北朝鮮 米国務長官の「20年間」発言の意味

 3月15日、米韓合同軍事演習に参加している米軍の戦略爆撃機「B1」2機が北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)と中国への威嚇のために韓国上空を飛行。同日には原子力空母「カール・ビンソン」が釜山へ入港した。

板門店将校
板門店(パンムンジョム)の人民軍将校(2016年8月21日撮影)

 その同じ日、レックス・ティラーソン米国務長官が来日。17日には訪韓し、北朝鮮へのトランプ政権の姿勢を次々と表明した。

 注目すべきは「米国政府のこの20年間の北朝鮮政策は失敗で、異なるアプローチが必要。あらゆる選択肢がテーブルにある」と述べたことだ。この「20年」とはどういう意味があるのか。

 北朝鮮は1993年に「核拡散防止条約(NPT)」から脱退を表明。交渉に失敗したクリントン政権は、寧辺(ヨンビョン)にある核関連施設を空爆する準備をした。だが北朝鮮の報復によって100万人以上の韓国人が死亡すると推定されて、韓国の金泳三(キム・ヨンサンム)大統領が反対。そのため攻撃は中止された。結局、クリントン政権「米朝枠組み合意」を行い、核開発凍結の見返りとして電力供給のための軽水炉の供与に踏み切った。

 その後のジョージ・W・ブッシュ大統領は、北朝鮮を「悪の枢軸」と非難するなど強硬策を行ったが、政権末期になって「テロ支援国家指定」を解除するなど対話へと転換した。

 次に誕生したオバマ政権は、米国との「平和条約」締結を求めて核・ミサイル開発を推進する北朝鮮に対して「戦略的忍耐」の名の下に何の対応もしなかった。ティラーソン長官は、こうした交渉と破たん、そして放置という「20年間」を否定し、北朝鮮政策を大きく転換するとしているのだ。

 またティラーソン長官は「今は北朝鮮と対話をする時ではない。挑発をエスカレートさせたら適切な措置を取る」と述べており、政策転換によって選択するのは軍事的対応と推定される。

 米国が北朝鮮へ軍事攻撃をした場合、それへの反撃によって韓国や日本に甚大な被害が出る。ティラーソン長官は「軍事的な葛藤までいくことを望んでいない」とも語っており、北朝鮮への軍事攻撃の脅しは牽制することが目的とみることもできる。

 だが外交経験が不足し政策が不安定なトランプ大統領が、「イスラム教徒の入国禁止」のような信じられないほど愚かな選択をする可能性はある。また、軍事的な緊張を極限まで高めていることは、偶発的な衝突が大規模戦闘へと発展する危険性がある。

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プロフィール

こだわりジャーナリスト

Author:こだわりジャーナリスト
フリーランスのジャーナリストとして長年にわたりさまざまな取材を行い、数多くのメディアで発表してきました。
海外取材は200回近くで、そのうち北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)へは数十回です。現在、年1~3回の訪朝をしています。
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