北朝鮮が日朝関係改善の新たな方策を探っている

 劇映画「The Interview」を制作した「ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)」へのサイバー攻撃は、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)によるものではないことが確かになりつつある。

 米インターネットセキュリティ会社の「ノースは、ソニー映画の海賊版をネットで配信し会社に追及されていたハッカー集団と、5月にソニーをリストラされた従業員1人、あるいは複数の元従業員が共謀したとみている」(「ブルームバーグ」2014/12/30)と、犯人を具体的に特定した報道も出てきた。

米兵の人形を叩く
米兵の人形を叩くゲームをする平壌市民(2004年5月1日撮影)

 「米連邦捜査局(FBI)」は12月19日、サイバー攻撃は北朝鮮政府による十分な証拠が得られたと断定。それを受けてオバマ政権は北朝鮮に、「テロ支援国家」再指定を含む報復を宣言した。その後、FBIは「ノース社」からサイバー攻撃の真犯人について3時間にわたって説明を受けたが、北朝鮮が実行犯との主張に固執している。大統領が大上段に拳を振り上げたため、間違いに気づいたにもかかわらず非を認めることができないという状況なのである。

 来年は、日本支配から解放された朝鮮半島が米国・ソ連という大国によって南北に分断されて70年。朝鮮戦争の休戦状態は今も続いており、それを「平和条約」の締結によって終わらせることを米国が頑なに拒んできた。朝鮮戦争で米兵約4万5000人の戦死者を出しながらも北朝鮮と中国に勝てなかった過去が、硬直化した北朝鮮外交の根底にある。

 そうした結果、北朝鮮は米国による軍事侵攻を防ぐため、食うものも食わずに核兵器とその運搬ロケットの開発を推進するという結果になった。朝鮮半島を不安定な状態のままにしてきたのは、米国なのである。

 今年5月の「日朝政府間協議」の合意により、拉致被害者を含む「日本人調査」が開始された。私は「欧州拉致事件」への関与を疑われている「よど号グループ」の取材に、準備から発表まで3カ月間を費やして取り組んだ。

 この調査は具体的な進展がないものの、つながった糸はまだ切れていない。日朝協議が途切れたならば、少なくても数年間は動かないだろう。だがオバマ政権が北朝鮮への制裁強化をすれば、日本政府はそれを承知で米国に追随するのは確かだ。

 北朝鮮が最近、「日本人調査」のほかに日朝関係改善のための具体的方策を探っていることが分かった。そのために、関係者が水面下ですでに動いている。北朝鮮の外務省などは、日朝関係を何とか前に進めようとしているのは確かだ。

 日本の北朝鮮外交は、米国の北朝鮮政策の枠組みの中でしか行われてこなかった。「日米安保条約」などに縛られ、独自の外交政策が出来ないからだ。しかし、任期が2017年1月までのオバマ政権はすでに「死に体」状態で、次の共和党政権はより強硬な北朝鮮政策をとるだろう。

 米国が自国の利益とメンツを守るために行ってきた北朝鮮政策で翻弄されてきたのは、朝鮮半島や日本で暮らす人々なのである。日本はいい加減に、米国の呪縛から解き放たれた外交政策を行うべきだ。

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米国の北朝鮮への制裁強化は日朝協議に影響する

 予想もしていなかったことで、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)と米国との関係がさらに悪化しそうだ。

 米国連邦捜査局(FBI)は12月19日、金正恩(キム・ジョンウン)第1書記の暗殺を題材にした劇映画「The Interview」を制作した「ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)」へのサイバー攻撃は北朝鮮の犯行であると断定した捜査結果を発表。それを受けたオバマ大統領は、北朝鮮に報復措置を取るとの意向を明らかにした。

 FBIによるその根拠は次の3点。
① サイバー攻撃に使われたウイルスの設計図が、北朝鮮でかつて開発されたものと似ている
② ウイルスのIPアドレスの多くが北朝鮮の施設のものである
③ 昨年3月に北朝鮮が韓国の金融機関とマスメディアへ行ったサイバー攻撃と手口が似ている

 こうした米国の動きに対し北朝鮮外務省報道官は20日、自国の関与を改めて否定し米国との共同調査を提案した。このサイバー攻撃はSPE内部関係者が関与し、北朝鮮の犯行に見せかけようとしたものとの見方がある。

 北朝鮮は1948年の建国以来、最高指導者を極めて大切にしてきた国家である。価値観は国によって異なるものであり、そのことは尊重されるべきだ。それを理解できずにコメディー映画で金正恩第1書記を扱ったのは、正面からけんかを売ったようなものだ。

 そもそも、「世界のソニー」がこのようなB級映画を制作したことにもあきれるが、一企業に対するサイバー攻撃に対して米国は政府として北朝鮮にリスクを冒してまで報復するというのは異常である。

祖国解放戦争勝利記念館正面
北朝鮮の米国への対決姿勢を現している「祖国解放戦争勝利記念館」(2014年4月30日撮影)

 米国は2008年に北朝鮮への「テロ支援国家」指定を解除したが、再指定を検討しているという。米国がそうした強硬措置を取るならば、北朝鮮が核実験を実施する可能性もあり、米朝の軍事的緊張は一気に高まるだろう。そうなれば、「日本人調査」をめぐる日朝政府間協議にストレートに影響するのは確かだ。

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「よど号グループ」事情聴取の詳細!

朝鮮が日本政府の意向を受けて軌道修正
よど号グループを事情聴取


 朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)の平壌(ピョンヤン)で暮らす「よど号グループ」が、拉致被害者などの日本人調査をしている朝鮮の「特別調査委員会」から、2回にわたって「拉致疑惑」に関する事情聴取を受けた。

 「グループ」が事情聴取の要請を受けたのは11月17日。そして20日午前11時から「調査委員会」事務所で聴取が行われたが、顔合わせをしただけで終了。
 2回目は、26日午前中に「グループ」が暮らす「日本人村」で行われた。その際「グループ」からは、日本での国家賠償請求訴訟の記録・八尾恵証言への反論DVDなどの資料を提出した。
 「よど号グループ」6人のうち、森順子さん・黒田佐喜子さんは石岡亨さんと松木薫さんを、魚本公博さんは有本恵子さんを朝鮮へ連れ込んだとして警視庁が逮捕状を取り国際手配している。朝鮮政府は、自国の特殊機関がこの3人を朝鮮へ連れて来たと日本政府へ説明しており、「グループ」の関与を明確に否定してきた。

 今年5月の「日朝政府間協議」の合意により、朝鮮政府は「特別調査委員会」を7月に発足させ調査を開始。日本政府は拉致被害者の安否確認と帰国だけでなく、拉致事件の真相究明と実行犯の引き渡しも要求していた。今回の事情聴取はそれに応じたものであり、「グループ」の処遇に朝鮮政府は一切関与しないとの今まで立場の軌道修正である。

 12月2日、事情聴取を受けたことについて「グループ」のスポークスマンである若林盛亮さんは次のようにコメントした。
 「私たちは『よど号拉致疑惑』の解明に積極的に協力すると言ってきたので応じた。日朝政府間合意の一環として行われただけで、私たちの引渡しにつながるはずがない」。

 このように楽観的だが、「グループ」リーダーの小西隆裕さんは、今年5月と9月の私の現地インタビューで「朝鮮政府が自分たちを日本へ送還しようとしたら断固として反対する」と繰り返し述べており、危機感を持っていたのは確かだ。
 衆院選後の日本の動向を見極めたところで、「調査委員会」がこの事情聴取を「調査の成果」として出してくる可能性もあるだろう。 
                                (『週刊金曜日』14年12月5日号)

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北朝鮮「特別調査委員会」が「よど号グループ」を事情聴取

 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)で拉致被害者などの日本人調査をしている「特別調査委員会」に、拉致問題での大きな動きがあった。ヨーロッパでの日本人3人への「拉致関与」について、「よど号グループ」へ事情聴取を2回にわたって実施したのである。

よど号6人の6人
「よど号グループ」の6人。後方のアパートで全員が生活している(2014年9月28日撮影)

 このことはすでに多くのマスメディアで報じられているが、より詳細な記事を『週刊金曜日』2014 年12月5日号(同日発売)に掲載する。なお今月12日に、その全文をこのブログで紹介する予定。

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プロフィール

こだわりジャーナリスト

Author:こだわりジャーナリスト
フリーランスのジャーナリストとして長年にわたりさまざまな取材を行い、数多くのメディアで発表してきました。
海外取材は200回近くで、そのうち北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)へは数十回です。現在、年1~3回の訪朝をしています。
掲載写真は、引用先が非表示のものは筆者撮影です。なお、このブログに掲載している映像と文章は日本の「著作権法」と国際的な著作権条約で保護されており、無断使用はできません。転載を希望される場合は、事前にご連絡ください。

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