金正男事件でわかった「脱北」への日本人記者の関与

 2月24日、金正男(キム・ジョンナム)氏の死因についてマレーシアの警察長官はVXによる殺害と断定したと表明。いくつものマスメディアは、それを実行したインドネシア人とベトナム人の女性が、二つの毒物を金正男氏の顔面で混ぜてVXにしたとの推測を流している。果たしてそのようなことが可能なのか、マレーシア政府は解明する必要がある。

 他に気になるのは、クアラルンプール空港で死亡したのは金正男氏ではないとの報道があることだ。2月24日に発売された講談社『フライデー』(3月10・17日号)は、「金正男の遺体から消えた『虎と龍の入れ墨』のナゾ」との記事を掲載。インターネット・メディアでも同様の記事が出ている。

 その内容は次のようだ。2013年に「フジテレビ」記者へ金正男氏から送られてきたという写真には、腹部と肩に大きな入れ墨がある。18日にマレーシアの『NEWS STRAITS TIMES』紙が、空港にある診療室の椅子で仰向けになった金正男氏の写真を掲載。それには、Tシャツの下に見えている腹部に入れ墨がないように見えるのだ。

 つまり死亡した人か、入れ墨をした人のどちらかが金正男氏ではない可能性があるというのだ。マレーシア政府はこの点についても、親族へのDNA鑑定によって明らかにする必要がある。

 この事件によって北朝鮮への関心が高まる中で、普段では取り上げられないような話が記事になっている。韓国の『ハンギョレ新聞』電子版(2月23日付)は「[コラム]北京の北朝鮮担当日本記者たち」との記事を配信。

 その中に注目すべき内容がある。「北朝鮮の実態を取材しようと(中国)東北地方で脱北者に接触して、こころならずも脱北の過程に介入したという記者もいた」。つまり、日本人記者が「脱北」の手助けをしたということなのだ。

 「ハンギョレ新聞」という同業者に日本人記者が気を許して語ったことなのだろうが、これは重大な問題である。つまり、国家関係にも大きな影響を与える可能性がある極めて政治的な「脱北」に、取材者という一線を越えてかかわった。その時に明らかになればその責任を問う「事件」となったのであろうし、所属するメディアからの処分を受けたかも知れない。

 韓国の次期大統領は、北朝鮮との融和・関係改善を目指す候補者が当選する可能性が高い状況だが、今回の事件でそれを阻止しようとする保守勢力の勢いが増している。米国のトランプ大統領は「ロイター通信」に対して、金正恩(キム・ジョンウン)委員長とのトップ会談の可能性について「もう遅すぎる。我々は彼がやってきたことに非常に怒っている」と述べた。

 北朝鮮に対する非難が高まるならば、米国と韓国による北朝鮮への軍事攻撃の可能性が高まるのは確かだ。

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プロフィール

こだわりジャーナリスト

Author:こだわりジャーナリスト
フリーランスのジャーナリストとして長年にわたりさまざまな取材を行い、数多くのメディアで発表してきました。
海外取材は200回近くで、そのうち北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)へは数十回です。現在、年1~3回の訪朝をしています。
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