北朝鮮現地報告第1弾 厳寒の中でも活気のある平壌

 今の時期に、極寒の地へ来るのはためらいがあった。昨年8月から半年ぶりに、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)へ20日の夕方に入った。

冬の平壌の街
平壌の街を走る車(2018年2月20日撮影)

 飛行機から見た川や湖は凍てつき、大地は寒々としていた。例年よりかなり寒いという。だが市内に入ると、誰もが厚着をしているもののいつもと変わらない活気のある光景があった。走っている自動車の数も、減っていないようだ。

 ホテルの部屋は暑いほど暖房が効き、お湯は勢いよく出る。夕食はおいしく、その食材は豊富だ。厳しい制裁を受けている国とは思えない。

 今回も、忙しい取材の合間に地方都市からも最新情報を送る予定だ。

北朝鮮 小野寺防衛相が「日朝平壌宣言」を否定か

 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党第1副部長は2月10日、韓国大統領府において文在寅(ムン・ジェイン)大統領に金正恩(キム・ジョンウン)委員長からの早期訪朝を求める親書を手渡した。平昌(ピョンチャン)五輪を通して、南北融和が進む可能性が高くなった。

米軍戦車
朝鮮戦争で北朝鮮が鹵獲した米軍戦車(2017年4月12日撮影)

 こうした流れに日本と米国は、焦り始めている。安倍晋三首相は9日、文在寅大統領との首脳会談で、平昌パラリンピック終了後に米韓合同軍事演習を実施するように求めた。それに対して文大統領は「わが国の主権と内政に関する問題」として反発した。

 外国の2カ国が行なう軍事演習について、他国のトップが口出しするのはどう考えても内政干渉である。そのことを安倍首相が理解できないのは、「反北朝鮮」ということにあまりにも前のめりになっているからだ。

 そして10日には小野寺五典防衛相が、日本や韓国など国際社会が北朝鮮の融和的政策に乗ってしまい、北朝鮮は核・ミサイル開発を進めたと述べた。日本が乗ってしまったというのは「日朝平壌宣言」とそれに関連した「日朝ストックホルム合意」を指すようだ。日本政府は「平壌宣言」と「ストックホルム合意」が生きていることをたびたび表明してきた。

 私は昨年4月、宋日昊(ソン・イルホ)朝日国交正常化交渉担当大使へ3時間の単独インタビューをした。大使は「『日朝平壌宣言』は首脳会談によるものなので非常に大切にしており、関係改善の里程標となっている」と語った。

 つまり、最高指導者である金正日(キム・ジョンイル)総書記が署名した「平壌宣言」は絶対的なものであり、あくまでも守ろうとしているのだ。にもかかわらず日本はそれを否定し、日朝関係改善のための基本方針を変更しようというのか。

五輪での北朝鮮・韓国の融和を戦争回避へ

 2月9日の「平昌(ピョンチャン)五輪」の開会式は実に感動的だった。北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)と韓国の選手・役員たちが「統一旗」を掲げて合同で入場行進し、アイスホッケー選手2人が聖火をともに運んだ。

祖国統一3大憲章記念塔
平壌(ピョンヤン)市に建つ南北統一のための文書を記念した「祖国統一3大憲章記念塔」(2012年4月11日撮影)

 この日、平壌から航空機で、金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長と金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党宣伝扇動部副部長など北朝鮮の高官級代表団が韓国へ入った。北朝鮮は一足先に「三池淵(サムジヨン)管弦楽団」や応援団などを送り込んでおり、並々ならぬ意気込みだ。

 安倍首相は、韓国政府に「北朝鮮のほほえみ外交に騙されるな」と牽制し、南北融和の動きを懸命に阻止しようとしている。

 米国・トランプ政権は、東アジアで膨大な死傷者が出ることを承知で、北朝鮮への先制攻撃作戦「ブラッディ・ノーズ(鼻血)」を検討している。1月31日の米軍情報誌「ミリタリー・タイムズ」は、米国のヘーゲル元防長官が、米国が限定攻撃を実施した場合、北朝鮮による反撃で全面的な核戦争に発展する懸念が強いと報じた。

 「パラリンピック」が終了すれば、米国は延期している「米韓合同軍事演習」を実施しようとしている。そうすれば危険な緊張状態が戻り、最悪の場合は米国の先制攻撃が行われる可能性がある。

 こうした第2の朝鮮戦争を止めるには、トランプ大統領と安倍首相が語る「北朝鮮への最大限の圧力」ではない。長期の制裁の中で経済発展までさせてきた北朝鮮は、これからも耐え続けるだろう。

 米国の「ジョンズ・ホプキンズ大学」の北朝鮮分析サイト「38ノース」が出した米朝での戦争による被害想定は、最悪の場合の死者は「ソウルで203万人」「東京で180万人」。これには、米軍基地がある他の都市や、北朝鮮での被害が入っていないので、数百万人で済まない可能性は高い。

 戦争以外の選択肢は、南北の融和を米朝対話へとつなげるしかないのだ。日本の政府とマスメディアはこの動きの足を引っ張り続けているが、これ以外の方法があると思っているのか。

米朝危機の中で日本の進む道を探る

 1月30日、米国のトランプ大統領が一般教書演説を行い、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)について5分以上にわたって触れた。すぐにでも米本土の脅威になり得る核・弾道ミサイル開発を阻止するため、最大限の圧力をかけ続けるとしている。

祖国解放戦争勝利記念館と新郎新婦
朝鮮戦争の博物館を訪れた新郎新婦(2017年4月12日撮影)

 そして米国の核戦力の近代化と再建の必要性を訴え、戦略核兵器の強化を打ち出した。前のオバマ政権とまったく逆の方向へ進もうというのだ。

 同じ日の「ワシントンポスト」(電子版)は、韓国駐在米大使にビクター・チャ氏を起用する人事案が白紙になったと報じた。チャ氏は、ブッシュ政権(第43代)で、北朝鮮の核についての「6カ国協議」での次席代表を務めた。

 起用されなかったのは、トランプ政権の「国家安全保障会議」が北朝鮮への限定攻撃を検討していることに対し、懸念を示していることが理由だという。

 毎年2月から行われる米韓合同軍事演習は、韓国での平昌(ピョンチャン)五輪の後に延期された。だが終了後に実施されれば一気に緊張が高まり、米軍による先制攻撃の可能性がある。

 こうした米国の動きに対し、安倍政権は完全に支持し追随をしている。米国は北朝鮮との複数の交渉ルートを持っているが、日本は北京の北朝鮮大使館へ抗議文を送ることぐらいしかできないようだ。

 しかも北朝鮮と国交のある国々に、外交・経済関係を断つよう積極的に働きかけている。それは「国連安保理」決議で求めていることでもなく、他国の外交政策に介入するものだ。

 そして何よりも、このような「圧力一辺倒」の極端な政策を続けるならば、その傷痕と恨みは北朝鮮の人々の心にいつまでも残るだろう。日本がかつて行なった植民地支配と同じように、長期にわたって修復ができない。

 また安倍政権は、敵対する国を徹底的に追い詰めることの危険性を、日本の歴史から学んでいない。米国ジョンズ・ホプキンズ大学の北朝鮮分析サイト「38ノース」が出した被害想定は、最悪の場合の死者は「ソウルで203万人」「東京で180万人」というとんでもない数字だ。これには、北朝鮮や日本の他の都市での被害は入っていないので、数百万人で済まない可能性もある。

 東アジアがこうした極めて危険な状況にあることを、自分のこととして正面から受け止めることが必要だ。そのための一助となればと、イベントが予定されている。

第2弾 緊急企画 北朝鮮 もう一つの視点
-日本初公開映像を交え、日本の進む道を探る-
◆日時 2018年2月5日(月) 13:30 - 17:30  13:00開場
◆場所 参議院議員会館講堂(千代田区永田町2−1−1)
◆プログラム
◇講 演 「米朝危機の歴史的経緯と日朝の課題」 伊藤孝司(フォトジャーナリスト)
◇映像上映「廃墟の上に立ち上がった朝鮮(朝鮮戦争での米軍爆撃の記録)
         「米帝侵略軍の武装スパイ船 プエブロ号」(平壌市内の艦内で上映)
◇対 談 「朝鮮映画と日本」 小林正夫(カナリオ企画代表)& 伊藤孝司
◇交流紹介「日本と朝鮮半島の子どもたちの心をつなぐ」
        筒井由紀子(KOREAこどもキャンペーン事務局長)
◇朝鮮半島の平和に向けてのメッセージ
        宇都宮健児(元日弁連会長)
        井筒高雄(VFPジャパン / ベテランズ・フォー・ピース・ジャパン代表)
◆主催 NPO法人世界ヒバクシャ展
◆資料代 1000円(学生は500円)
◆お申し込み フォームhttps://form.os7.biz/f/1dc21f1e/  080-3558-3369

緊急集会第2弾「北朝鮮 もう一つの視点」

 昨年12月に続いて、「NPO法人 世界ヒバクシャ展」企画の集会。北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)で制作された、朝鮮戦争での朝鮮の被害・復興の映画(30分)とプエブロ号事件の映画(15分、英語版に日本語音声を入れたもの)といった貴重な映像も上映する。

プエブロ号
捕虜になった「プエブロ号」の米兵(「米帝侵略軍の武装スパイ船 プエブロ号」より)

 また朝鮮で映画製作をした小林正夫さんが、朝鮮映画の日本での著作権などについても語る。以下は主催者による集会案内。

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 平昌オリンピックへの代表団派遣を朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)が表明し、南北の融和ムードが高まっています。この流れが米朝対話へとつながり、朝鮮半島の平和への道が切り開かれることを願うばかりです。
 そこで、今の危機の原因を歴史から解き明かして好評を博した「緊急企画 北朝鮮 もう一つの視点」の第2弾を2月5日(月)に参議院議員会館で開催します。
http://ur2.link/HYcb

平壌
廃墟になった平壌(ピョンヤン)市街地(「廃墟の上に立ち上がった朝鮮」より)

咸興
破壊された日本植民地支配時の咸鏡南道「道庁舎」(「廃墟の上に立ち上がった朝鮮」より)

 今回もフォトジャーナリストの伊藤孝司さんをお招きして、改めて米朝関係を振り返り、日朝の歴史もたどりながら、戦争を避けるための日本の外交や市民の役割を考えます。前回上映して反響を呼んだ、朝鮮で作られた日本初公開の朝鮮戦争の記録映像を再上映するとともに、米朝関係が今のように危機的状況になった「原点」とも言えるプエブロ号事件の日本初公開映像も上映します。
 ぜひご参加ください。

第2弾 緊急企画 北朝鮮 もう一つの視点
日本初公開映像を交え、日本の進む道を探る
    フォトジャーナリスト・伊藤孝司氏講演
    大反響 朝鮮戦争の記録映像も再び上映

 平昌オリンピックが迫り、南北の融和ムードが高まっていますが、核・ミサイル問題の今後は予断を許しません。フォトジャーナリストの伊藤孝司さんをお迎えして昨年末に開催した「緊急企画 北朝鮮 もう一つの視点」では、朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)で作られた、日本初公開の朝鮮戦争の記録映像
を交えて今の危機の原因を歴史から解き明かしました。
 その第二弾として、今回は、米朝関係が今のように危機的状況になった「原点」とも言えるプエブロ号事件(※1)の日本初公開映像も交えて、改めて米朝関係を振り返りつつ、日朝関係についても歴史を
たどりながら、日本が今後、取るべき道を探ります。

◆日時 2018年2月5日(月) 13:30 - 17:30
◆場所 参議院議員会館講堂
     千代田区永田町2-1-1
     地図 http://bb-building.net/tokyo/deta/457.html
     最寄駅 東京メトロ 永田町、国会議事堂前駅
◆プログラム
◇講 演 「米朝危機の歴史的経緯と日朝の課題」
        伊藤孝司(フォトジャーナリスト)
◇映像上映「廃墟の上に立ち上がった朝鮮」
        (1967年ごろに北朝鮮で制作、30分、日本語版)
     「米帝侵略軍の武装スパイ船 プエブロ号」
        (平壌市内の普通江(ポトンガン)に係留されているプエブロ号艦内で上映されている映像の日本語版、15分)
       ※米朝関係が今のように危機的状況になった「原点」を理解していただける映像です。
◇対 談 「朝鮮映画と日本」
       カナリオ企画代表取締役 小林正夫 & 伊藤孝司
◇民間交流紹介 「南北コリアと日本のともだち展」
◇朝鮮半島の平和に向けてのメッセージ

※終了後に交流会を予定しています。

◆主催 NPO法人世界ヒバクシャ展
◆資料代 1000円(学生は500円)
◆お申し込み 下記申し込みフォームからお申し込みください。
        https://form.os7.biz/f/1dc21f1e/
◆お問い合わせ 080-3558-3369(安在) hibakushaten@gmail.com

※1 プエブロ号事件 1968年にアメリカ海軍の情報収集艦プエブロが朝鮮民主主義人民共和国に拿捕された事件。乗組員は解放されたが、船体は平壌市内に展示されている。

※出演者の紹介
◇伊藤孝司 フォトジャーナリストとして、アジアの民衆の立場から、日本軍「慰安婦」など過去の日本の植民地支配や戦争によって被害を受けたアジアの人々や、日本が行っている日本国内やアジア諸国などでの大規模な環境破壊を長年にわたって取材しています。
WEB 「伊藤孝司の仕事」 http://www.jca.apc.org/~earth/
   「平壌日記」 http://kodawarijournalist.blog.fc2.com/
   「ヒロシマ・ピョンヤン」 http://www.jca.apc.org/~earth/iinkai.html
◇小林正夫 「大映」「トクマ・エンタープライズ」の取締役を経てカナリオ企画を設立。1997年に日朝合作映画「高麗女人拳士」を制作。
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プロフィール

こだわりジャーナリスト

Author:こだわりジャーナリスト
フリーランスのジャーナリストとして長年にわたりさまざまな取材を行い、数多くのメディアで発表してきました。
海外取材は200回近くで、そのうち北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)へは数十回です。現在、年1~3回の訪朝をしています。
掲載写真は、引用先が非表示のものは筆者撮影です。なお、このブログに掲載している映像と文章は日本の「著作権法」と国際的な著作権条約で保護されており、無断使用はできません。転載を希望される場合は、事前にご連絡ください。

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