北朝鮮 ガソリン価格は急騰したのか

 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)に支局を置く「中国中央テレビ」と「AP通信」は、ガソリン価格が急騰したり販売制限がされたりしていると報じている。

給油所
「新坪(シンピョン)休憩所」にあるガソリンスタンド(2017年4月20日撮影)

 4月21日まで北朝鮮に滞在していた私は、地方の道路を走る大型トレーラーをひんぱんに見た。これは今までになかったことだ。道路状況は良くないが、物流は確実に向上している。またいたる所で、大型トラクターが水田の田起こしをしていた。

 北朝鮮でガソリンを買うには、ガソリンスタンドで15キログラム単位の給油券を使う。「中国中央テレビ」は25日、90人民元(約1530円)だったのが160人民元(2720円)に急騰したとした。私はこのガソリン供給状況についても取材している。

 12日に「よど号グループ」4人に会った時には、ガソリン価格はわずかに上昇していると聞いた。20日に話を聞いたある運転手は、15キログラム約12ドル(約1320円)だったのが約15ドル(1650円)に上昇したと語った。

 長距離を走る車に、ガソリンを入れたドラム缶が積まれているのを18日に見た。これは、ガソリン供給が滞ることを予測してのことだったのかも知れない。

 中国が北朝鮮への原油供給を制限し始めたのか、北朝鮮が今後の軍事的緊張を予測して使用を減らそうとしているのかは不明だ。ただ中国が制限したとしても、量は限られているもののロシアからの供給が増えるだろう。

e_04.gif

北朝鮮 人民軍兵士が私のカメラで撮った写真

 日本のマスメディア各社は、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の「朝鮮人民軍創建85周年記念日」である今日、核実験が間違いなく実施されるかのような報道を続けた。だがその「期待」に反してなかった。

 米朝関係は極めて危険な状態だが、マスメディアは政府と共に「北朝鮮の脅威」をさらに煽っている。米国・トランプ政権の危険な冒険を戒めるよう日本政府は動け、との論陣を張るべきではないか。

 私の北朝鮮での14 日間の滞在中、睡眠時間は3-5時間。それは祝賀行事を取材するための荷物検査を受けるために、午前4時にホテルを出るということが続いたりしたためだ。

 海外メディアの人数は約120人。徹底した検査であるため、全員の検査が終わるまで2時間かかる。それを3回受けた。撮影機材などすべての荷物はカゴに入れて預け、検査に本人が立ち会うことは出来ない。

兵士が撮影した写真
軍人が撮影した検査場の絵(2017年4月15日)

 検査が終わったカメラには、私が撮った覚えがない映像があった。検査の人民軍兵士が、カメラが本物であることを確認するためにシャッターを切ったのである。金正恩(キム・ジョンウン)委員長に望遠レンズを向けるのは大変なことなのだ。

 帰国後も睡眠時間を削り、テレビと雑誌のための作業を並行して進め、ようやく一息ついている。今回の取材で撮影した写真は6000枚以上。撮影した動画も膨大な時間になる。あまりにも欲張った取材を実現させたので、発表したいことが山のようにある。

e_04.gif

北朝鮮 行き帰りの航空便で大トラブル

 米国・トランプ政権が北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)へ極めて危険な軍事的圧力をかける中、4月8日から21日まで現地取材をした。北朝鮮は驚くほど平穏だったが、北京・平壌(ピョンヤン)の行き帰りに大きなトラブルに見舞われた。

 4月15日は、金日成(キム・イルソン)主席の生誕105周年。その一連の祝賀行事への海外からの参加や取材のため、8日の北京から平壌への「高麗航空」の定期便は満席。そのため、午前8時発の臨時便に乗ることになった。ところが、チェックインカウンターへ行ってみるとようすがおかしい。搭乗手続きをしていないのだ。

 航空会社職員を捉まえて聞いても明確な返事がない。瀋陽まで中国の国内線で行き、そこから平壌への便に乗るといった話が一旦は出た。最終的には、すべての乗客は瀋陽まで列車で5時間かけて行き、そこに待たせてある定期便へ乗ることになった。

 「高麗航空」職員の話によると、こうした事態になったのは中国当局が臨時便の離陸を許可しなかったというのだ。そうであれば中国による制裁の一環である可能性もあるが、確かな事は分からない。

 私は日本と中国の旅行代理店などに電話をかけまくり、定期便に乗ることを追求することにした。キャンセルが出たら、乗ることが出来るのではと判断したのだ。他の乗客たちが列車に乗るためにいなくなった中で、「何とかしなければならないでしょう」と言う航空会社職員の言葉を信じることにした。
 
 12時55分発の定期便の、予約が入っている乗客の搭乗手続きが終わった。果たして席はあるのか! やはりだめかと思っていたら、手続きをするように言われる。受け取った航空券の座席番号の数字が小さい。まさか・・・。こうして、「高麗航空」のビジネスクラスに初めて乗ることとなった。

ビジネスクラス機内食
高麗航空ビジネスクラスの機内食(2017年4月8日撮影)

 エコノミークラスはハンバーガーとジュースのみ。最近はビールも出ない。ところがビジネスクラスは、かなり豪華でうまい。しかもアルコールは飲み放題。平壌への到着は半日遅れたが、こうして貴重な体験をした。

 ところがである。17日午前8時30分の便で帰国するため、午前7時に空港へ着いた。すると、すでにチェックインカウンター前へ並んでいた人たちが列から離れていくのだ。出発が遅れるという。

 またしても、明確な説明がないまま待たされる。いろいろと噂が飛び交い、中国当局が乗り入れを拒否しているという話も。8日の臨時便のことがあるので説得力がある。

 待ちくたびれて、床の上で寝ている外国人もいる。私は喫茶室でコーヒーやビールを飲みながら仕事を始めた。この状態で午後3時半まで待ったが、平壌市内へ戻った。この後に飛ぶ便へ乗るのをやめ、4日間の滞在延長をすることにした。

 実は平壌へ着いてから、日本からのマスメディアの取材団に残留日本人の取材を許可したことを知った。これは、私が以前から取材申請していたものだ。18日から20日までの日程で咸興(ハムフン)市へ行くというのだ。

 それを取材するために滞在を延ばすことを希望したが、ビザを延長することは難しいと断られていたのだ。乗る予定の便が飛ばないことを理由に、何とか延長してもらおうという魂胆だ。

 午後6時半になって搭乗手続きが始まったとの連絡があり、空港へ急いで向かうように言われたものの拒否。こうしてめでたく滞在延長を実現させたのである。「災い転じて福となす」とはこうしたことだろう。ちなみに出発が遅れた理由は、雷雲が発生したためだった。この翌朝、普通ではない雷鳴で目を覚ました。

e_04.gif

北朝鮮 「核兵器禁止条約」賛成から不参加への理由

 核兵器削減が一向に進まない中で、「核兵器禁止条約」は核兵器を法的に禁止する条約を制定しようという画期的な取り組みである。

原爆ドーム
広島の原爆ドーム(2009年4月1日撮影)

 昨年10月、「国連総会第1委員会」での「核兵器禁止条約」制定交渉開始を定めた決議採択に、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)は賛成した。金正恩(キム・ジョンウン)委員長は5月の労働党大会で「世界の非核化実現のために努力する」と表明したことの反映と思われる。

 今年3月27日から、100カ国以上が参加して国連本部でその交渉が始まった。米国などの核保有国や約20カ国は参加しないばかりか、条約に反対して参加国を批判。原爆被爆国である日本もそれに追随して参加しなかった。

 岸田外務大臣は、核兵器保有国が参加していない交渉は、非保有国との対立を深め逆効果になりかねないと不参加の理由を説明。これは詭弁でしかなく、米国の核の傘にすがるみじめな日本の姿が世界中にさらけ出された。「日本被団協」など被爆者たちは、この日本政府の対応を厳しく批判した。

 そして、昨年は「条約」交渉に賛成していた北朝鮮も参加しなかった。「朝鮮中央通信」(24日付)は、米国が大規模で侵略的な合同軍事演習をしているため、核兵器を中心とした国防力強化が死活的なので参加しないことにしたと説明する。

 米国による軍事攻撃の可能性が高まる中で、それを防ぐ最大の抑止力としての核兵器をより強化しようとしているのだ。6回目の核実験の準備は完了したといわれている。つまり、北朝鮮が方針を転換した理由は、トランプ政権になって米国との軍事的緊張状態が一気に高まったからだ。

e_04.gif

北朝鮮 米国務長官の「20年間」発言の意味

 3月15日、米韓合同軍事演習に参加している米軍の戦略爆撃機「B1」2機が北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)と中国への威嚇のために韓国上空を飛行。同日には原子力空母「カール・ビンソン」が釜山へ入港した。

板門店将校
板門店(パンムンジョム)の人民軍将校(2016年8月21日撮影)

 その同じ日、レックス・ティラーソン米国務長官が来日。17日には訪韓し、北朝鮮へのトランプ政権の姿勢を次々と表明した。

 注目すべきは「米国政府のこの20年間の北朝鮮政策は失敗で、異なるアプローチが必要。あらゆる選択肢がテーブルにある」と述べたことだ。この「20年」とはどういう意味があるのか。

 北朝鮮は1993年に「核拡散防止条約(NPT)」から脱退を表明。交渉に失敗したクリントン政権は、寧辺(ヨンビョン)にある核関連施設を空爆する準備をした。だが北朝鮮の報復によって100万人以上の韓国人が死亡すると推定されて、韓国の金泳三(キム・ヨンサンム)大統領が反対。そのため攻撃は中止された。結局、クリントン政権「米朝枠組み合意」を行い、核開発凍結の見返りとして電力供給のための軽水炉の供与に踏み切った。

 その後のジョージ・W・ブッシュ大統領は、北朝鮮を「悪の枢軸」と非難するなど強硬策を行ったが、政権末期になって「テロ支援国家指定」を解除するなど対話へと転換した。

 次に誕生したオバマ政権は、米国との「平和条約」締結を求めて核・ミサイル開発を推進する北朝鮮に対して「戦略的忍耐」の名の下に何の対応もしなかった。ティラーソン長官は、こうした交渉と破たん、そして放置という「20年間」を否定し、北朝鮮政策を大きく転換するとしているのだ。

 またティラーソン長官は「今は北朝鮮と対話をする時ではない。挑発をエスカレートさせたら適切な措置を取る」と述べており、政策転換によって選択するのは軍事的対応と推定される。

 米国が北朝鮮へ軍事攻撃をした場合、それへの反撃によって韓国や日本に甚大な被害が出る。ティラーソン長官は「軍事的な葛藤までいくことを望んでいない」とも語っており、北朝鮮への軍事攻撃の脅しは牽制することが目的とみることもできる。

 だが外交経験が不足し政策が不安定なトランプ大統領が、「イスラム教徒の入国禁止」のような信じられないほど愚かな選択をする可能性はある。また、軍事的な緊張を極限まで高めていることは、偶発的な衝突が大規模戦闘へと発展する危険性がある。

e_04.gif
広告
広告
広告
プロフィール

こだわりジャーナリスト

Author:こだわりジャーナリスト
フリーランスのジャーナリストとして長年にわたりさまざまな取材を行い、数多くのメディアで発表してきました。
海外取材は200回近くで、そのうち北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)へは数十回です。現在、年1~3回の訪朝をしています。
掲載写真は、引用先が非表示のものは筆者撮影です。なお、このブログに掲載している映像と文章は日本の「著作権法」と国際的な著作権条約で保護されており、無断使用はできません。転載を希望される場合は、事前にご連絡ください。

最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文: