北朝鮮 「核実験完了」宣言の真偽は?

 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)が9月27日、核兵器開発のための実験完了の宣言をしたとロシアの複数のメディアが報じた。

銅像
金日成(キム・イルソン)主席と金正日(キム・ジョンイル)総書記の銅像(2016年8月20日撮影)

 それらの報道によると、ロシア駐在北朝鮮大使館はこの日、現地メディアに声明を配布した。9月9日に実施した第5回目の核実験によって、戦略弾道ミサイルに装着する核弾頭の特性・作用・技術性能・威力を点検。

 そのため、核兵器の研究・開発業を基本的に完了させたとしている。つまり、これ以上の核実験を行わない可能性があるということだ。

 この極めて重要な発表が、平壌からではなくロシア駐在大使館から行われたということに不自然さはある。

 国連安全保障理事会と日米韓によって強化が検討されている制裁は、核実験実施への懲罰であるよりも、さらなる実験への抑止という意味合いが大きい。ところが北朝鮮がこれ以上の核実験を実施しないならば、それはほとんど無意味となる。

 もしロシア駐在大使館の宣言がその通りであるならば、米国と日本・韓国にとって北朝鮮との交渉の絶好の機会である。

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北朝鮮 制裁強化よりも人道支援を!

 私は『週刊金曜日』 8月19日号で、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)による核実験が近く行われると予想した。核・ミサイル技術を完成させるために、連続的に実験は実施されると確信していたからだ。

 8月26日に北朝鮮取材から戻り、 TVでの特集制作に集中。9月9日の「建国記念日」に合わせ、二つのニュース番組の中で放送することになった。この日の核実験実施で放送は「タイムリー」になったものの、特集のトーンは変わってしまった。

 いつものように新聞社からはコメントを求められ「日本を含め、国際社会が早期に北朝鮮との外交交渉に乗り出すことが必要」などと話す。翌日の朝刊には、8月に撮影した写真とともに大きく掲載された。

WFP平壌事務所
「世界食糧計画」の平壌(ピョンヤン)事務所(2004年10月撮影)

 現在この核実験に対し「国連安保理」は、さらなる制裁強化のために動き出している。また日本政府も、独自制裁の強化を発表。日本がすでに実施している制裁は「ヒト・モノ・カネ」である。「モノ・カネ」については、出来ることはすべて実施しているためにこれ以上を厳しくすることは不可能。そのため「ヒト」の往来をさらに制限しようとしている。

 自民党は「在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)」 幹部の再入国禁止対象を拡大する方針を固めた。北朝鮮に対しては出来ることがないため、「北朝鮮制裁」という名のもとで、またしても在日朝鮮人への「八つ当たり」である。

 これは筋違いというだけでなく、重大な人権侵害である。日本で生まれて日本に家族や生活がある在日朝鮮人であっても、北朝鮮へ行ったならば日本へ戻ることを認めないというとんでもない措置だ。これは、日本の民主主義を大きく後退させる行為だ。北朝鮮を懲らしめるためには何をやっても構わない、という今の日本の政治・社会やマスメディアの風潮は極めて危険である。

 北朝鮮の北部では、台風10号による大洪水によって甚大な被害が出ている。 国連の「世界食糧計画(WFP)」は、 14万人余りの被災者に緊急食糧支援を実施。国際社会に対し、継続的な支援を呼びかけた。

ところが岸田文雄外相は14日、核実験や弾道ミサイル発射を理由に、現時点で支援を行う考えがないことを表明した。「敵」には塩を送らないということのようだ。

 しかし北朝鮮と重要課題を解決しようと本気で考えているならば、その話し合いの雰囲気をつくるのためも、この災害に対する人道支援を実施すべきではないか。

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北朝鮮 5回目の核実験は「空白」期間を狙ったもの

 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)は68回目の「建国記念日」の9月9日、5回目の核実験を行った。「朝鮮中央テレビ」は午後1時(日本時間1時30分)からの放送で、この実験を「核弾頭の威力を判定する核爆発実験」との声明を発表。

 弾道ミサイルに核弾頭を搭載するための、新たな段階に進んだのである。しかも過去最大規模の10‐12キロトンの爆発だと推測される。ロケットとミサイルの発射も、今年になって21発にもなる。

銀河3号模型
「未来科学技術殿堂」に展示されている「銀河3号」の模型(2016年6月1日撮影)

 潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)発射や、弾道ミサイル3発の同時発射・同地点落下を成功させたことにより、日米韓がそれらすべてを迎撃することは不可能になった。核兵器の小型化がより進めば、米国への核攻撃の確実な能力を持つことになる。

 中国は北朝鮮の核実験に強く反対しており、北朝鮮との民生部門での貿易の制限へ踏み出す可能性もある。韓国への高高度防衛ミサイル(THAAD)の配備に中国は強く反発して中韓関係は冷え込んでいるが、その状況が変わる可能性もある。それを承知で、北朝鮮はなぜ核・ミサイル実験を繰り返すのか? 

 これについて「国際社会への挑発・対決姿勢」「体制の引き締め」「何を考えているのか分からない」といった見方が相変わらず続いている。だがそのような言葉で片づけてしまうのは、この事態の本質をまったく見ようとしていないからだ。

 岸田文雄外務大臣は、いつものように「国連安保理決議違反」「日朝平壌宣言違反」と指摘し米韓との連携を語った。9日午後の安倍首相の米韓首脳との電話会談では、追加制裁について話し合われた。だが北朝鮮は、さらなる制裁強化で大きなダメージを受けたとしても、核・ミサイル開発を止めないのは明らかだ。

 北朝鮮の最初の核実験は2006年10月で、金正日(キム・ジョンイル)総書記の時代に2回。金正恩(キム・ジョンウン)委員長になってからは、ほぼ3年おきに実施されてきた。それが、今年1月の4回目実験の8カ月後に新たな実験が行われた。

 今年になってからミサイル発射実験を連続して行っていることからも、明らかに北朝鮮は核・ミサイル開発の方針を変えたのである。米国との交渉カードとして使ってきたを、米国を核攻撃できる確実な技術的能力を得ることを最優先にしたのだ。

 それは、核・ミサイル開発の進展をオバマ政権に見せつけても交渉が進まなかったこともあるが、来年1月の新大統領就任まで米国と交渉が出来ないという「空白」期間に入っているからだ。新大統領の朝鮮政策決定前に、可能な限りの核・ミサイル開発を進めてしまおうということだ。

 北朝鮮が、核・ミサイル開発を進める理由は明白である。朝鮮半島が南北に分断されて以降、北朝鮮は米国と政治的・軍事的に対決し、圧倒的軍事力の米韓による進攻の脅威に絶えずさらされてきた。それから自国を守る最強の手段が、核・ミサイル技術の完成なのだ。

 日米韓を中心とした軍事的・経済的圧力で、北朝鮮の核・ミサイル開発を止めることが不可能なのはより明らかになった。核放棄を先にしない限り北朝鮮と対話しないという米国の政策は完全に破たんした。もはや外交交渉しかない。

 米国は休戦状態のままの朝鮮戦争を終結させるために、北朝鮮と平和条約を結び体制保障をすべきだ。そして日韓は米国の朝鮮敵視政策に追随するのをやめ、自らの利益のための独自の外交交渉を始める必要がある。

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プロフィール

こだわりジャーナリスト

Author:こだわりジャーナリスト
フリーランスのジャーナリストとして長年にわたりさまざまな取材を行い、数多くのメディアで発表してきました。
海外取材は200回近くで、そのうち北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)へは数十回です。現在、年1~3回の訪朝をしています。
掲載写真は、引用先が非表示のものは筆者撮影です。なお、このブログに掲載している映像と文章は日本の「著作権法」と国際的な著作権条約で保護されており、無断使用はできません。転載を希望される場合は、事前にご連絡ください。

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