北朝鮮 核・ミサイル開発の停止がみえてきた

 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)は9月15日、中距離弾道ミサイル「火星12」を発射。今回は、米国領グァムまで届く約3700キロメートルを飛行した。

宇宙開発局の説明会
「科学技術殿堂」で開催された「国家宇宙開発局」による説明会(2017年8月16日撮影)

 高度100キロメートル以上の宇宙空間を移動している人工衛星や国際宇宙ステーションなどは、領空侵犯とされていない。今回のミサイルの高度は約770キロメートルに達しており、日本の政府やマスメディアが「日本の上空を通過」とするのは極めて不自然である。

 今回も日本政府は「緊急情報ネットワークシステム」で情報を流し、さらに危機感を煽った。最近では、「防空ずきん」を被せて小学生にまで「防空演習」をし、廃線になった鉄道のトンネルを「防空壕」にしようとする地方自治体まででてきた。この異常な対応について、疑問や批判の声はあまり聞こえてこない。日本はすぐにでも戦争できそうな雰囲気になってきた。

 今回のミサイル発射訓練を視察した金正恩(キム・ジョンウン)委員長の発言を「朝鮮中央通信」(9月16日)が詳細に報じている。

 「われわれの最終目標は米国と実際の力のバランスを取って米国執権者の口からむやみにわが国家に対する軍事的選択だの、何のというたわごとが出ないようにすることだ。米国にとって対処不可能な核の反撃を加えられる軍事的攻撃能力を引き続き質的に固めながら、真っ直ぐに疾走しなければならないと語った(略)今やその終着点にほとんど到達したのだから、全国家的な力を集中して結末を見なければならないと力説した」

 この発言には重要な意味がある。国家の力を集中して続けてきた核・ミサイル開発は、その完成が近いとしたのだ。つまりそれらの実験は、それほど遠くない時期に停止される可能性が出てきた。

 そして「結末」という言葉は、米国との交渉を指しているのだろう。北朝鮮が、国民生活や外交関係などを犠牲にしながらも、核・ミサイル開発に国力を注いできたのは、米国による体制保障を得るためである。米国まで到達する核兵器搭載ミサイルが完成しなければ、その交渉は成功しないと考えているのだ。これは今までの最高指導者たちが、米国との交渉に失敗したことを教訓としているのだろう。

 「国連安保理」などがさらに厳しい制裁を実施しても、北朝鮮の核・ミサイル技術が完成することが明白になった。韓国や日本も核武装して核軍拡の泥沼へ進むのか、米国が北朝鮮との真剣な対話で妥協点を見出すのか。そのどちらかしか選択肢はない。

北朝鮮は制裁に耐えられる社会

 9月11日、「国連安全保障理事会」は、6回目の核実験を行なった北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)に対し、追加制裁の決議案を全会一致で採択。米国は中国とロシアの賛成を得るため、当初の厳しい内容を緩めた。

勝利化学連合企業所
羅先(ラソン)経済特区にある製油所「勝利化学連合企業所」(2015年6月22日撮影)

 決議内容は、北朝鮮へのガソリンと軽油などの石油関連品の輸出を30パーセント削減した200万バレルに制限し、年間7億6000万ドル(約830億円)と推定されている北朝鮮からの繊維製品の輸出を禁止した。

 「国連安保理」による北朝鮮への制裁は、2006年からこれで9回目。今回は石油輸出の制限といったかつてない厳しい内容だが、北朝鮮の核・ミサイル開発に打撃を与えることはまったくないだろう。

 それは北朝鮮という国は、輸出入に大きく依存しない自立した社会を長年にわたって目指してきたからだ。1950年代半ばに中国とソ連(当時)の対立が進む中で、北朝鮮はそれら大国に左右されない自力更生の道を模索。マルクス・レーニン主義を独自解釈したその考えを「主体(チュチェ)思想」とした。

 それ以来、政治・経済・文化などにおいて外国に左右されない社会づくりのために、地道な努力をしてきたのである。1990年代にはソ連崩壊や水害・干ばつの自然災害などがあって大きく後退したこともあるが、歩みはゆっくりではあるものの着実に独自の道を歩んできた。

 韓国銀行は7月21日、北朝鮮の2016年の国内総生産(GDP)が前年比で3・9パーセント増加したことを発表。今回の追加制裁でその経済成長率が続くのは困難と思われるが、制裁で大きく後退することはあり得ない。

 13日に北朝鮮は、追加制裁に対して「外務省報道」を発表。「わが国の正々堂々たる自衛権を剥奪し、全面的な経済封鎖でわが国家と人民を完全に窒息させることを狙った極悪非道な挑発行為の産物。峻烈に断罪・糾弾し、全面的に排撃する」と非難した。

 おそらく北朝鮮は、核・ミサイルが完成するまで新たな実験を続けるだろう。米国は制裁強化や軍事攻撃の威嚇によって北朝鮮を力で屈服させようとしているが、その行きつく先は韓国と日本を巻き込んだ戦争である。トランプ政権がそれを避けようとするなら、対話へと舵を切るしか選択肢はないのだ。

北朝鮮への米国の軍事攻撃に反対の声を!

 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)と米国との軍事的緊張は極限状態になった。核・ミサイル実験を繰り返す北朝鮮への新たな制裁として原油供給の停止が焦点となっており、安部首相が米国よりもその推進に積極的だ。

平壌市内の通行人
平壌市内の裏通りを行き来する市民たち(2017年8月16日撮影)

 しかし、原油供給停止という制裁は極めて危険だ。1941年に日本がアジア太平洋戦争へ突入した理由のひとつが、米国による日本への原油の全面輸出禁止だった。

 もし北朝鮮への原油供給が止まったら、農業生産低下による餓死と冬の寒さによる凍死で相当な数の死者が出るだろう。極めて非人道的な措置である。

 トランプ政権はこうした制裁強化だけでなく、北朝鮮の核・ミサイル施設への限定軍事攻撃を真剣に検討しているのは間違いない。

 それに踏み切った場合の北朝鮮による反撃で、米国・韓国・日本の被害がどれだけ出るかを最大の判断基準としていることだろう。1968年の「プエブロ号事件」や1994年の「核危機」などで、米国は北朝鮮への核兵器を含む軍事攻撃を真剣に検討した。ところが、韓国での死亡者数があまりにも多いために攻撃を断念してきた。

 完成しているかどうかはともかく、核兵器とその運搬手段をほぼ獲得した北朝鮮への軍事攻撃は、もはや不可能になったと判断するのが妥当だろう。だが迷走飛行をしているトランプ大統領が、そう思うかどうかは極めて未知数だ。米国の安全のためには、極東アジアで膨大な数のアジア人が死ぬことも仕方ないと判断する可能性がある。

 今の危機は、北朝鮮と米国のチキンレースによるものだ。体制保証を得ようとする北朝鮮が、それに応じなければ核・ミサイルで攻撃するとしているのはグァムや米本土である。日本への威嚇は、安倍政権があまりにもトランプ政権に追随しているためだ。

 こうした危機に陥っているにもかかわらず、日本の中で米国による軍事攻撃に反対する声がほとんど聞こえてこない。米朝対決の状況の中で、米国を批判することは間違いだとでも思っているのだろうか?!

 北朝鮮に対する評価は異なっていても、米国による軍事攻撃に反対する声を直ちに上げるべきだ。ベトナム戦争の際の「殺すな!」というスローガンを再び掲げるべき時がまさに今だ。

北朝鮮が「反米」を掲げる理由とは

「週刊金曜日」2017年5月19日号に掲載した記事を紹介する。

朝鮮が米国に求め続けてきたのは平和条約の締結

 朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)が5月14日早朝、新型弾道ミサイルを発射した。朝鮮はなぜ、「反米」を掲げ、核・ミサイル開発を続けるのか。緊張が高まり始めた4月、14日間に及ぶ現地取材を敢行したジャーナリストがその理由に迫った。

軍事パレードの兵士
軍事パレードでの一糸乱れぬ行進(2017年4月15日撮影)

 地面が振動で小刻みに揺れている。さまざまな軍服の兵士集団が、高く振り上げた足で地面を叩きながら行進しているからだ。2017年4月15日、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)の首都・平壌(ピョンヤン)。金日成(キム・イルソン)主席生誕105年の祝賀行事での最大の見せ場として、軍事パレード(閲兵式)が行われた。

 パレード後半では、米国本土まで到達する大陸間弾道ミサイル(ICBM)とみられる新型ミサイルなど最新兵器が公開された。朝鮮外務省が、祝賀行事の取材のために入国を認めた海外メディアは123人。そのうちの最多は23人の米国である。今回のパレードは、米国・トランプ政権への強力な威嚇として行われた。

 だが平壌だけでなく地方都市でも、軍事的緊張や制裁の影響はまったく感じられない。それどころか、車で通り過ぎたほとんどの地方都市では、図書館など公共施設の建設工事が盛んに行われている。また、地方の幹線道路をたくさんの大型トレーラーが行き来しているのも見た。舗装状態が悪い道路は多いが、物流は活発に行われているようだ。

反米教育のための博物館

 昨年11月8日の米国大統領選挙でドナルド・トランプ氏が当選。私は新大統領への朝鮮の評価を取材するため、昨年12月初旬と年明けに取材申請をしたものの認められなかった。今回、4月8日~21日までの許可が出たのは、トランプ政権への評価が定まったからだ。

信川博物館
「信川の血の教訓を忘れるな!」とのスローガンを掲げた信川博物館(2017年4月14日撮影)

 朝鮮には、米国をどのように捉えているのかが明確に分かる場所がある。米国との歴史について展示しているいくつかの博物館だ。

 そのうちの一つの「信川(シンチョン)博物館」は黄海南道(ファンヘナムド)信川郡にあり、平壌市から車で約90分。雨の中を女性の解説員が出迎えてくれた。
 「この博物館は反帝・反米教育の重要拠点の一つです。金日成主席は(朝鮮)戦争休戦の17日後にこの信川を軍服姿で訪れました。そして米国の蛮行を暴露する博物館を建てるようにと指導され、1960年6月に開館しました」。

 朝鮮戦争は1950年 6 月25日に始まり、53 年7月27日に休戦。米軍が一時的に占領した38度線以北の数多くの場所で、住民が集団虐殺されたという。そのうち、もっとも死者が多いのは信川である。米軍占領下の50年10月17日から12月7日までの間に、3万5383人が殺されたという。パブロ・ピカソが51年に発表した「朝鮮の虐殺」という絵は、この事件を描いたものだ。

 「信川博物館」の年間参観者は国内からは30~40万人で、海外からは約2万人。朝鮮戦争をともに戦った中国やロシア(当時はソ連)だけでなく、米国・英国・オーストラリアなどの「敵国」だった国からも訪れるという。

 「金正恩(キム・ジョンウン)委員長は2014年11月、新しい時代の反帝・反米教育をするため立派に建て直すようにと現地指導されました。翌年2月に着工してから4カ月間足らずで完成したんです」
 このことに、金委員長の米国との対決姿勢が明確に表われている。「信川博物館」と同じように米国に関する展示をしている「朝鮮革命博物館」(1948年開館)と「祖国解放戦争勝利記念館」(53年開館)も建物の老朽化がひどかった。だが金正恩時代になると、全面的な改装・改築を実施。米国との敵対関係の解消にはまだ長い時間がかかるとの判断と、大国に翻弄されてきた歴史を若い世代へ伝承することが理由だろう。

 以前の「信川博物館」には、何カ所もある虐殺現場での発掘時の写真や人々の遺品が数多く展示されていた。新博物館はそれに加え、非常にリアルな人形を使った精巧なジオラマを多用して凄惨な事件現場を再現している。

 展示は、信川での住民虐殺は「米軍による戦争犯罪」との主張が貫かれている。だが韓国には、社会主義政権と対立していた住民らによるものとの説がある。また77年に平壌で出版された『アメリカ帝国主義は朝鮮戦争の挑発者』には、信川を占領した米軍司令官が「反動的地主、悪質宗教者、高利貸業者、やくざ者など人間の屑をかき集めて、虐殺蛮行にかり立てた」と記している。私は解説員に、米軍と民間人のどちらによる虐殺が多かったのかと聞くと「キリスト教徒による虐殺の事実もあるが、基本的に米軍が張本人」との答えだった。米国との敵対関係が長期に及ぶ中で、「米軍による虐殺」と単純化されてきたようだ。

 どの博物館も「朝鮮人民の不倶戴天の敵」として米国を徹底的に批判し「反米」を煽っている。それは米国と友好的な関係になる日まで、この国を守るために必要なのだろう。

米国との対決の歴史

 朝鮮が米国と決定的な敵対関係になったのは、朝鮮戦争で激しく戦ったからである。朝鮮側の死者は、軍民合わせた約250万人と中国軍の約100万人。韓国側は軍民約150万人と米軍の約5万人と推定される。また物的被害は、米軍による徹底した無差別の空爆・砲撃により38度線以北は完全に焦土と化した。そして米軍は細菌兵器も使用。日本陸軍「731部隊」が行なった細菌戦研究を利用し、コレラ菌・ペスト菌などで汚染させた昆虫を詰めた爆弾を各地に投下したと非難している。

 米国はその後も、朝鮮への軍事攻撃を何度も実行しようとした。68年1月、米国海軍の情報収集艦「プエブロ号」が朝鮮人民軍によって拿捕。米国は報復として70キロトンの原爆を投下することを検討した。93年、朝鮮は「国際原子力機関」による特別査察を拒否。そして「核拡散防止条約」と「国際原子力機関」からの脱退を表明した。これに対して米国・クリントン政権は、寧辺(ニョンビョン)の核施設への空爆を準備。だが朝鮮による反撃で、米韓軍と民間人150万人以上が死亡すると推計されたために攻撃は断念された。

 朝鮮にすれば、少しでも油断したら圧倒的な軍事力を持つ米韓によって核兵器を含む攻撃を受け占領されるという状況が続いてきた。そのためそれを防ぐ「最強の抑止力」として、核兵器とその運搬手段の開発を進めているという。昨年6月にインタビューした朝鮮外務省の趙炳哲(チョ・ビョンチョル)研究員は「わが国が核兵器開発をしなければならないよう押しやったのは米国である」と述べた。

 朝鮮が米国に求め続けてきたのは、朝鮮戦争の「休戦協定」を「平和条約」にすること。それによって、米国からの日常的な軍事的脅威をなくしたいのだ。このごく当然な要求を、朝鮮戦争休戦から64年間も米国は拒み続けてきた。米国は朝鮮戦争で、多大な人的被害を出しながらも朝鮮に勝てなかった。そして「プエブロ号」事件では、謝罪文に調印するという敗北を味わった。この「屈辱の歴史」が、朝鮮戦争の終結に米国が取り組まなかったことの背景にある。

 現在の米朝の軍事的緊張は、第2の朝鮮戦争を引き起こしかねない。明確な朝鮮政策のないトランプ政権は、最大の軍事的威嚇を実施。対する朝鮮は、戦争を覚悟して米国との交渉実現のための賭けに打って出た。5月14日には、新型の中距離弾道ミサイル「火星(ファソン)12型」を発射した。韓国では朝鮮との対話路線を打ち出す文在寅(ムン・ジェイン)大統領が誕生し、5月8日~9日に米朝が非公式協議。そのことで生まれた緊張緩和の期待に冷水を浴びせた。朝鮮は、核・ミサイル開発が完成した状態での米国との交渉でなければ目的を達成できないと考えているのだろう。

日本の対米追随を批判

 4月20日に単独インタビューした宋日昊(ソン・イルホ)朝日国交正常化交渉担当大使は、米国に関係しても積極的な発言をした。
 「15日の閲兵式で登場した戦車などには『朝鮮人民の敵である米帝を徹底的に消滅しよう』と書かれていました。他国は米国の脅しに屈することがあっても、わが国は米国ととことんやるという立場です。その状況は成熟しています」

 このような米国への強気の発言に続けて日本について言及した。
「問題は日本が米国に追随していること。米国よりも先に、日本を攻撃してもおかしくないのが今の状況です。我が国が忍耐強く我慢しているのは、朝日人民の友好を大切にしているからです」

 安倍政権はこの状況においても「北朝鮮の脅威」を煽り、トランプ政権による朝鮮への軍事的冒険に積極的な支持と自衛隊による軍事協力をしている。その極めて軽率で危険な行為に対し、マスメディアは積極的な批判をせず、広汎な市民運動も起きていない。日本がするべきことは、トランプ政権の朝鮮への強硬姿勢を制止し、朝鮮との対話へ踏み出すように働きかけることだ。そして日朝間の諸問題を解決するために、朝鮮との独自の外交交渉を始めるべきだろう。

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北朝鮮 「北風」ではなく「太陽」が必要

 韓国大統領選挙で、最大野党「共に民主党」前代表の文在寅(ムン・ジェイン)氏が当選した。米国・トランプ政権は、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)との対話路線を進めようとする文氏の当選を見越して、その前に北朝鮮への最大限の軍事的圧力を加えていた。

編隊飛行
「金日成(キム・イルソン)主席生誕105年」を祝しての編隊飛行(2017年4月15日撮影)

 そしてトランプ政権は韓国の新大統領就任に合わせ、圧力一辺倒の方針を手直ししようとしている。米国のティラーソン国務長官は5月3日の講演で、北朝鮮が核・ミサイル開発を放棄した場合の約束を公表。この内容は中国にも伝えられたという。

(1)体制転換を求めない
(2)金正恩(キム・ジョンウン)政権崩壊を目指さない
(3)北緯38度線を越えて米軍は侵攻しない
(4)朝鮮半島の再統一を急がない

 ティラーソン提案は一定の評価はできるが、北朝鮮がこれを簡単に受け入れることは考えられない。北朝鮮が核・ミサイル開発を放棄するとしたら、米国から絶対に軍事攻撃を受けない状況が完全に担保されること。そのためには朝鮮戦争の終結と、米国との国交正常化が必要だろう。トランプ大統領が、そこまで踏み込んだ交渉をする決意があるかどうかだ。

 ノルウェーで、北朝鮮外務省で対米交渉を担当する崔善姫(チェ・ソンヒ)米州局長と、米国の民間代表団とが非公式接触を実施。米朝の妥協点を見出すために、重要な役割を果たすかも知れない。

 先に、平壌(ピョンヤン)市内のガソリンスタンドに車の列が出来ているとの報道があった。しかし8日に北朝鮮から帰国した人の話では、そのような状況はなかったという。「ガソリン供給が止まる」という風評が一時的に流れたのかも知れない。

 北朝鮮に対する制裁は確実に強化されつつあるが、私が4月中旬に見た平壌や地方都市のようすからすれば、まだまだ持ちこたえることが出来るだろう。軍事力や制裁の強化といった「北風政策」ではなく「太陽政策」でなければ、北朝鮮との緊張緩和が進まないのは確かだ。

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北朝鮮 「核兵器禁止条約」賛成から不参加への理由

 核兵器削減が一向に進まない中で、「核兵器禁止条約」は核兵器を法的に禁止する条約を制定しようという画期的な取り組みである。

原爆ドーム
広島の原爆ドーム(2009年4月1日撮影)

 昨年10月、「国連総会第1委員会」での「核兵器禁止条約」制定交渉開始を定めた決議採択に、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)は賛成した。金正恩(キム・ジョンウン)委員長は5月の労働党大会で「世界の非核化実現のために努力する」と表明したことの反映と思われる。

 今年3月27日から、100カ国以上が参加して国連本部でその交渉が始まった。米国などの核保有国や約20カ国は参加しないばかりか、条約に反対して参加国を批判。原爆被爆国である日本もそれに追随して参加しなかった。

 岸田外務大臣は、核兵器保有国が参加していない交渉は、非保有国との対立を深め逆効果になりかねないと不参加の理由を説明。これは詭弁でしかなく、米国の核の傘にすがるみじめな日本の姿が世界中にさらけ出された。「日本被団協」など被爆者たちは、この日本政府の対応を厳しく批判した。

 そして、昨年は「条約」交渉に賛成していた北朝鮮も参加しなかった。「朝鮮中央通信」(24日付)は、米国が大規模で侵略的な合同軍事演習をしているため、核兵器を中心とした国防力強化が死活的なので参加しないことにしたと説明する。

 米国による軍事攻撃の可能性が高まる中で、それを防ぐ最大の抑止力としての核兵器をより強化しようとしているのだ。6回目の核実験の準備は完了したといわれている。つまり、北朝鮮が方針を転換した理由は、トランプ政権になって米国との軍事的緊張状態が一気に高まったからだ。

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北朝鮮 米国務長官の「20年間」発言の意味

 3月15日、米韓合同軍事演習に参加している米軍の戦略爆撃機「B1」2機が北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)と中国への威嚇のために韓国上空を飛行。同日には原子力空母「カール・ビンソン」が釜山へ入港した。

板門店将校
板門店(パンムンジョム)の人民軍将校(2016年8月21日撮影)

 その同じ日、レックス・ティラーソン米国務長官が来日。17日には訪韓し、北朝鮮へのトランプ政権の姿勢を次々と表明した。

 注目すべきは「米国政府のこの20年間の北朝鮮政策は失敗で、異なるアプローチが必要。あらゆる選択肢がテーブルにある」と述べたことだ。この「20年」とはどういう意味があるのか。

 北朝鮮は1993年に「核拡散防止条約(NPT)」から脱退を表明。交渉に失敗したクリントン政権は、寧辺(ヨンビョン)にある核関連施設を空爆する準備をした。だが北朝鮮の報復によって100万人以上の韓国人が死亡すると推定されて、韓国の金泳三(キム・ヨンサンム)大統領が反対。そのため攻撃は中止された。結局、クリントン政権「米朝枠組み合意」を行い、核開発凍結の見返りとして電力供給のための軽水炉の供与に踏み切った。

 その後のジョージ・W・ブッシュ大統領は、北朝鮮を「悪の枢軸」と非難するなど強硬策を行ったが、政権末期になって「テロ支援国家指定」を解除するなど対話へと転換した。

 次に誕生したオバマ政権は、米国との「平和条約」締結を求めて核・ミサイル開発を推進する北朝鮮に対して「戦略的忍耐」の名の下に何の対応もしなかった。ティラーソン長官は、こうした交渉と破たん、そして放置という「20年間」を否定し、北朝鮮政策を大きく転換するとしているのだ。

 またティラーソン長官は「今は北朝鮮と対話をする時ではない。挑発をエスカレートさせたら適切な措置を取る」と述べており、政策転換によって選択するのは軍事的対応と推定される。

 米国が北朝鮮へ軍事攻撃をした場合、それへの反撃によって韓国や日本に甚大な被害が出る。ティラーソン長官は「軍事的な葛藤までいくことを望んでいない」とも語っており、北朝鮮への軍事攻撃の脅しは牽制することが目的とみることもできる。

 だが外交経験が不足し政策が不安定なトランプ大統領が、「イスラム教徒の入国禁止」のような信じられないほど愚かな選択をする可能性はある。また、軍事的な緊張を極限まで高めていることは、偶発的な衝突が大規模戦闘へと発展する危険性がある。

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北朝鮮 ゴルフではなく危機回避の働きかけを

 米国・トランプ政権の動向を世界が注視しているが、朝鮮半島で緊張が極度に高まっていることへの関心は低い。そうした中で、米軍の戦略兵器が朝鮮半島周辺に次々と配備されている。

平壌市内
大規模な建設工事が続く平壌市内(2016年8月23日撮影)

 「朝鮮日報」2月11日付によれば、6日に「B1Bランサー戦略爆撃機」数機がグアムのアンダーセン空軍基地に再配備。6日~7日にはステルス戦闘機「F22ラプター」約10機が米国本土から日本へ移動。このF22は、韓国・烏山(オサン)の米空軍基地からわずか7分で平壌(ピョンヤン)への精密爆撃ができるという。

 そして10日には原子力空母「カール・ビンソン」(排水量9万3000トン)がグアムに到着した。80-90機もの艦載機と約10隻の護衛艦を擁する空母機動部隊が、西太平洋で活動するのは異例とのこと。

 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)が、2月16日の金正日(キム・ジョンイル)総書記の誕生日に、衛星打上げロケットないし大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を実施する可能性がある。

 朝鮮半島周辺へ配備された米戦略部隊は、この発射実験を牽制し3月からの米韓合同軍事演習「キーリゾルブ」と「フォールイーグル」に参加するとみられる。

 マティス米国防長官が最初の外国訪問先として韓国を選んだのは、北朝鮮が米国本土に到達する核搭載の弾道ミサイルを完成させようとしているからだ。マティス長官と韓国・韓民求(ハン・ミング)国防省は、「キーリゾルブ」を例年よりも強化することで合意した。

 トランプ政権は北朝鮮に対し、対話よりも軍事攻撃での「解決」を選択する方向へ進みつつある。近く予想される衛星打上げロケットないしICBMの発射実験へ米国が強硬措置をとるならば、韓国だけでなく日本も一気に激流に巻き込まれるだろう。

 安倍首相は、トランプ大統領とゴルフをしている場合ではない。「第2の朝鮮戦争」を回避するために、北朝鮮との対話を働きかけるべきだ。

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トランプ政権は北朝鮮へ3月に軍事攻撃か?

 米国トランプ大統領が政権スタート時には北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)との対話を模索するのではとの希望的観測は見事に打ち破られ、米朝関係は一気に極めて危険な状況に突入しようとしている。

将校
板門店(パンムンジョム)の朝鮮人民軍将校(2016年8月21日撮影)

 ジェームズ・マティス米国防長官は、就任後の初訪問地として韓国と日本を選んだ。トランプ政権は北朝鮮の米国へ到達する核・ミサイルを深刻に捉え、その開発を阻止するという決意の表明である。

 マティス国防長官は韓国で「米韓同盟はアジア太平洋地域の平和と安定を支える重要な柱。いかなる核兵器使用に対しても効果的・圧倒的に対応する」と表明。そして、サ-ド(THAAD・高高度ミサイル防衛システム)の計画通りの配備を確認し、3月の米韓合同軍事演習「キー・リゾルブ」をさらに強化して実施することに合意した。

 今までも米韓合同軍事演習は南北間の軍事的緊張状態を極めて高め、一色触発の状態だった。それは「演習」という名目で、最新兵器や特殊部隊が北朝鮮にそのまま攻め入ることが出来てしまうからだ。

 それでもオバマ政権時代は、北朝鮮を軍事的に威圧するための恒例行事的なものだった。だがトランプ政権は、それを変えるかも知れない。南北間で極度に緊張が高まっていない状況であっても、侵略として国連や国際社会から非難されるのを承知の上でいきなり軍事攻撃する可能性がある。

 韓国の大統領選挙は4月下旬か5月上旬に実施される。2月1日、有力候補の潘基文(バン・ギムン)前国連事務総長が出馬断念を表明。これで最大野党「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)前代表が極めて有利になった。

 文在寅氏であれ、その次に支持率の高い李在明(イ・ジェミョン)城南(ソンナム)市長であれ、北朝鮮との対話・融和政策へ舵を切るのは確実。つまり韓国で新政権が誕生したならば、トランプ政権は北朝鮮への軍事攻撃の機会を失うのだ。その前に、北朝鮮へダメージを与えようとするかも知れない。

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トランプ政権の北朝鮮政策が見えてきた!

 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の金正恩(キム・ジョンウン)委員長が、1月1日に「新年の辞」を発表。金正日(キム・ジョンイル)総書記の時代は「労働新聞」などの「共同社説」として施政方針を打ち出していたが、2013年からは金委員長が演説で公表するようになった。

平壌高層ビル群
「主体(チュチェ)思想塔」からの平壌市内(2015年6月27日撮影)

 今年の内容にも注目すべき点がいくつかある。まず一つは、演説の最後に異例にも最高指導者としての苦悩を語ったことだ。

 「新しい一年が始まるこの場に立つと、私を固く信じ、一心同体となって熱烈に支持してくれる、この世で一番素晴らしいわが人民を、どうすれば神聖に、より高く戴くことができるかという心配で心が重くなります。いつも気持ちだけで、能力が追いつかないもどかしさと自責の念に駆られながら昨年を送りましたが、今年は一層奮発して全身全霊を打ち込み、人民のためにより多くの仕事をするつもりです」

 他の注目点は、「大陸間弾道ミサイル(ICBM)」の発射実験の現状に触れたことだ。
 「帝国主義者の日増しに悪らつになる核戦争の脅威に対処したわれわれの初の水爆実験とさまざまな攻撃手段の試験発射、核弾頭爆発実験が成功裏に行われ、先端武力装備の開発が活発化し大陸間弾道ロケット試験発射準備が最終段階に入ったことをはじめ、国防力強化のための驚異的な出来事が相次いで連続して起きたことによって、祖国と民族の運命を守り、社会主義強国建設の偉業を勝利に向けて前進させていくことのできる強力な軍事的保証がもたらされました」

 北朝鮮は米国による体制保障を得るために核・ミサイル開発を進めてきたのであり、これはトランプ次期政権に対話を求めるメッセージである。これに対して米国務省のカービー報道官は「(北朝鮮は)現時点で核弾頭を大陸間弾道ミサイルに搭載する技術を持っていない」とした。

 そしてトランプ次期大統領は3日、ツイッターで発言。「北朝鮮は米国本土まで到達可能な核兵器開発の最終段階に入ったと宣言したが、米国政府としてはそうはさせない(North Korea just stated that it is in the final stages of developing a nuclear weapon capable of reaching parts of the U.S. It won't happen!)」とした。これは明らかに北朝鮮への強い牽制である。

 この発言に対して中国政府はその日の記者会見で、北朝鮮問題をエスカレートさせることは避けるように願うとした。

 韓国の「朝鮮日報」(1月4日付)によれば、トランプ次期大統領が先月に米情報機関から初めて受け取った機密報告書は北朝鮮の核問題に関するものだった。また先月末には、同氏に最も近い人物が訪韓して「国家情報院」の李炳浩(イ・ビョンホ)院長と極秘で会ったという。

 このことはトランプ政権が外交政策において、北朝鮮を極めて重視している可能性があることを示している。

 日本では、トランプ政権が北朝鮮との対話路線に踏み出すのではという希望的観測がまだ多い。だがトランプ政権は北朝鮮への強硬派が支えようとしており、たとえ対話を試みたとしても成功する可能性は低いだろう。

 対話路線が破たんすれば、米韓が訓練を繰り返してきた北朝鮮への軍事攻撃を実行する可能性がある。その布石のような動きが韓国にある。4日に韓国「国防省」は、「国防政策報告」を公表。「朝鮮半島有事の際に、平壌(ピョンヤン)などへ潜入し北朝鮮指導部を排除する特殊部隊を、今年の早い時期に創設する」とした。この「斬首作戦」部隊創設は、予定を2年前倒しにしたものだ。

 朝鮮半島情勢は、一気に危険な状態に陥るかも知れない。今の日本のあり方では、北朝鮮へ米韓が軍事攻撃をすればそれに加担することになり、報復を受ける可能性もある。今こそ日本外交は、戦略的な視点に立ち対米追随から脱却すべきだ。

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トランプ政権の北朝鮮政策を予測する

 選挙公約と実際の政策とは異なるのではないか、という日本などの希望的観測を打ち砕き、米国のドナルド・トランプ次期大統領はメキシコ国境への壁の建設や就任初日の「環太平洋連携協定(TPP)」離脱を改めて表明した。東北アジアの安定と平和を左右する、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)に対するトランプ氏の北朝鮮政策はどうなるのか。

プエブロ号
平壌(ピョンヤン)市内に係留されている「プエブロ号」(2016年8月22日撮影)

 今年1月6日の北朝鮮による核実験に対し、トランプ氏はその翌日に「金正恩(キム・ジョンウン)は頭がおかしい。これ以上、核でいたずらできないように終わらせなければならない」と述べた。

 しかし5月17日には「金正恩氏と話し合うことに何の問題もない」とし、6月15日には「金正恩氏が米国へ来れば、ハンバーガーを食べながらより良い交渉をする。核開発をしないように説得できる可能性は10~20パーセントある」と語った。両極端の主張をしてきたトランプ氏には、明確な北朝鮮政策がなかったのは確かだ。

 トランプ氏のハンバーガー交渉発言に対し、翌日の16日には楊亨燮(ヤン・ヒョンソプ)最高人民会議常任委員会副委員長は「悪いことではない」と述べた。だが北朝鮮は、トランプ次期政権への評価を公式にはまだ行っていない。

 私は今年6月1日に、北朝鮮外務省の趙炳哲(チョン・ビョンチョル)日本担当研究員(当時)へインタビューを行った。その中で、トランプ氏が北朝鮮との交渉に話に積極的な発言をしたことについて、どのように受け止めているかについても聞いた。

 すると「米国政府の朝鮮敵視政策が続く中で、トランプが選挙のために何を話しても相手にしない」とのそっけない返答だった。北朝鮮外務省内でこの時までに、トランプ政権を想定した議論はされていなかったようだ。

 北朝鮮はトランプ氏当選が決まってから、去りゆくオバマ大統領への批判を次々と発表。
 「核放棄まで制裁・圧力を加えながら待つというオバマの『戦略的忍耐』は『戦略的敗北』に終わった。今や、東方の核強国(北朝鮮)をいかに相手にすべきか決心すべき時」(『朝鮮中央通信』11月9日付)
 「(オバマ政権は)核保有国と対峙するという困難な責任を、次期政権に負わせた」(『労働新聞』11月10日付)
オバマ現政権を批判することで、トランプ新政権に対して非核化を前提とした対話には応じないとの基本姿勢を改めて示したのである。

 その後、トランプ次期政権に向けてのメッセージを出すようになった。11月18日には徐世平(ソ・セピョン)国連代表部大使が、米国が在韓米軍を撤退させ朝鮮戦争の休戦協定に代わる平和条約の締結の姿勢を示せば、関係正常化に向かう可能性があるとした。トランプ氏が選挙戦中に、在韓米軍の撤収を語ったことを意識してのものだ。

 そして、北朝鮮の核・ミサイル開発での原則的立場を立て続けに表明している。
「朝鮮半島の情勢激化の根源がわれわれの核・ミサイル実験にあるのではなく、まさに米国の対朝鮮敵視政策と核脅威にある」(外務省「備忘録」11月21日)
 「われわれの核抑止力は、協議のテーブルの上にあげて論議する政治的駆け引き物や経済的取引物ではない」(『労働新聞』11月25日付)

 オバマ政権が8年間も北朝鮮との交渉を頑なに拒んできたため、北朝鮮は自衛のためとして核・ミサイル開発を続けてきた。その結果、核ミサイルを米国へ打ち込むことが出来るほど、その能力を飛躍的に高めた。もはや交渉か、全面戦争を覚悟した軍事的圧力強化のどちらかを選択することが迫られている。

 トランプ氏が、政権スタート時に北朝鮮との交渉をしようとする可能性はある。もしそうであれば、関係国での調整に手間がかかる「6カ国協議」ではなく、2国間での直接交渉を選択するだろう。

 首脳会談になるかどうかはともかく、米朝交渉が実現した場合に北朝鮮が受け入れる結果は決まっている。それは米国が朝鮮戦争の休戦状態に終止符を打ち、米朝平和条約を締結して北朝鮮の体制保障をすることだ。それが実現したならば、米朝関係の急速な改善と東北アジアの非核化が進むだろう。

 だが、この米朝交渉の実現はそう容易ではない。次々と発表されているトランプ次期政権の重要ポストには保守強硬派が目立ち、トランプ氏の北朝鮮政策を左右するだろう。

 11月16日には国務長官の有力候補であるジョン・ボルトン元国連大使は、韓国が多くの対価を払う北朝鮮への先制攻撃はないが米朝対話の意向はないとした。18日には、国家安全保障問題担当の大統領補佐官に決まったマイケル・フリン元国防情報局長は「米韓は核心的同盟であり、トランプ政権は北朝鮮の核問題を優先的に扱う」と言及。

 そしてトランプ氏の外交安全保障顧問を務める元CIA長官のジム・ウールジー氏は、北朝鮮の核関連施設への爆撃を主張している。これらの人たちは、北朝鮮の核開発の解決方法は政権の転覆だとする。

 トランプ政権が交渉での解決に踏み出せなかったり失敗したりした場合、朝鮮半島の軍事的緊張は極めて危険な状態になるだろう。米韓はすでに、北朝鮮へいつでも先制攻撃が出来る状態になっている。

 米韓両軍は合同で北朝鮮内陸部へ潜入する「チーク・ナイフ」演習を1990年代から実施。今年は、10月13日から26日まで韓国・群山(クンサン)で行われた。

 参加した米軍は、嘉手納基地を拠点にして約800人の兵力を有する「空軍第353特殊作戦群」。韓国空軍の輸送機で米特殊部隊が降下訓練を行った。この時、北朝鮮への威嚇のために核弾頭装備の弾道ミサイル搭載の米海軍原子力潜水艦「ペンシルバニア」をグアムに寄港させている。

 この演習の目的は、核・ミサイル施設を破壊する陸軍特殊部隊と物資を目標へ正確に送り込むためのもの。先制攻撃をすることになった場合に備えて、今までより踏み込んだ演習内容となった。米韓はこの他にも、10月10日から21日の「レッド・フラッグ・アラスカ」など、特殊部隊の合同演習を繰り返して実施している。

 10月20日の「米韓定期安保協議」では、米軍の戦略爆撃機や原子力潜水艦などの戦略兵器の朝鮮半島への常時配備を推進することが決まった。米韓は北朝鮮に対し、先制攻撃の実施と政権転覆ための準備を着実に進めているのだ。

 このように、1976年に始まった米韓合同軍事演習は内容を大きく変え、核・ミサイル施設の破壊や金正恩委員長など政府首脳部を狙った訓練を繰り返し実施するようになった。

 米国による北朝鮮への軍事攻撃は、決して絵空事ではない。1968年1月23日、米海軍の情報収集艦「プエブロ号」が、元山(ウォンサン)沖で北朝鮮に拿捕された。その際、乗組員82人のうち一人が銃撃を受けて死亡。

 米国はリンドン・ジョンソン大統領の指示で、報復攻撃を検討。米軍戦闘機が70キロトンの核爆弾を投下するという「フリーダムドロップ」作戦が計画された。しかしベトナム戦争が泥沼化し、北朝鮮への攻撃はソ連の参戦があり得る状況だったため、米国は板門店(パンムンジョム)で謝罪文書に署名。深刻な危機は回避された。

 そして1994年3月、北朝鮮は「国際原子力機関(IAEA)」による査察の一部を拒否し、6月には寧辺(ニョンビョン)の実験炉から燃料棒の抜き取りを行った。ウラン濃縮を行うためだ。

 これに対して米国のビル・クリントン大統領は、核施設への空爆を指示。推定100万人の死者を覚悟で、全面戦争へ突入しようとしたのだ。だが韓国の金泳三(キム・ヨンサム)大統領が、韓国も深刻な被害を受けるとして中止を要請したため攻撃は実施されなかった。このように、米国による北朝鮮への核兵器を含む軍事攻撃は、かろうじて回避されてきたにすぎない。

 米韓政府が軍事攻撃を公然と語るようになり、そのための軍事演習を頻繁に実施するようになったのは、一気に進む北朝鮮の核・ミサイル開発に対しては先制攻撃しかないと考えているからだ。こうした危険な状況に陥っている中で誕生するトランプ政権は、交渉による平和的解決の道を選択することがはたして出来るのだろうか。

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北朝鮮 5回目の核実験は「空白」期間を狙ったもの

 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)は68回目の「建国記念日」の9月9日、5回目の核実験を行った。「朝鮮中央テレビ」は午後1時(日本時間1時30分)からの放送で、この実験を「核弾頭の威力を判定する核爆発実験」との声明を発表。

 弾道ミサイルに核弾頭を搭載するための、新たな段階に進んだのである。しかも過去最大規模の10‐12キロトンの爆発だと推測される。ロケットとミサイルの発射も、今年になって21発にもなる。

銀河3号模型
「未来科学技術殿堂」に展示されている「銀河3号」の模型(2016年6月1日撮影)

 潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)発射や、弾道ミサイル3発の同時発射・同地点落下を成功させたことにより、日米韓がそれらすべてを迎撃することは不可能になった。核兵器の小型化がより進めば、米国への核攻撃の確実な能力を持つことになる。

 中国は北朝鮮の核実験に強く反対しており、北朝鮮との民生部門での貿易の制限へ踏み出す可能性もある。韓国への高高度防衛ミサイル(THAAD)の配備に中国は強く反発して中韓関係は冷え込んでいるが、その状況が変わる可能性もある。それを承知で、北朝鮮はなぜ核・ミサイル実験を繰り返すのか? 

 これについて「国際社会への挑発・対決姿勢」「体制の引き締め」「何を考えているのか分からない」といった見方が相変わらず続いている。だがそのような言葉で片づけてしまうのは、この事態の本質をまったく見ようとしていないからだ。

 岸田文雄外務大臣は、いつものように「国連安保理決議違反」「日朝平壌宣言違反」と指摘し米韓との連携を語った。9日午後の安倍首相の米韓首脳との電話会談では、追加制裁について話し合われた。だが北朝鮮は、さらなる制裁強化で大きなダメージを受けたとしても、核・ミサイル開発を止めないのは明らかだ。

 北朝鮮の最初の核実験は2006年10月で、金正日(キム・ジョンイル)総書記の時代に2回。金正恩(キム・ジョンウン)委員長になってからは、ほぼ3年おきに実施されてきた。それが、今年1月の4回目実験の8カ月後に新たな実験が行われた。

 今年になってからミサイル発射実験を連続して行っていることからも、明らかに北朝鮮は核・ミサイル開発の方針を変えたのである。米国との交渉カードとして使ってきたを、米国を核攻撃できる確実な技術的能力を得ることを最優先にしたのだ。

 それは、核・ミサイル開発の進展をオバマ政権に見せつけても交渉が進まなかったこともあるが、来年1月の新大統領就任まで米国と交渉が出来ないという「空白」期間に入っているからだ。新大統領の朝鮮政策決定前に、可能な限りの核・ミサイル開発を進めてしまおうということだ。

 北朝鮮が、核・ミサイル開発を進める理由は明白である。朝鮮半島が南北に分断されて以降、北朝鮮は米国と政治的・軍事的に対決し、圧倒的軍事力の米韓による進攻の脅威に絶えずさらされてきた。それから自国を守る最強の手段が、核・ミサイル技術の完成なのだ。

 日米韓を中心とした軍事的・経済的圧力で、北朝鮮の核・ミサイル開発を止めることが不可能なのはより明らかになった。核放棄を先にしない限り北朝鮮と対話しないという米国の政策は完全に破たんした。もはや外交交渉しかない。

 米国は休戦状態のままの朝鮮戦争を終結させるために、北朝鮮と平和条約を結び体制保障をすべきだ。そして日韓は米国の朝鮮敵視政策に追随するのをやめ、自らの利益のための独自の外交交渉を始める必要がある。

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北朝鮮とオバマ政権の「核先制不使用」宣言

 米国・オバマ政権は、爆発を伴う核実験の禁止を呼びかける「国連安全保障理事会」決議案を提出する方針だ。また、核兵器を先に使わないという「先制不使用」の宣言なども検討しているという。

銀河3号模型
「未来科学技術殿堂」に展示されている「銀河3号」の模型(2016年6月1日撮影)

 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)が核兵器とその運搬手段である弾道ミサイルを開発してきたのは、米国による核を含む先制攻撃を防ぐことが最大の目的である。

 米国は北朝鮮に対し、核攻撃を行おうとしたことがある。1968年1月に、米国の情報収集艦「プエブロ号」が朝鮮人民軍に拿捕された。米国は北朝鮮に核兵器を使用しようとしたが、自国にまで被害が及ぶとして韓国が反対。使用される寸前で中止された。

 今年5月に開催された「朝鮮労働党」の第7回党大会で、金正恩(キム・ジョンウン)第1書記は次のように述べている。

 「わが国は責任ある核保有国として、核を保有する敵意ある攻撃的な国によって主権が侵略されない限り、核兵器は使用しない。われわれはすでに宣言している通り、核不拡の義務を忠実に果たし世界の非核化に努める」

 このように核兵器の先制不使用を明言しているのだ。つまり米国によって攻撃・侵略されない限り、核兵器は使用しないということだ。ましてや、核保有していない日本や韓国に対する核攻撃はあり得ない。日本のマスメディアはこの事を伝えず、核・ミサイルを「脅威」として煽り立てている。

 残りの任期が半年を切ったオバマ政権であるが、米国が核の「先制不使用」を宣言すれば、朝鮮半島の緊張緩和が大きく進む可能性がある。

 ところが、オバマ政権のこの動きの足を引っ張っているのが日本政府である。米国の「核の傘」で守られている日本は、北朝鮮や中国への抑止力が低下することを懸念しているというのだ。

 安倍政権はそればかりか、「日本独自の核保有を、単なる議論や精神論ではなく国家戦略として検討すべき」(「正論」2011年3月号)と主張した稲田朋美氏を防衛大臣に任命した。

 唯一の原爆被爆国の首相が、核廃絶へ向けてのささやかな流れさえ押しとどめようとしている。広島・長崎の被爆者たちの苦しみ・悲しみ・怒りを受け止めているのなら、こうした愚かなことはできるはずがないのだが。

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(8月17日追記)

 8月15日の米国「ワシントン・ポスト」によると、オバマ政権が検討している核兵器の「先制不使用」政策に対して、安倍首相がハリス米太平洋軍司令官に反対の意向を伝えていたことが明らかになった。北朝鮮への抑止力が弱体化するというのが理由だ。

 朝鮮半島の安定と平和へ重要な役割を果たすであろう政策を潰そうとする安倍政権。「戦争ができる日本」にするためには、「北朝鮮の脅威」がなくなっては困るのだろう。

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オバマ大統領は韓国・朝鮮人被爆者と会って謝罪を

 5月27日に広島を訪問するオバマ大統領は、原爆投下への謝罪をしないことを繰り返し表明している。これに対して、さまざまな批判の声が上がっている。

 23日には、映画監督のオリバー・ストーン氏や言語学者のノーム・チョムスキー氏ら米国の有識者約70人は、オバマ大統領の謝罪拒否の方針を再考するよう促す書簡を大統領に送付した。多くの被爆者と面会することも求めている。

韓国人被爆者慰霊碑
広島平和公園内の「韓国人原爆犠牲者慰霊碑」

 「韓国原爆被害者協会」は会員らを日本へ送り、 26日夕方から広島平和公園内の「韓国人原爆犠牲者慰霊碑」の前でアピール行動を行う。

 日本で暮らす朝鮮人被爆者らで組織する「朝鮮人被爆者協議会」の関係者は24日、次のように語った。

 「オバマ大統領の広島訪問は、発言と行動を見て評価したい。核廃絶が進まない原因は米国にある。2009年のプラハ演説から何も進んでいない。朝鮮人を含む被爆者と会って謝罪して欲しい」

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オバマ大統領広島訪問 北朝鮮は非難、韓国人被爆者は謝罪要求

 オバマ大統領は「主要7カ国首脳会議」後の5月27日に、現職の米国大統領として初めて広島を訪れる。

 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の「労働新聞」は14日、オバマ大統領の広島訪問を「核の犯罪者としての正体を隠すため」との論評を掲載。そして「朝鮮半島と世界を核戦争へと追いこもうとしている米国が核軍縮を唱えるのは、偽善と破廉恥の極み」と非難した。

釜山の被爆者たち
韓国・釜山(プサン)の被爆者たち(1997年4月撮影)

 広島・長崎で被爆し韓国で暮らす被爆者の団体「韓国原爆被害者協会」はオバマ氏へ、広島の平和公園内の「韓国人原爆犠牲者慰霊碑」訪問と、韓国人被爆者への謝罪・補償を求める手紙を送る。

 また韓国政府は、オバマ大統領が韓国人の慰霊碑にも献花するのが望ましいという意見を、外交チャネルを通じて米国側に伝えたという。

 米国が投下した原爆により広島で約42万人、長崎で約27万人が被爆。その中には広島で約5万人、長崎で約2万人の朝鮮人がいた。被爆者の約1割が朝鮮人だったのである。

 私は1980年代から、日本だけでなく韓国・北朝鮮などで多くの被爆者を取材してきた。その人たちの今も続く苦しみ、怒りと悲しみを聞く中で、被爆者に対して米国は謝罪をする必要があると強く思った。これほどの大量殺りく兵器の使用は、どれほど歳月が過ぎようとも語り継がれる極めて非人道的な行為だからである。

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北朝鮮核実験は米朝接触決裂の結果

 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)への国連安保理による制裁決議への動きが活発になっている中で、昨年12月末に北朝鮮と米国が接触していたことが明らかになった。

板門店
北朝鮮側から見た板門店(2007年8月19日撮影)

 米国務省のカービー報道官は21日、北朝鮮から平和協定締結の交渉を提案してきたことを公表。そして、交渉では非核化も議論すべきと伝えたところ北朝鮮が拒絶したために交渉に至らなかったとした。その結果、1月6日に北朝鮮は核実験を実施した。

 朝鮮戦争の休戦協定を平和協定にするための北朝鮮による米国への提案は絶えず行われてきた。米国が今回、交渉のための接触に応じた理由は「戦略的忍耐」という名のもとで何もしないという北朝鮮政策の結果、北朝鮮の「核・ミサイル」開発だけが着実に進んだことへのオバマ政権のあせりによるものだろう。

 こうした動きの中で日本の安倍晋三首相は、北朝鮮との外交交渉を重視していないことが改めて明らかになった。

 2月9日、北朝鮮による長距離ロケットの発射に関して日米首脳が電話で会談した。その際にオバマ大統領は、安倍首相が5月上旬に予定しているロシア訪問を自粛するよう要請。だが在任中に「北方領土問題」の解決を目指す安倍首相は、予定通りに訪ロするという。

 独立国家としての体面をかなぐり捨て、対米追随の外交政策を続けてきた安倍首相。にもかかわらず「北方領土問題」では、米国からの再三の自粛要請があったにもかかわらずそれに応じないという決断をした。

 そうであるならば、「北方領土問題」よりも早く解決しなければならない多くの重要課題がある北朝鮮との交渉を進める方が先ではないか。

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米国の北朝鮮への制裁強化は日朝協議に影響する

 予想もしていなかったことで、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)と米国との関係がさらに悪化しそうだ。

 米国連邦捜査局(FBI)は12月19日、金正恩(キム・ジョンウン)第1書記の暗殺を題材にした劇映画「The Interview」を制作した「ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)」へのサイバー攻撃は北朝鮮の犯行であると断定した捜査結果を発表。それを受けたオバマ大統領は、北朝鮮に報復措置を取るとの意向を明らかにした。

 FBIによるその根拠は次の3点。
① サイバー攻撃に使われたウイルスの設計図が、北朝鮮でかつて開発されたものと似ている
② ウイルスのIPアドレスの多くが北朝鮮の施設のものである
③ 昨年3月に北朝鮮が韓国の金融機関とマスメディアへ行ったサイバー攻撃と手口が似ている

 こうした米国の動きに対し北朝鮮外務省報道官は20日、自国の関与を改めて否定し米国との共同調査を提案した。このサイバー攻撃はSPE内部関係者が関与し、北朝鮮の犯行に見せかけようとしたものとの見方がある。

 北朝鮮は1948年の建国以来、最高指導者を極めて大切にしてきた国家である。価値観は国によって異なるものであり、そのことは尊重されるべきだ。それを理解できずにコメディー映画で金正恩第1書記を扱ったのは、正面からけんかを売ったようなものだ。

 そもそも、「世界のソニー」がこのようなB級映画を制作したことにもあきれるが、一企業に対するサイバー攻撃に対して米国は政府として北朝鮮にリスクを冒してまで報復するというのは異常である。

祖国解放戦争勝利記念館正面
北朝鮮の米国への対決姿勢を現している「祖国解放戦争勝利記念館」(2014年4月30日撮影)

 米国は2008年に北朝鮮への「テロ支援国家」指定を解除したが、再指定を検討しているという。米国がそうした強硬措置を取るならば、北朝鮮が核実験を実施する可能性もあり、米朝の軍事的緊張は一気に高まるだろう。そうなれば、「日本人調査」をめぐる日朝政府間協議にストレートに影響するのは確かだ。

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プロフィール

こだわりジャーナリスト

Author:こだわりジャーナリスト
フリーランスのジャーナリストとして長年にわたりさまざまな取材を行い、数多くのメディアで発表してきました。
海外取材は200回近くで、そのうち北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)へは数十回です。現在、年1~3回の訪朝をしています。
掲載写真は、引用先が非表示のものは筆者撮影です。なお、このブログに掲載している映像と文章は日本の「著作権法」と国際的な著作権条約で保護されており、無断使用はできません。転載を希望される場合は、事前にご連絡ください。

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