危機は「北朝鮮の挑発」によるものなのか?

 朝鮮半島は、憂慮すべき危険な事態に陥っている。北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)と韓国・米国との間で、いつ偶発的な戦闘が起きてもおかしくない。

非武装地帯と韓国軍陣地
非武装地帯とその中にある韓国軍陣地(2007年8月19日撮影)

 北朝鮮は3月3日にロケット弾、10日に短距離弾道ミサイル、15日に弾道ミサイルの大気圏再突入の模擬実験、18日に中距離弾道ミサイルの発射実験を実施。これら一連の実験は、7日から始まった米韓合同軍事演習に対抗したものだ。

 韓国軍は21日には、北朝鮮の重要施設を攻撃する訓練を実施。北朝鮮の戦闘機を撃墜した上で爆撃し、輸送機で特殊部隊を送り込むという。韓国国防省報道官は「北の挑発を抑えるための訓練」とした。

 これに対し、北朝鮮の「祖国平和統一委員会」は23日に「重大報道」を発表。金正恩(キム・ジョンウン)第1書記ら指導部を狙った訓練は容認できないとし、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領を「この地から除去する」ための「正義の報復戦に向かう」とした。

 こうした事態は、毎年のように繰り返されてきた。その原因は、3月上旬から約2カ月間にわたって実施してきた最新兵器を投入した米韓合同の大規模軍事演習である。「北の挑発を抑える」との名目の軍事演習が、北朝鮮の軍事行動を招いているのだ。

 つまり、「北朝鮮の挑発」によってこの危険な状況が引き起こされたとはいえない。どの国家でも敵対国に対して、相手の挑発を理由に自らの軍事行動を正当化する。

 国家はそうであっても、国家間の過熱したやり取りを冷静に捉えて報道するのがメディアの役割だ。ところが日本のマスメディアはそれを放棄し、政府発表をそのまま流している。

 日本と直接的な関係がない国での出来事については、まだ自らの視点による冷静な報道が出来ている。ところが北朝鮮についてそうならないのは、「反北朝鮮」を前提としているからだ。

 「北朝鮮を批判しないような記事は掲載できない」と、ある編集者は私にはっきりと語った。北朝鮮に関する出来事への客観的な判断を放棄し、「大本営発表」を流し続けるならば、ジャーナリズムの墓穴を掘ることになると認識すべきだ。

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北朝鮮で取材した日本軍性奴隷被害者の番組を放送

 韓国のインターネット放送「ニュース打破(タパ)」で、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の日本軍性奴隷被害者(日本軍「慰安婦」)と、今も残る「日本軍慰安所」についての番組「悲しい帰郷」(第1部・第2部)を放送している。
第1部
第2部
第1部予告編
第2部予告編

朴英深
中国・昆明の捕虜収容所で、米軍撮影の被害女性たちの写真を持つ朴英深(パク・ヨンシム)さん。右端が本人(2000年9月13日撮影)

 私は韓国・北朝鮮・フィリピン・インドネシアなどで、多くの性奴隷被害者を取材してきた。それらは多くの雑誌に掲載したもののテレビでの放送は限られていが、まとまった形で発表することができた。

 インターネット放送「ニュース打破」は、韓国のテレビ局KBSとMBCから解職された記者らによって運営されている。日本軍性奴隷被害者に関するいくつもの番組を制作している。
日本軍慰安婦を記録した日本人
故金学順ハルモニの最後の証言

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米韓合同軍事演習は北朝鮮への危険な挑発

 朝鮮半島は、大規模戦闘や戦争の危機に瀕している。

祖国解放戦争勝利記念館
平壌(ピョンヤン)にある朝鮮戦争の博物館「祖国解放戦争勝利記念館」(2014年4月30日撮影)

 米国と韓国は3月7日から過去最大規模の合同軍事演習を開始した。韓国軍30万人、米軍1万7000人が参加。そして米軍は原子力空母や原子力潜水艦、核ミサイルを搭載可能なB2ステルス爆撃機や最新鋭のF22ステルス戦闘機などの戦略兵器を投入する。

 また北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の内陸部へ進攻するための上陸作戦の訓練も行なう。そして米韓の特殊部隊が、金正恩(キム・ジョンウン)第一書記などの指導部を殺害したり、核関連施設などを破壊・制圧したりする「作戦計画5015」の訓練も実施するという。

 米日韓などは北朝鮮の「核実験・ミサイル発射」を「挑発」としているが、この米韓合同軍事演習はそれと比較にならないほど大規模な挑発行為である。

 今回の軍事演習は北朝鮮への威圧のためというよりも、体制の軍事的壊滅を目指した準備だろう。それに対して北朝鮮の国防委員会は7日、「先制攻撃的な軍事的対応方式を取る」と表明した。

 毎年実施されてきた米韓合同軍事演習によって、大規模な軍事衝突の危機にたびたび陥ったものの、かろうじて回避されてきた。だが今回は、それらの時と状況が大きく異なる。北朝鮮が核兵器の小型化とその運搬手段を獲得し、国連安保理などの厳しい制裁が発動された直後だからである。

 米国・韓国は、軍事衝突を引き起こす危険性を承知で大規模な軍事演習を実施している。そして日本国内にも、その大規模な軍事衝突に日本も備えるべきとか、拉致被害者の米軍による「救出」を望むといった主張が出てきた。

 大規模戦闘や戦争になれば、北朝鮮だけでなく米国も核兵器を使用する可能性がある。そうなれば、朝鮮半島などで数十万、数百万人が死亡するだろう。日本は、南北の緊張をさらに煽るようなことをするのではなく、根本的解決である米朝対話の場を設けるために動くべきだ。

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プロフィール

こだわりジャーナリスト

Author:こだわりジャーナリスト
フリーランスのジャーナリストとして長年にわたりさまざまな取材を行い、数多くのメディアで発表してきました。
海外取材は200回近くで、そのうち北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)へは数十回です。現在、年1~3回の訪朝をしています。
掲載写真は、引用先が非表示のものは筆者撮影です。なお、このブログに掲載している映像と文章は日本の「著作権法」と国際的な著作権条約で保護されており、無断使用はできません。転載を希望される場合は、事前にご連絡ください。

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