『日朝平壌宣言』は首脳会談によるものなので非常に大切にしており、関係改善の里程標となっている」とした。つまり、金正日(キム・ジョンイル)総書記が署名した宣言は絶対的なものであり、あくまでも守ろうとしているのだ。

 「朝鮮革命博物館」がリニューアルされて3月30日に開館。朝鮮の解放と建国、社会主義建設の歴史が約100室に展示されている。私は外国人ジャーナリストとして初めて取材できた。日本に関する展示室にはパネルや写真、人々の日用品などが並び、植民地支配の実態を細かく解説。昨年6月には、日本・米国との対決の歴史を若い世代に教えることを目的とした「中央階級教養館」がオープンしている。

 宋大使は「『日朝平壌宣言』の中核は過去の清算であり、これを抜きにして実りある関係は結べない」と語った。その姿勢を改めて示しながらも、日本国内で批判が出にくい人道課題で対話の糸口を再び探る。これが現在の朝鮮の、日本に対する方針のようだ。

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プロフィール

こだわりジャーナリスト

Author:こだわりジャーナリスト
フリーランスのジャーナリストとして長年にわたりさまざまな取材を行い、数多くのメディアで発表してきました。
海外取材は200回近くで、そのうち北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)へは数十回です。現在、年1~3回の訪朝をしています。
掲載写真は、引用先が非表示のものは筆者撮影です。なお、このブログに掲載している映像と文章は日本の「著作権法」と国際的な著作権条約で保護されており、無断使用はできません。転載を希望される場合は、事前にご連絡ください。

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