北朝鮮への制裁強化は歴史的愚行

 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)への日本独自の経済制裁を強化しようという与野党の動きが活発である。

 昨年5月のストックホルムでの日朝政府間協議で「日本人調査」実施に合意したことにより、日本政府は制裁の一部を解除。それは、北朝鮮にとってあまり重要でない項目ばかりだった。

 北朝鮮の「特別調査委員会」からの調査報告を巡り、日本政府は拉致被害者を最優先にすることに固執。5月下旬にも北京で非公式協議が行われたが、妥協点を見出すには到らなかったようだ。

 こうした状況の中で、北朝鮮に圧力をかけるために経済制裁が持ち出されている。5月29日、民主党の「拉致問題対策本部」は、解除した経済制裁の復活を求める談話を発表した。

 そして自民党の「対北再制裁プロジェクトチーム」はさらに踏み込み、人の往来を全面的に禁止しようという案を検討している。

 「現在の案では(1)在日朝鮮人に対し北朝鮮への渡航に関し再入国の全面不許可(2)日本人に対しては旅券の適応先から北朝鮮を除き、北朝鮮渡航希望者には審査の上、特別旅券を発行―などとなっており、適用対象は▽核・ミサイル技術者▽不正輸入業者▽「よど号」グループの子弟▽総連幹部―が挙げられている」(「産経新聞」2015年6月1日)

040426新潟港の万景峰号
新潟港の「万景峰92号」(2004年4月26日撮影)

 経済制裁によって「万景峰92号」の日本入国が禁止されたことで人数は大きく減ったものの、在日朝鮮人の北朝鮮で暮らす親族への訪問は続いている。

 北朝鮮へ渡航した在日朝鮮人が日本へ戻るのを認める「再入国許可」は、戦後の長い歴史の中で少しずつ認められてきた。それを「全面不許可」にするというのは、極めて非人道的措置である。

 「このパスポートは、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)以外の全ての国と地域に有効」

 こうした表示が1991年3月まで、日本で発給されるパスポートにはあった。それまでの北朝鮮への渡航には、「1次旅券」という1回しか使用できないパスポートを取得する必要があったのだ。

 自民党の「特別旅券」案は、適用対象を限定しているものの四半世紀前の状態にまで戻そうというものである。

 今年2月に外務省は、シリアへ渡航しようとしていた新潟県在住のフリージャーナリストにパスポートを強制的に返納させた。

 戦後の日本は、さまざまな権利を少しずつ積み上げ民主主義社会を育ててきた。その時の政府の思惑で、重要な権利である「往来の自由」を否定しようとするのは、歴史を大きく後退させる愚かな行為だ。

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プロフィール

こだわりジャーナリスト

Author:こだわりジャーナリスト
フリーランスのジャーナリストとして長年にわたりさまざまな取材を行い、数多くのメディアで発表してきました。
海外取材は200回近くで、そのうち北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)へは数十回です。現在、年1~3回の訪朝をしています。
掲載写真は、引用先が非表示のものは筆者撮影です。なお、このブログに掲載している映像と文章は日本の「著作権法」と国際的な著作権条約で保護されており、無断使用はできません。転載を希望される場合は、事前にご連絡ください。

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