北朝鮮 ガソリン価格は急騰したのか

 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)に支局を置く「中国中央テレビ」と「AP通信」は、ガソリン価格が急騰したり販売制限がされたりしていると報じている。

給油所
「新坪(シンピョン)休憩所」にあるガソリンスタンド(2017年4月20日撮影)

 4月21日まで北朝鮮に滞在していた私は、地方の道路を走る大型トレーラーをひんぱんに見た。これは今までになかったことだ。道路状況は良くないが、物流は確実に向上している。またいたる所で、大型トラクターが水田の田起こしをしていた。

 北朝鮮でガソリンを買うには、ガソリンスタンドで15キログラム単位の給油券を使う。「中国中央テレビ」は25日、90人民元(約1530円)だったのが160人民元(2720円)に急騰したとした。私はこのガソリン供給状況についても取材している。

 12日に「よど号グループ」4人に会った時には、ガソリン価格はわずかに上昇していると聞いた。20日に話を聞いたある運転手は、15キログラム約12ドル(約1320円)だったのが約15ドル(1650円)に上昇したと語った。

 長距離を走る車に、ガソリンを入れたドラム缶が積まれているのを18日に見た。これは、ガソリン供給が滞ることを予測してのことだったのかも知れない。

 中国が北朝鮮への原油供給を制限し始めたのか、北朝鮮が今後の軍事的緊張を予測して使用を減らそうとしているのかは不明だ。ただ中国が制限したとしても、量は限られているもののロシアからの供給が増えるだろう。

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北朝鮮 人民軍兵士が私のカメラで撮った写真

 日本のマスメディア各社は、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の「朝鮮人民軍創建85周年記念日」である今日、核実験が間違いなく実施されるかのような報道を続けた。だがその「期待」に反してなかった。

 米朝関係は極めて危険な状態だが、マスメディアは政府と共に「北朝鮮の脅威」をさらに煽っている。米国・トランプ政権の危険な冒険を戒めるよう日本政府は動け、との論陣を張るべきではないか。

 私の北朝鮮での14 日間の滞在中、睡眠時間は3-5時間。それは祝賀行事を取材するための荷物検査を受けるために、午前4時にホテルを出るということが続いたりしたためだ。

 海外メディアの人数は約120人。徹底した検査であるため、全員の検査が終わるまで2時間かかる。それを3回受けた。撮影機材などすべての荷物はカゴに入れて預け、検査に本人が立ち会うことは出来ない。

兵士が撮影した写真
軍人が撮影した検査場の絵(2017年4月15日)

 検査が終わったカメラには、私が撮った覚えがない映像があった。検査の人民軍兵士が、カメラが本物であることを確認するためにシャッターを切ったのである。金正恩(キム・ジョンウン)委員長に望遠レンズを向けるのは大変なことなのだ。

 帰国後も睡眠時間を削り、テレビと雑誌のための作業を並行して進め、ようやく一息ついている。今回の取材で撮影した写真は6000枚以上。撮影した動画も膨大な時間になる。あまりにも欲張った取材を実現させたので、発表したいことが山のようにある。

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北朝鮮 あの「柳京ホテル」が来年開業か

 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の首都・平壌(ピョンヤン)で建設中の「柳京(リュギョン)ホテル」が来年にも開業するのではないかという。

柳京ホテル
「柳京ホテル」(2016年8月24日撮影)

 「柳京ホテル」の建設が始まったのは1987年。その翌年の韓国でのソウルオリンピックに対抗するために「第13回世界青年学生祭典」が平壌で開催されることになり、それに間に合うように計画された。

 ピラミッド型という独特の外観で、105階建てで高さ約330メートル。客室数は約3000室もある。しかし建設工事は「祭典」には間に合わず、1992年に資金難で中断。その後、外装されていないコンクリートむき出しのみすぼらしい姿をさらし続けていた。

 2008年になり、朝鮮で携帯電話事業を展開するエジプトの「オラスコム」の投資により工事は再開。一気に進んだ外装工事によって、近代的な装いに生まれ変わった。

 そもそも平壌には、外国人が宿泊できるホテルはそれほど多くない。私は、国家行事があった際にどのホテルにも空室がなく、自炊用の台所が付いたアパートのような宿泊施設に泊まったことがある。この建物内にレストランはないので、近くの商店まで一人で歩いて行き、そこで買ってきたラーメンなどを作って食べた。

 平壌市内で外国人が利用できる主要ホテルを紹介する。格付け特級の「羊角島(ヤンガクド)国際ホテル」は客室が1001室で、地下には外国人だけが利用できるカジノがある。大きな国家行事の際に外国のテレビ局が中継をするのは、このホテルのテラスからである。このホテルは団体観光客が多くて夜中までうるさく料理はまずいために、私はよほどのことがない限り泊らない。

 「平壌高麗(コリョ)ホテル」も特級で、部屋は約500室。平壌駅やビジネス街に近いために街のようすが良く分かる。ただ、客室の天井が低くて圧迫感があるので、私は好きではない。

普通江ホテル
「普通江ホテル」(2016年8月22日撮影)

 普通江(ポトンガン)沿いに建つ緑に囲まれた「普通江ホテル」は、古いものの内装・外装の工事がようやく終わり居心地の良いホテルになった。「統一教会」はこのホテルと「平和(ピョンファ)自動車」の運営を長らく行ってきたが同じ時期に撤退している。このホテルの食堂では、価格は高いものの日本国内と同じグレードの日本食を出していたが、今年8月にいくつか食べたところ味が落ちていた。

 これ以外には、大同江(テドンガン)沿いに建つ「平壌ホテル」。在日朝鮮人の多くが利用するのは割引料金で宿泊できるからだ。「朝鮮新報」平壌支局はこのホテル内に置かれている。

 そしてその近くには歴史ある「解放山(ヘバンサン)ホテル」がある。「労働新聞社」が隣にあり、ビジネス街を行き来する人たちのようすが客室から見える。かつては低料金だったので定宿にしていたが、改装後に大幅値上げをしたので今は利用していない。

 日本人がほとんど泊まったことのないという小さなホテルを使うこともある。料金は特級ホテルの半額なのだが、客室数が極端に少ない。しかも、中国などのビジネスマンが長期宿泊しているため、私は3回ほどしか泊まれていない。

 朝鮮の地方都市にある「香山ホテル(ヒャンサン)ホテル」や、スキー場に併設された「馬息嶺(マシンリョン)ホテル」などは1泊3万円もする。「柳京ホテル」にも泊まってみたいが、はたしてどのような価格になるのか。

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北朝鮮 「核実験完了」宣言の真偽は?

 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)が9月27日、核兵器開発のための実験完了の宣言をしたとロシアの複数のメディアが報じた。

銅像
金日成(キム・イルソン)主席と金正日(キム・ジョンイル)総書記の銅像(2016年8月20日撮影)

 それらの報道によると、ロシア駐在北朝鮮大使館はこの日、現地メディアに声明を配布した。9月9日に実施した第5回目の核実験によって、戦略弾道ミサイルに装着する核弾頭の特性・作用・技術性能・威力を点検。

 そのため、核兵器の研究・開発業を基本的に完了させたとしている。つまり、これ以上の核実験を行わない可能性があるということだ。

 この極めて重要な発表が、平壌からではなくロシア駐在大使館から行われたということに不自然さはある。

 国連安全保障理事会と日米韓によって強化が検討されている制裁は、核実験実施への懲罰であるよりも、さらなる実験への抑止という意味合いが大きい。ところが北朝鮮がこれ以上の核実験を実施しないならば、それはほとんど無意味となる。

 もしロシア駐在大使館の宣言がその通りであるならば、米国と日本・韓国にとって北朝鮮との交渉の絶好の機会である。

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北朝鮮 「ビール祭り」へ2回も行ってしまった!

 8月20日から、今年2回目の北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)取材を行った。前回からわずか2カ月にもかかわらず、いろんな変化があった。

ビール祭り全景
「ビール祭り」は、クルーズ船「虹(ムジゲ)号」を含めた大同江沿いで実施(8月24日撮影)

 その一つが、平壌(ピョンヤン)市内を流れる大同江(テドンガン)の川岸で「平壌大同江ビール祝典」が開催されていたことだ。

 平壌郊外にある「大同江ビール」工場を取材したことがある。英国の廃業したビール会社の製造プラントを輸入し、10種類近くのビールを製造。こくと旨みのある味は市民に圧倒的な人気を得て、他の銘柄を駆逐してしまった。

 「ビール祭り」は、8月12日から月末までの午後7時から12時まで営業。ここで提供されるビールは7種類で、50~250朝鮮ウォン。サイズは大ジョッキだけ。この国では、瓶ビールも大瓶しか製造されていない。酒は豪快に飲むのが当然なのだ。

 21日の午後7時半に行ったところすでに席はなく、会場の片隅で立ったまま飲むことになった。次々と来場者があり、通路にも人が溢れている。

ビール祭りウェイトレス
制服姿の女性従業員たちが、ビールジョッキを持って走り回る(8月24日撮影)

 うまいビールが屋外で飲めるだけでなく、人々と触れ合うこともできるため、 24日は営業開始時間前に会場へ行った。ところが席を確保するために、たくさんの人たちがすでに入場していた。

 平日であるにもかかわらず、この日もあっという間に人で溢れる。座っているのが外国人であることが分かっていても、「相席させてくれ」と次々と声をかけてくる。こうした事はこの国では極めて異例なことだ。

 あまりにも大人気なため、この「ビール祭り」は9月9日まで延長されることになった。平壌市民に経済的ゆとりがさらに生まれていることもあるが、娯楽施設が少ない中で、屋外の開放的な雰囲気の中でビールを飲む朝鮮初のビアーガーデンという企画が大ヒットした理由だろう。

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朝鮮民主主義人民共和国の「自力更生」農業(下)

制裁強化の中で脱石油への取り組み

 穀物収穫量を大きく回復させた朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)では現在、食料の質を高める取り組みが行われている。また慢性的エネルギー不足のなかで、化石燃料に頼らない農業への取り組みも進む。

洗浦畜産基地
「洗浦地区畜産基地」の広大な牧草地と農場員たち

 山のすそ野に広がる草原に、たくさんのウシが草を食んでいる。「愛国牛(エグクソ)」と名付けられた大きな体のこの肉牛は、1982年から日本より輸入された「短角牛(たんかくぎゅう)」が基になっている。ここの大根で作った沢庵が、日本へ輸出されたこともある。
 ここは江原道(カンウォンド)の「洗浦(セポ)地区畜産基地」。韓国との軍事境界線に近いこの場所で、一大国家プロジェクトが推進されている。

●草食家畜を育てる
 国連「世界食糧計画(WFP)」は6月27日、「北朝鮮支援事業報告書」を発表。それによると朝鮮国民のタンパク質と脂質の摂取量は、国際基準の70~85%だという。

 穀物生産量が急速に増加しつつある朝鮮は、食料の栄養価を高め多様化させる大規模な取り組みを行っている。「社会科学院経済研究所」の金光男(キム・グァンナム)農業経営研究室長に話を聞く。
 「『草と肉を取り替えるように』というのは、偉大な指導者たちの遺訓です。わが国は耕地面積が少ないため、穀物飼料での畜産には期待できません。草食家畜を育てることがもっとも適した方法です」

 それを大規模に実施しているという「洗浦地区畜産基地」へ向かう。日焼けした任泰元(イム・テウォン)洗浦地区牧草地局長が出迎えてくれる。洗浦地区は海抜が600メートル以上あり、海からの強風が吹いて冬は氷点下30度にもなるので農業には不適だという。この畜産基地の牧草地面積は約5万ヘクタールもある。本格的な建設が始まったのは12年12月からで、ウシにもっとも力を入れているがヒツジ・ヤギ・ウサギ・ブタも飼育。軌道に乗れば、世界屈指の畜産基地になるとのこと。
 「加工工場が稼働すると、食肉だけでなく缶詰・ソーセージや、ヨーグルト・バターといった乳製品も生産する予定です。来年は、5000トンの食肉生産を目標にしています」

 「高山(コサン)果樹農場」は、「洗浦地区畜産基地」と元山(ウォンサン)市との中間に位置する。崔宗寿(チェ・チョンス)支配人が対応してくれた。
 「09年6月に、金正日(キム・ジョンイル)総書記の指導で、人民軍の大部隊が派遣されました。78もの小高い山を削って平地にしたのです」
 岩だらけの不毛の地を果樹園にしたという。農場面積3500ヘクタールのうち、果樹を植えているのは2850ヘクタール。その70パーセントがリンゴで、他はナシ・モモ・スモモなど。現在の収穫量は年1万トンほどだが、果樹が成長する20年には6万トンを計画している。

広大な水田
土地整理がされた水田で田植えが行なわれている

●有機肥料生産を重視
 朝鮮の大地を航空機の窓から見ると、大きな貯水池とともに大規模な水路も目につく。それについて「价川(ケチョン)・台城(テソン)湖水路」の記念館を訪れ、案内人の説明を聞いた。
 「金正日総書記は、大同江(テドンガン)の水で灌漑する自然流下式水路を発案し、02年10月に竣工式を行いました。約10万ヘクタールの農地で、水の心配がなくなったんです」

 1990年代後半に続いた大洪水で、平安南道(ピョンアンナムド)の新安州(シンアンジュ)など炭鉱の坑道が水没した。発電できなくなり電力供給が減少、農業用の揚水機が動かなくなった。その反省から、わずかな標高差を利用する灌漑システムが建設された。
 「この水路は全長151・4キロメートルありますが、標高差は23・2メートルです。そんなわずかな落差で水が流れるのかと人々は心配したのですが、科学者たちはその問題を克服して完成させました。揚水機など536の設備が不要になり、約6万キロワットの電力を削減しました」

 朝鮮では有機肥料の生産に力を入れている。どの農場でもたくさんのブタを飼育。その排泄物と都市から運んだ人糞を、稲わらなどと混ぜ発酵させる。こうして有機肥料を生産。南浦(ナムポ)市の「青山(チョンサン)協同農場」では年間約60トンを生産し、化学肥料の使用を約1トンにまで減らしたという。
 「家畜の排泄物で有機肥料を作り、それを穀物生産で使う。この生産システムの目的は、資源のリサイクルだけでなく質の良い農産物を作ることです」
 このように前出の金室長は語る。化学肥料の製造には、石油などの輸入が必要。朝鮮はそれに依存できないこともあり、有機肥料生産を極めて重視しているのだ。

●壮大な試みの未来は
 農業現場での、他の新しい取り組みもある。「将泉(チャンチョン)野菜専門協同農場」で「農業科学技術普及室」を見せてもらう。まだ若い室長が、パソコンを操作しながら説明をしてくれた。

科学技術普及室
協同農場の「農業科学技術普及室」

 「14年6月にここを訪れた金正恩(キム・ジョンウン)委員長の指示で工事が始まり、1年後に完成しました。私は大学を卒業してすぐに、ここへ配属されました。農場員たちは、午後5時から遠隔教育を受けています」

 朝鮮のさまざまな施設に、数十台・数百台のパソコンが並ぶ光景は珍しくなくなった。海外とインターネットでつながっているものは少ないものの、国内は光ファイバーによるコンピューターネットワークが構築されているようだ。農場員たちは農作業が終わってから、ここで大学の授業を受けているという。私は、彼らがこれらを使いこなせているのか聞いてみた。
 「農場員のみんなに1カ月間の講習をしました。彼らの家にもパソコンがあるので、ここで資料をダウンロードして自宅でも学習できます」
 他のインフラ整備が遅れている中で、「科学技術と生産の一体化」という方針に基づき、ITを極めて重視した政策が進められている。

 朝鮮は1948年の建国以来、大国によるさまざまな形での干渉を受け続けてきた。そのため、政治・経済・軍事において自立を目指す必要があった。そうしたなかで、東欧諸国とソ連の崩壊や「国連安全保障理事会」などの制裁もあり、農業を含めた自力更生の道しかなかった。
 90年代後半の国家存亡の危機から抜け出し、経済状況は次第に改善。政府の農業への投資も増えた。大規模な灌漑システム構築と土地整理、有機肥料への切り替え・節水型農法・品種改良などを実施。そして「圃田(ほでん)担当責任制」という、農場員の生産意欲を強く刺激する新たな制度を導入した。これらの取り組みの上に、急速な食糧生産の増加がある。

 そうした朝鮮だが、今後には大きな不安定要素がある。「国連安保理」などによる制裁の強化だ。これついて「社会科学院経済研究所」の李基成(リ・ギソン)教授に聞いた。
 「わが国は輸出主導の経済ではなく、自立経済の土台がしっかりしています。また地下資源に恵まれており、制裁の影響はわずかです」

 朝鮮はいずれ、5回目の核実験を実施するだろう。それに対しては、民生用の石油を含め輸入はさらに厳しく制約されると思われる。そうした事態への対応について質したが、明確な答えは得られなかった。
 自力更生によって自国だけで完結でき、石油への依存を減らした持続可能な社会を目指す朝鮮。環境に関するさまざまな取材をしてきた私にとって、注目すべき取り組みだ。その壮大な試みの未来は、この国をめぐる国際的な政治状況によって決まるだろう。

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朝鮮民主主義人民共和国の「自力更生」農業(上) 生産意欲を一気に高めた新制度

 今年5~6月に行なった朝鮮農業の取材を『週刊金曜日』に掲載した。それを2回に分けて紹介する。なお誌面には(上)9枚・(下)10枚の写真と、詳細な写真説明を掲載している。

 1990年代後半に農業生産システムが崩壊し、多くの餓死者を出した朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)。ところが現在、食糧生産が着実に増えている。この国の知られざる農業政策と、金正恩(キム・ジョンウン)時代の新農業制度について取材した。

農場員たち
「将泉野菜専門協同農場」で子どもたちの競技に声援を送る農場員たち

 子どもたちの歓声が聞こえてくる。「6・1国際児童節」の記念行事をしているというので、託児所へ行ってみる。前庭は身動きできないほどの人であふれ、完全にお祭りムードだ。日焼けしたたくさんの農場員が、小さな子どもたちの競技に割れんばかりの声援を送っている。この「将泉(チャンチョン)野菜専門協同農場」は首都・平壌(ピョンヤン)へ野菜を供給している。

 ところが次に訪ねたすぐそばのトマト温室では、何人かの女性が一心不乱に働いていた。この温室を担当する「分組」責任者に話を聞くと「収穫が増えると自分に与えられる量も多くなるようになった。今では以前の2倍」とうれしそうに語る。楽しんでいる場合ではない、ということのようだ。農場員たちの生産意欲を高めたのは、「圃田(田畑、ほでん)担当責任制」という新農業制度なのだ。

●壊滅した90年代の農業
 朝鮮は1990年代後半に、「苦難の行軍」と呼ぶ国家存亡の危機に直面。原因のひとつは、東欧のいくつもの社会主義国が89年から、ソ連が91年に崩壊したことだ。朝鮮はそれらの国とバーター貿易や友好価格で石油などを入手していた。農業は、輸入する化学肥料・農薬・機械に大きく依存していたが、供給が一度に途絶えてしまう。キューバも同じ状況に陥ったが、朝鮮の場合はそれに追い打ちをかけて95年から毎年のように洪水と干ばつに襲われた。農業生産は壊滅的打撃を受ける。

 朝鮮で生産しているおもな穀物は、コメとトウモロコシ。91年から800万トンを超えていた穀物生産量は、96年に200万トン近くにまで落ち込んでしまう。深刻な食糧不足で、少なくても20万人が餓死した推測されている。

●「主体農法」の現状は

 「社会科学院経済研究所」の金光男(キム・グァンナム)農業経営研究室長に話を聞いた。
 「金日成(キム・イルソン)主席の『社会主義農村問題に関するテーゼ』には農村問題を終局的に解決する方法が綴られています。『テーゼ』実現の過程で、より高くなった農業生産の水準に合わせて打ち出されたのが金正日(キム・ジョンイル)総書記の『党の農業革命方針』です。これらに、わが国の農業方針がすべて出ています」

 これは「主体(チュチェ)農法」と呼ばれており、「少ない耕地で食糧自給を図り、厳しい自然条件を克服するための知恵の集大成」としている。だが海外からは、多くの批判があった。「精神論のみでやり抜く事を要求するというもので、伝統的な経験農法も科学的知識に基づく近代農法もまったく無視していたため失敗」(「ウィキペディア」)

傾斜地の果樹園
草で土砂流出を防ごうとしている傾斜地の果樹園

 その象徴的な事例とされたのが、山の上まで続く段々畑である。これは農地を増やすために、70年代初めに全国一斉に造られたという。しかし大規模な段々畑は、森林を伐採することで山の保水力を落とし、養分だけでなく大量の土砂を流出させる。そして河床が上がることで、洪水が起こりやすくなる。このことについて、金室長に聞いた。

 「現在は、草畦(くさあぜ)段々畑という方法にしています。石を積み上げた畦は、崩れると修復に手間がかかりますが、草を植えた畦だとそうしたことがないからです」

 最新技術を展示する「科学技術殿堂」に草畦段々畑の模型が展示されているほどで、段々畑を減らすことは不可能なようだ。次に、朝鮮での稲作の問題点として指摘されてきた「密植」について聞いた。すると「坪あたりの株数は、農場や地域ごとに決めている。土壌の状態が良ければ密植し、そうでなければ疎植にしている」とのこと。この取材で多くの水田を注意深く見たが、密植といえるものはなかった。

●「圃田担当制」の成果

 朝鮮の農業制度は「協同農場」が基本となっている。ここにはいくつかの「作業班」があり、さらに「分組」に分かれている。「分組は農場員の労働と生活での末端単位で、十分に機能を果たすことができるかどうかで農業生産が左右される」と金室長はその重要性を強調する。

 この「分組」をさらに分けたのが「圃田担当責任制」だ。人数が20~30人の「分組」だと、苦労せずにノルマを消化した人がいても労働の評価が一律になってしまうことがある。それを是正するために、さらに細かく分けたのである。

 この新制度は、個人から数人単位で一定の広さの田畑などを担当。収穫した農作物は、決められた量を政府へ納付すれば、あとは収穫量に応じて農場員へ分配される。収穫量が増えれば増えるほど自らの利益が多くなるのだ。金室長は次のように語った。「圃田担当責任制は、農場員たちの主人としての自覚を高め、自分の力ですべてやり遂げようとする自力更生の精神を強くさせました」

 「圃田担当責任制」が対外的に公表されたのは、14年2月に開催された「全国農業部門分組長大会」へ金正恩委員長が送った書簡だった。その中で「分配における平均主義(略)は農場員の生産意欲を低下させる」とし、「圃田担当責任制」で労働に応じて分配での差別化をはかることが明確にされた。これまでの朝鮮農業は増産のために精神的刺激だけ与えていたが、「圃田担当責任制」で物質的刺激も加えたのである。500キログラム~1トンを受け取る農場員も珍しくないという。

 南浦(ナムポ)市にある「青山(チョンサン)協同農場」は水田を中心にして910ヘクタールあり、農場員は1200人。10の作業班があり、その下の各「分組」の構成は農産4・野菜1・畜産1・トラクター1となっている。長英洙(チャン・ヨンス)管理副委員長に話を聞く。
「この農場では、12年に圃田担当責任制を導入しました。6~8人で構成していますが、家族単位ということではありません。今では個人主義がなくなり、生産意欲が高まりました。その結果、1ヘクタール当たり7~8トンだった米の収穫量は2・5トン増加し、トウモロコシは8トンだったのが3トン増えています」

温水器
温水器とソーラーパネルが備え付けられている「将泉野菜専門協同農場」の住宅

●改善された食糧不足

「社会科学院経済研究所」の李基成(リ・ギソン)教授によれば、朝鮮の穀物生産量は12年度が529万8000トンだったのが、13年度562万4000トン、14年度571万3300トンと急速に増えた。李教授の試算では、食用だけでなく、工業原料用・畜産用を含めた必要量は約700万トンなので、まだ穀物は不足している。まだ15年の統計は未発表だが、深刻な干ばつによって数年ぶりに減少。その代わりに植えたコムギ・ジャガイモ・マメなどが埋め合わせたという。変動はあるものの、食糧事情が改善に向かっているのは確かだ。私は金室長に、取材で訪れたのは「模範農場」ばかりで、成功例を見ただけではないのかと質した。

 「圃田担当責任制と、先進的な営農技術・肥料という条件が揃った農場では収穫量が大きく増えました。ですが自然災害の影響があったり、技術的に立ち遅れていたり、品種選択が間違っている農場はそうではありません」
 まだ解決すべき課題は多いようだ。しかし朝鮮の農業が、外国からの資金・機械・技術などがあまり入ってこない中で、壊滅的状況から着実に回復してきたことに驚く。
                                        (続く)

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北朝鮮 農業生産増加の理由を現地で取材

 『週刊金曜日』2016年8月5日・12日合併号と19日号に「朝鮮民主主義人民共和国の『自力更生』農業」と題した記事と写真を、各号4ページで掲載します。5日・12日合併号の(上)には「生産意欲を一気に高めた新制度」というサブタイトルをつけています。

協同農場の農場員たち
協同農場の託児所で、子どもたちの競技を見る農場員たち(2016年6月1日撮影)

 1990年代後半に農業生産システムが崩壊し、多くの餓死者を出した朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)。ところが現在、食糧生産が着実に増えています。この国の知られざる農業政策と、金正恩(キムジョンウン)時代の新農業制度について取材しました。

 この取材は、2年前に交渉を開始してようやく実現させたものです。外国人ジャーナリストが初取材の場所を訪ねたり、農業関係者たちへの詳細なインタビューをしたりしています。

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北朝鮮の電力不足が緩和した理由は

 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)に対する「国連安全保障理事会」による制裁開始から5カ月が過ぎた。中国からの輸入品の価格が上昇したという話も出ている。また中国への石炭輸出が減少したことによって、火力発電所の稼働率が上昇して電力不足が緩和したという。

平壌夜景
平壌の高麗ホテルからの夜景(2016年6月2日撮影)

 5月~6月に平壌(ピョンヤン)と元山(ウォンサン)で滞在した10日間には、一度も停電がなかった。元山のホテルでは、どの時間でもお湯が出た。

 電力事情が良くなった理由は、輸出できなくなった石炭を国内消費に回したということだけではない。その理由は、水力発電所が順調に稼働していること。昨年と一昨年は深刻な水不足によって水田の苗が枯れてしまうほどだったが、今年はそうしたことがない。

 他の理由は、中国にあまりにも依存している経済構造の改善をはかっていることだ。核・ミサイル実験は、中国との貿易が極端に減少することを承知で実施した。北朝鮮としてはそれを転機として、中国依存経済から脱却しようとしているのではないか。

 成功するかどうかは未知数だが、長期にわたる「安保理」などの制裁を受け続ける中で、北朝鮮は自国だけで完結する社会をつくろうとしているのは確かだ。

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北朝鮮 労働党大会で配られた腕時計を激撮!

 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)で5月6日から9日まで開催された「朝鮮労働党第7回大会」。その参加者へは、記念品として液晶テレビが贈られたのではないかといった報道があった。

 5月29日、平壌(ピョンヤン)から遠く離れたある国営農場で、支配人にインタビューをした。広い執務室には、何人もの幹部が同席している。

 「党第7回大会」によるこの農場の変化について質問をする。すると突然、管理委員長は自分の腕時計を外して私の前に置いた。何のことなのか分からないまま時計を見ると、特別仕様になっているのだ。文字盤には、ハンマー・ペン・カマを組み合わせた労働党のマークが入り、第7回大会を表す「北斗七星」が描かれている。

党大会腕時計
「朝鮮労働党第7回大会」の参加者に配られた腕時計(2016年5月29日撮影)

 「党大会に参加したので、その記念品としてもらった」と管理委員長はと言う。大きな体格で日焼けして難しそうな感じの人なのだが、うれしくてたまらないといった表情をした。

 「お宝」を目の前にした私は、反射的にカメラを向けてシャッターを続けて切った。「写真を撮っても大丈夫か」と案内人が心配そうに聞くと、支配人は構わないと大きくうなずいた。

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北朝鮮で平壌・地方都市取材を敢行!

 今年になってからも核実験、国連安保理や日本の制裁、朝鮮労働党大会といった動きに、日本だけでなく国際社会から注視されている北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)。

客室乗務員
高麗航空の客室乗務員。この写真はすぐに消去させられた(2016年6月4日撮影)

 その北朝鮮の首都・平壌(ピョンヤン)と地方都市を、10日間にわたって取材した。制裁の影響は出ているのか? 食糧事情はどうなのか? 日朝関係をどうしようとしているのか? 国際社会から孤立した北朝鮮は、どこへ向かおうとしているのか? 

 さまざまな現場を訪ね、政府担当者を含む多数の関係者へのインタビューを敢行。撮影した写真は約3500枚、ビデオでの録画は17時間にもなった。メディアでの発表に乞うご期待。

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北朝鮮 「労働党」大会での非核化表明の背景とは?

 「朝鮮労働党第7回大会」 2日目の5月7日、金正恩(キム・ジョンウン)第1書記が「事業総括」を行った。その中には、注目すべき内容がある。

「三大革命展示館」のロケット模型
「三大革命展示館」に展示されているロケットの模型(2013年6月12日撮影)

 「わが党と共和国政府は、米国によって強要されている核戦争の危険を強力で威力ある核抑止力に依拠して根源的に終息させ、地域と世界の平和を守り抜くための闘争を力強く展開していくであろう。責任ある核保有国として、侵略的な敵対勢力が核でわれわれの自主権を侵害しない限り、すでに闡明した通りに先に核兵器を使用せず、国際社会に担った核不拡散義務を誠実に履行し、世界の非核化を実現するために努力するであろう」

 「核抑止力」として核兵器を保有するもののそれを先に使用することはなく、 「非核化」に努力するというのだ。これは今までにも言われてきたことだが、 36年ぶりの党大会で最高指導者が表明したことには重要な意味がある。

 1991年12月、金日成(キム・イルソン)主席と韓国の盧泰愚(ノ・テウ)大統領が、核兵器の製造・保有・配備を禁止するとした「朝鮮半島非核化宣言」を行った。朝鮮半島の非核化は、金日成主席の遺訓となっているのだ。

 今回の党大会での「非核化」表明は、「建国の父」である金日成主席が定めたこの国の基本路線を改めて指し示そうとしたものだ。

 また日本について「事業総括」では、「朝鮮半島に対する再侵略野望を捨て、我が民族に対して働いた過去の罪悪を反省して謝罪すべきであり、統一を妨害してはならない」としている。

 そして「自主性を志向するすべての国と民族は、帝国主義者の狡猾(こうかつ)な二面術策と欺まん的な『援助』にいかなる期待や幻想も抱いてはならず、主体性と民族性を守り抜かなければならない」としている。

 北朝鮮は、国際社会からの「人道支援」「経済支援」を受け続けたことにより、それへの依存体質になってしまった。それから脱却し、自立した経済建設を目指そうということだろう。

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北朝鮮 「朝鮮労働党」創立大会が開催された日本建築

 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)で5月6日から「朝鮮労働党第7回大会」が開催される。それに向けて続けられてきた「70日戦闘」が終了。水力発電所が完工したり、多くの事業所で目標を突破したりしたという。
 党大会の参加者らは、各地から列車で平壌へ到着したという。中国やロシアなどの外国代表団は招かれていないようだが、すでに外国メディアは現地からレポートを送っている。

党創立事績館と案内人
「党創立事績館」の正面と案内人(2009年10月9日撮影)

 北朝鮮には、日本による植民地支配時代の建物がわずかではあるものの残っている。首都・平壌(ピョンヤン)の中心部には「党創立事績館」がある。外国人が訪れることはほとんどないが、この国にとって重要な「革命史跡」である。

 この建物は、植民地時代に 平安南道(ピョンヤンナムド)の商工会議所として建設された。解放直後の1945年10月10日、この建物の2階 ホールで「朝鮮労働党」の前身である「朝鮮共産党」の創立大会が開かれた。そしてしばらくの間、金日成(キム・イルソン)氏はこの建物を事務所とした。

 朝鮮戦争において米国は50万トンもの爆弾を投下。この「党創立事績館」も一部を焼失たが修復され、1970年10月に公開された。館内には執務室や応接室、ホールが当時のままで残されている。そして裏に回ると、日本の古い民家風の部屋がある。日当たりが良く、居心地が良さそうだ。

党創立事績館の日本家屋
「党創立事績館」裏の日本式家屋(2009年10月9日撮影)

 私が見てきた北朝鮮に残る日本の建築物のほとんどは、金日成主席に関わる「革命史跡」で、今も大切に修復・保存されている。

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北朝鮮 労働党大会に向けての文書が届いた!

 25日の夕方、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の政府機関から、5月上旬に開催される「朝鮮労働党」第7回大会に関する文書がメールで送られてきた。

3人の肖像画
最高指導者たちの肖像画(2012年4月15日撮影)

 各道・市において開催された党代表会で金正恩(キム・ジョンウン)第1書記が第7回大会の代表に推戴されたことにより、国中がお祝いのムードに溢れているとしている。そして、下記のように党大会を位置づけている。

 「第6回大会より36年ぶりに開催されるこの度の第7回の党大会はチュチェ革命偉業の遂行において歴史的な分水嶺として、さらには我が革命偉業の最後の勝利を繰り上げるための目覚ましい設計図を提示する歴史的な大会となるでしょう。これまでわが人民は朝鮮労働党の指導のもとに戦争に匹敵する厳しい試練と難関を乗り越え、我々の生命であり、生活である社会主義を守り抜き、帝国主義連合勢力のもっとも悪辣な制裁圧殺策動を粉砕して強国建設の一筋道を歩んできました」

 また、最高指導者たちについて次のように述べている。

 「我が人民は今の誇り高い祖国を立ち上げ、守ってくださった金日成(キム・イルソン)主席と金正日(キム・ジョンイル)総書記に限りない感謝と敬慕を捧げており、国力を最高の境地に到らせ社会主義強国建設の最盛期を開いておられる金正恩第1書記への信頼と尊敬の念を抱いて、第1書記の正しい指導のもとに第7回の党大会に向けて展開されている70日キャンペーンにおいて目覚ましい奇跡と建設神話を創造しています」

 その「奇跡と建設神話」がどういったものか大いに関心があるが、具体的な記載はない。

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北朝鮮核実験③ 北朝鮮が核実験中止の条件を提案!

 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)への制裁について、日本・米国・韓国と中国・ロシアとの考えの違いが明確になってきた。

 今月8日、中国外務省の華春瑩報道官が「北朝鮮核問題の本質的な責任は米国にある」と明確に述べた。このように認識しているため、制裁強化のための日米韓による執拗な働きかけを受けながらも慎重な姿勢を続けている。これはロシアも同じである。

米国批判の切手 (2)
ロシアとの友好のために、2015年に発行された北朝鮮切手

 「ロシアと中国は、日本や米国、韓国と異なり、北朝鮮の崩壊や、政権交代を有益と見なしていない。露中はミサイルや核など具体的な軍事計画に対しては制裁を導入することに賛成だが、経済の民間部門を窒息させるようなそれを望んではいない」

 14日のロシア国営通信の「スプートニク」は、「ロシア科学アカデミー東洋学研究所」のアレクサンドル・ヴォロンツォフ朝鮮研究室長のこのようなインタビューを掲載。これはロシア政府の見解と思われる。そして米国の責任について言及。

 「1953年の古い(筆者補足:朝鮮戦争の)停戦合意を脱し、北朝鮮と米日韓の間に平和条約が締結され、外交関係が樹立されねばならない。こうしたプロセスの中で、米国は北朝鮮に保証を与えるだろう。攻撃しない、という保証、軍事的手段で政権を交代させない、という保証を。しかし米国は、様々な理由を設けて、頑なに保証を拒んでいる」

 つまりロシアは北朝鮮への制裁強化に否定的で、米日韓が北朝鮮と平和条約を締結して体制保障をすべきというのだ。

 15日には、北朝鮮外務省が重要な談話を発表した。

 「米国の合同軍事演習中止対われわれの核実験中止の提案を含むすべての提案は今も有効である」

 米韓合同軍事演習を中止するならば核実験を一時中止するという内容で、昨年1月に米国へ伝えられたものを改めて表明した。1年前とは状況がまったく異なる核実験直後の提案であり、極めて重要だ。

 米国と韓国は2月に予定している合同軍事演習を中止し、北朝鮮との対話に踏み出すことが最善の策だろう。

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北朝鮮核実験② 核開発を止めることはできる!

 1月6日に核実験を行った北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)に対し、力による対抗措置が進行している。

 韓国政府は、軍事境界線での宣伝放送を再開し、米国は10日に核弾頭を搭載できる戦略爆撃機B52を韓国上空で飛行させ、横須賀基地を母港とする原子力空母「ロナルド・レーガン」を派遣しようとしている。

咸鏡北道銅像
核実験が行なわれた咸鏡北道(ハムギョンブクド)にある最高指導者の銅像(2015年6月19日撮影)

 そして「国連安全保障理事会(安保理)」は、追加制裁のための決議の検討に入り、米国や日本などは独自の強力な追加制裁を実施しようとしている。

 日本政府は「ストックホルム合意」によって解除した一部の制裁を復活させるばかりか、自民党案の実施を検討している。「人道目的」の10万円以下を除いた送金の原則禁止や、朝鮮総連の中央常任委員会・中央委員会の委員と核・ミサイル技術者の再入国禁止、そして朝鮮学校への地方自治体による補助金支出の全面停止を指導するといった内容である。

 この自民党案は、北朝鮮ではなく在日朝鮮人を標的としたものだ。北朝鮮そのものへの制裁が困難であるため、日本国内で暮らす朝鮮人を代わりに攻撃するというとんでもない措置だ。こうした差別的で非人道的な政策は、日本の民主主義を大きく後退させることになる。

 米国・日本や韓国は、中国に対し北朝鮮への実効のある制裁を強く求めている。13日に韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は、制裁強化には「中国の役割が重要」として中国の積極的関与を強く求めた。また同日には「6カ国協議」の日米韓代表が緊急会合を開き、「安保理」での強力な制裁決議採択のために中国とロシアに協力を求めると表明。

羅津港
羅津(ラジン)港での、ロシアからの石炭の積み出し作業(2015年6月23日撮影)

 日米韓の中国頼みは、北朝鮮の貿易額の約90パーセント以上を占める中国が動かない限り、実効ある制裁ができないと考えているからだ。だが、中朝貿易によって中国も大きな利益を得ている。そしてロシアは、積極的な投資を始めたばかりである。中国とロシアが、制裁強化に積極的な協力をすることはあり得ない。

 そもそも制裁というものは、エスカレートしていけば軍事衝突に発展する可能性があるだけではなく、政治的・外交的解決を放棄することになってしまう。

 米国は実験として広島・長崎という都市へ原爆を投下したが、どの核保有国も敵対する国からの軍事攻撃を抑止する手段として核兵器を開発・保有してきた。

 朝鮮戦争が休戦状態の中で、北朝鮮は米国からの軍事攻撃の脅威を受け続けてきた。米国・韓国は毎年、休戦ラインに近い場所で大規模な合同軍事演習を実施しており、それがそのまま北朝鮮への攻撃になる可能性が十分にある。そのため、北朝鮮は「自衛的措置」として核開発を進めてきた。

 そもそも米国とその「同盟国」は、「核拡散防止条約(NPT)」で核保有を認められた米国・ロシア・中国・フランス・英国だけでなく、インド・パキスタン・イスラエルの核兵器を容認している。

 それらの国の核弾頭の数は少なくても1万6000発以上にもなる。にもかかわらず、北朝鮮の核保有は認めないという二重基準を取り続けている。

 「6カ国協議」は、2005年には北朝鮮の核兵器開発の放棄で合意して「共同声明」を出すなど進展はあった。だが、その後も北朝鮮の核放棄が先決とする米国の姿勢が変わらず協議は暗礁に乗り上げた。

 北朝鮮政府が1月6日に発表した声明は「米国の朝鮮敵視が根絶されない限り、核開発中断も、核放棄もあり得ない」としている。北朝鮮の核開発を止めるのは、難しいことではない。米国が、朝鮮戦争の「休戦協定」を「平和条約」にすれば良いのだ。

 このように簡単で正当な解決策を米国が頑なに拒み続けている理由は、朝鮮戦争で北朝鮮に勝つことができず、「プエブロ号事件」で大きな譲歩をして屈辱を味わったからだ。米国のプライドのために、東北アジアの安定と平和が脅かされてきた。

 そしてこうした屈折した米国の対北朝鮮政策に、日本などの「同盟国」は追随してきた。またマスメディアも、この政策を批判してこなかった。

 参加国のさまざまな思惑で左右されてきた「6カ国協議」での解決は困難だ。もはや米朝の直接交渉しか残されていない。日本・韓国・中国・ロシアがすべきことは、米国に対し北朝鮮との交渉の席に着くよう説得することである。

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北朝鮮核実験① すぐに送られてきた日本語の「政府声明」

 1月6日午前10時30分(朝鮮時間午前10時)、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)が4回目の核実験を実施した。

 「朝鮮中央テレビ」は午後0時30分(朝鮮時間正午)から「特別重大報道」として「水爆実験成功に関する政府声明」を放送。それによれば水爆実験だという。

声明日本語文書
「朝鮮対外文化連絡協会」から送られてきた日本語の「政府声明」

 「政府声明」がテレビで発表されてから5時間後の午後5時30分に、北朝鮮の政府機関から私あてにメールが送られてきた。それは「政府声明」の公式の日本語訳だった。

 こうしたことは今までにない異例の対応であり、あらかじめ訳文が準備されていた可能性が高い。この核実験は、さまざまな周到な準備の上に実施されたのは確かだ。

 この核実験によって、東アジアの安定は遠のくだろう。日本政府は、一昨年に解除した人的往来・送金の規制を再実施するなど制裁強化をただちに表明。拉致問題を含む「日朝合意」の履行はさらに先が見えなくなった。

 北朝鮮へは、関係改善を模索していた中国・韓国だけでなく、多くの国からの厳しい対応が予想される。海外からの投資や観光客は極端に減るだろう。徐々にではあるが確実に発展していた経済は、大きく減速すると予想される。

 そうした極めて大きなダメージを承知で、核実験は実施された。マスメディアや「北朝鮮専門家」たちは、この核実験実施が唐突であるとする。だが大きな視点から見れば、この時期に行われた理由が分かる。

 「政府声明」では核実験実施の理由を明確に述べている。

 わが共和国が行った水爆実験は、米国をはじめとする敵対勢力の日を追って増大する核脅威と恐喝から国の自主権と民族の生存権を徹底的に守り、朝鮮半島の平和と地域の安全を頼もしく保証するための自衛的措置である。

 北朝鮮は、体制の安定のためには米国との「平和条約」を結ぶことが不可欠としている。それなくして米国による軍事侵攻の脅威はなくならないし、外国からの大規模投資や国際金融機関の融資を得て大きな経済発展をすることは不可能だからだ。

 この核実験は、昨年12月12日の「モランボン楽団」の北京公演中止で中国との関係悪化がきっかけとなっている。中国に配慮する必要がなくなったため、オバマ政権に対話を決断させるために核実験実施を決断した。

 米国のオバマ政権は、発足当初の予想を裏切って北朝鮮に対して何の政策も打ち出せずにきた。この危機的状況を劇的に変えることができるのは、米国の対話路線への転換だけである。(続く)

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北朝鮮軍事パレード、満席で訪朝できず 残念!

 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)では、10月10日は朝鮮労働党創建70年の記念日。最大の目玉として、大規模な閲兵式(軍事パレード)が午後3時30分から2時間以上にわたって金日成(キム・イルソン)広場で行われた。

金正恩第1書記
10月10日の閲兵式での金正恩第1書記(朝鮮中央テレビより)

 金正恩(キム・ジョンウン)第1書記は約25分にわたって演説し、米国と対決する決意を改めて表明した。

 私はこの一連の祝賀行事を取材するため、今年に入ってすぐに交渉を開始。やり取りの末、海外からの取材団の一員として訪朝することになった。

9月には、持参する撮影機材のリストを提出するなど手続きをすべて済ませた。あとは日程の連絡を待つだけである。

 ところが連絡があったのは9月下旬。10月8日入国・13日出国という日程である。ただちに航空券を予約しようとしたが、日本から中国、中国から北朝鮮(平壌)への便がすべて満席なのである。

 日本から中国へは、中国の国慶節の連休が重なった。中国から北朝鮮へは、世界約40カ国のメディア百数十人と各国の祝賀団が訪朝するため、臨時便まで出しても一杯だという。いろいろと方策を探ったものの、訪朝を断念せざるを得なかった。

閲兵式
10月10日の閲兵式でのミサイル(朝鮮中央テレビより)

 北京にスタッフを置き、経費のことを考えなくても良いマスメディアは、早めに入国して平壌から映像を送り出した。それをうらやましい思いで見ながらも、フリーランスのジャーナリストはマスメディアとは別の土俵で勝負するべきなのだと、自分自身に改めて言い聞かせた。

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北朝鮮の軍事パレードは中国を越えるか?

 9月3日に中国は「抗日戦争勝利70周年」の記念行事として大規模な軍事パレードを実施した。約1万2000人の兵士が行進し、初公開の戦車やミサイルなどの最新兵器が次々と登場。

 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)でも、「朝鮮労働党創建70周年」の10月10日に、大掛かりな軍事パレードが準備されている。今年6月の取材の際、すでに平壌(ピョンヤン)市内で行進の練習が行われていた。

 金日成(キム・イルソン)広場で、2008年9月9日の「建国記念日」に行われた軍事パレードの写真を紹介する。

080909金日成広場での軍事パレード

080909軍事パレードの女性兵士

080909銃剣を付けて行進する兵士

080909軍事パレードの兵器を積んだトラック

 北朝鮮で行われている足を伸ばした行進の仕方は、極端に体力を使うという。パレード開始直前に兵士たちが練習しているようすを見ることが出来たが、行進後にはどの兵士もクタクタになっていた。

 兵士たちの一糸乱れぬ行進は、朝鮮人民軍がもっともグレードが高いと思ってきた。だが、中国人民解放軍の行進もなかなかのものだった。否が応でも、北朝鮮での軍事パレードへの関心が高まる。

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北朝鮮は大干ばつか? 水田を撮影!

 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の首都・平壌(ピョンヤン)では、「東平壌火力発電所」の稼動や、2012年の「煕川(ヒチョン)水力発電所」からの送電などにより、電力事情は確実に良くなってきた。

 ところが今年6月の取材で、停電が増えていることを実感した。地方都市だけでなく平壌のアパートでも、小さなソーラーパネルを窓に置いている家が目につくようになった。

 それだけでなく、上水の供給状況も悪くなっている。それは、平壌でのビル建設ラッシュにインフラ整備が追いついていないことが大きいが、最大の原因は水不足である。北朝鮮メディアは「100年に1度の大干ばつ」に襲われていると報道している。どのダム湖も干上がっている状況なのだ。

2015年6月の水田
水を満たした咸鏡北道鏡城(キョンソン)郡の水田(2015年6月26日撮影)

 6月の取材では、地方での水事情のついても気をつけていた。清津(チョンジン)市と羅先(ラソン)特別市のホテルでは断水もなく、時間は限られているもののお湯も供給された。また、どの水田にも水が満たされていた。

 羅先特別市で案内してくれた「人民委員会」の担当者に聞くと「咸鏡北道(ハンギョンブクド)や咸鏡南道(ハンギョンナムド)では水不足はない。起きているのは黄海北道(ファンヘブクド)や黄海南道(ファンヘナムド)など」とのことだった。

 地球温暖化による異常気象によって、北朝鮮でも水害と干ばつに襲われるようになった。北朝鮮での今年の大干ばつは、地域によってかなりの差があるようだ。

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プロフィール

こだわりジャーナリスト

Author:こだわりジャーナリスト
フリーランスのジャーナリストとして長年にわたりさまざまな取材を行い、数多くのメディアで発表してきました。
海外取材は200回近くで、そのうち北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)へは数十回です。現在、年1~3回の訪朝をしています。
掲載写真は、引用先が非表示のものは筆者撮影です。なお、このブログに掲載している映像と文章は日本の「著作権法」と国際的な著作権条約で保護されており、無断使用はできません。転載を希望される場合は、事前にご連絡ください。

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